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中二な発想が成功した

 矢は突進してくるシールドボアへと進み、さっきと同じく激しく発光した。


 逃げるようにその場を飛び退いてヤツの突進に備えた。


 さっきよりも長く発光を続け、光が収まると奴は停止していた。


「やったぜ!」


 どうやらタンデム弾頭は成功したらしい。見事に矢がヤツに刺さってやがる。しかも、かなり深くだ。


 試しにもう一本矢を撃ち込んでみた。普通の奴をだ。


 普通の獲物の様に綺麗に刺さる矢。


 という事はシールドは展開されていない。ピクリとも動かなかった事から倒せている事も間違いなさそうだ。


 慎重に近づいて羽根の辺りまで突き刺さった矢を抜いた。


「あれ?」


 そいつは深々と刺さったように見えたが、実にあっさりと()()()


 そう、ヤツに刺さった先なんてありはしなかった。


 矢であったモノが付いていた部分には穴が開いている。


 何がどうなったのかは分からないが、どうやら致命傷だったらしい事は間違いなさそうだ。


 試しに手持ちの矢を穴に差し込んでみると、元の長さよりは短くなっているようだが、かなり深く刺さったのは間違いない事が分かった。


 意味が分かんねぇ。


 しかし、結果は結果だ。


「たしか一頭じゃなかったはずだ」


 口に出してそう確認した。


 複数頭で襲われた記憶がある。


 ついでに言えば、もう一度先ほどの魔力矢の検証がやりたい。


 そう思って辺りを探ってみる。


 耳を澄ますと戦っているのだろうか?声が聞こえる気がする。


 その声がする方へと歩みを進めると、徐々に声というか掛け声というか、そんなものであることが分かって来た。


 「せい」とか「やあ」とかそんな感じの。


 ハッキリ聞き取れるところまで来ると、その正体が分かった。


 どうやら生き残りの新人が居た様だ。


 だが、状況は新人が護衛を守ってるように見えるのは気のせいか?


 今朝顔合わせしたメンバーで護衛兼教官の一人として自己紹介していたのは蹲っている革鎧だ。顔は分からないが、ドラゴン系の高級な鎧だったから間違いない。


 戦っているのは槍を持ったヤツだ。アレは新人で間違いない。


 それも僕と同様に自分は他とは違うと思っている中二病だな。俺はもう一つの記憶でその恥ずかしい真実を知ってしまったが。


 いや、シールドボアを相手に防戦できるって、新人としては異常な技量って事は事実かも知れない。


 どうやら僕の事は認識できていないらしいその新人。気付いていても気にもかけていないであろうシールドボア。


 だったら倒してあげましょう。


 矢を番え、先ほどと同じように三か所に魔力塊を形成して放った。


 シールドボアがまぶしい光を放って、光が消えると、あ、放心している新人が居る。


 そして、先ほどの検証のために矢が刺さった位置を見ると


 ?


 矢はどこ行った?


 穴だけ残して矢が存在していなかった。


 どうやらあちらも事態を呑み込んで俺の事に気が付いたらしい。


「アンタがやったの?」


 その新人が僕にそう問うて来たので頷く。


「新人が魔石矢持ってるとはね。だから周りを見下してた訳か」


 と、ソイツが言う。まあ、その認識は間違いでは無いな。確かに見下していたよ、井の中の蛙程度の自信でな。


「見下していたのは確かだから、その点について反論はないが、コレは魔石矢ではないよ」


 そう言うと、呆れたような顔をしている。


「『森の民』だからって、そんな傲慢な事言わない方がいいんじゃない?」


 何だろう。なぜそこまで嫌われなきゃいけないんだ?


 そう思って相手をよく見る。


 ああ、そうか。コイツ、北の部族じゃん。


 ファンタジーで言えばエルフとダークエルフみたいなもんだろうか。まあ、そこまで毛嫌いした関係性ではないが、対抗意識が強いのは確かだ。


「事実を言ったまでだよ。君の槍も似たようなことが出来てるんじゃないのか?」


 そう、火花を散らすようなものが見えたから、コイツが似た事が出来るのではないかと思ったんだ。


 するとどうだろう。知られてはマズい事を知られたかのような顔になっている。


「そ、そそそそんなことしてるわけないだろうが!」


 あれ?武器に魔力を纏わせるのって中二病だったんだな。


「僕がやったのはそれの一種だ」


 そう言うと、信じられないという顔になった。


「いや、ナイナイ。見たでしょ。武器に纏わせても出来るのはあの程度だって」


 そう、真顔で言う。


 さて、どうやら新たな敵がお出ましらしい。


 ここのイノシシはブモォとは言わないんだな。シールドって音まで小さくできるらしいじゃないか。


 どんなステルスなんだよ。


 ステルス?


 ちょっと疑問が頭に浮かんだが、矢を番えて静かに突撃してくるシールドボアへと向き直る。


 三度目ともなると慣れたもんだ。


 でも、ちょっとダルくなったかもしれない。コレが撃てる限界かもしれんな。


 そう思いながら射る。


 猪突なので避ける気の無いシールドボアの眉間あたりへとまっすぐ飛んでいく矢。


 そしてまた激しい発光が起こり、収まると勢いのまま滑ったシールドボアが横たわっているという訳だ。


「ホントに魔石矢じゃないのに倒した・・・・・・」


 北の部族が驚いた顔でシールドボアを見つめていた。

 


 

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