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目的は同じ?

「あの倒したマンティスはどうするんですか?」


 アレクさんに聞いてみた。


「鎌と脚は使えるんだが、他はなぁ。なんせ、アレが居るからな」


 と言う。


 鎌や後ろ脚は道具の材料として使えるのに対し、身を食べる訳でもなければ、胴の部分はそもそもワームが寄生している場合が多いので使い道がなくそのまま埋めてしまうという。


「それじゃあ、他のカマキリが食べに来ちゃうでしょ」


 と、イナリが言うが、カマキリに死体漁りの習性なんてあるのだろうか?


「そりぇえねぇぞ。アイツら動くモノにしか興味がねぇ。おかげで草原にある休憩小屋に居れば襲われる心配もない。たまに小屋を引っ掻きに来るが、騒がなければ良いだけだ。避難所にもなってるな」


 なるほど、草原にセーフティゾーンがあるのか。


 当然、外で火を使うだとか野営するなんて事が出来る場所では無いそうで、遠出するなら小屋伝いが常識だという。


 草原は広いので一日で目的地に着けるとも限らない。今回は試しに倒しただけだが、虫が襲って来る場合もあるのでそんなタイムロスも考えると、普通に進む半分以下の行動距離で見積もる必要があるという。


「アーマード・マンティスは必ずしも遠くに出るとは限らねぇ。今回仕入れた情報だと、この先にある小屋から半日以内の範囲だ」


 すでに視認可能な小屋というか、集落じゃね?あそこが目的地か。


 それからはマンティスを見つける事は出来なかった。


 なんかデッカイダンゴムシが動いていたが、特に攻撃して来る訳でも無いので無視をした。


「アレも焼成糸が出回る以前は人気があったんだがな。討伐は簡単でも、解体や移送も大変で布みたいに自由度がない。革や鉄の防具や武器とさして性能が変わらないから最近は狩る奴も居なくなった。俺たちならまだ加工の技を知ってるが、そのうち加工の技すら忘れられちまうかもな」


 そんな事を言いながら、目の前を横切るのを待ったほどだ。イナリは突いていたが、気にせず進むような虫だ。かなり硬そうだったので、相手しないのが正解だろう。


「あれ?アンタ何してんの」


 集落に着くとそこにはミツヨシ様やヤーナが居た。


「外れ娘か。お前こそなんだ」


 不毛な争いがまた起きるのだろうか。


「まあまあ、ヤーナもそう揶揄ってやるでない。ここへ来るのはマンティスを求めて。最近の若い連中はトンと来ないがの」


 と、笑うミツヨシ様。


「ヨイチ、お前の弓、変わっておるな。そう言う度量の広さが森の若い者にあれば、また違うのであろうがなぁ」


 と言い出した。


 僕が持っている弓は二つある。ヨシフさんが布と鉄板で強化した竹弓。そして、コンパウンドボウ。


 コンパウンドボウは袋に入れてある。今持っているのは強化竹弓だ。


 パワードスーツじゃ壊れるんじゃないかと思ったが、「そもそも引き代はどちらも同じなので壊れる訳が無い」とヨシフさんに笑われた。


 そんな弓をジロジロと見て、アレクさんを見た。


「鉱人は色々な才があるのぉ。弓をこうも変えるか」


 伝説の強弓で知られるミツヨシ様だが、今の僕なら矢速は同じくらい出るだろう。射程も違いはないかもしれない。コンパウンドボウは別格だが。


「コイツを加工したのはヨシフって野郎だ。うちの谷じゃあ有名人だよ」


 アレクさんがそう答えた。


「ほぉ。なら、ワシの予備もそいつにやってもらおうか。面白そうじゃ」


 え?


 いやいや。


 森には竹弓への誇りがどうとかいう人が多いのに、良いのかな?


「そう驚く事でも無かろう?良いものは良い。もちろん。だからと言って竹弓を捨ててしまうのも考え物だがな」


 という。


 なるほど。こんな柔軟な考えだからここに来ているのか。


「ここに居れば『森の民である』という誇り、いや、傲慢な驕りをへし折る輩に時折出くわすことがある。ワシにはそれが痛快なんじゃが、最近の連中はそれが気に食わんらしい」


 なるほど、たしかに、ココには腕自慢、弓自慢が集まってそうだ。


 そして、ミツヨシ様がふと視線を向ける。


「そ奴は北の英雄、エイナルと云うそうだ。ワシと同じ強弓よ」


 と言う。


 きっと他にも居るんだろうな。


「未だにワシを超える者が居らん今の若い者では、奴には敵わんだろう」


「エイナルは魔王討伐に参加していた。これで理由が分かったか?」


 と、被せてくるヤーナ。


「なるほど。素の僕では敵いそうにないね」


 確かに村一番ではあるが、巣の状態でミツヨシ様に並ぶとは思っていない。


 素直に相手の強さを認めた事が意外だったらしい。間抜けな顔をしているが。美人というのは何をやっても美人だな。


「お前、あのゴリラが良いのか?え?」


 まぜっかえすな、ポンコツ。


「マンティス狩りに来たのは分かったが、邪魔はするなよ」


 ヤーナもイナリの相手をする気がないらしい。つか、機嫌よくなった?


「余計なお世話よ。もう一匹狩ってるわよ」


 イナリはそう言って解体した鎌をヤーナに見せる。


「行きがけの駄賃でソレを狩るか。確かに、ワシより目は良いからの」


 ミツヨシ様はそう言って笑った。ヤーナは感心している様だ。


「だが、ヨイチ。鉱人の弓で狩っても森の連中には認められんぞ?」


 と言われた。


「それは分かっています。ナナップではシールドボアも倒しましたし。もう『森の弓取り』にはなれません」


 そう言うと、感心している様だ。


「ほう、魔法脆性を持つ竹矢での事ではあるまい?」


 首を横に振ると理解したらしい。


「そうじゃな。アイツらには認められまい」


 どこか悲しそうにミツヨシ様はそう言った。  


  

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