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またややこしい話が

 直情型のコイツらしくないいなし方をしている。


「あらそう。なら、見に行ってあげようかしら」


 と嗤いながら離れて行った。


「はぁ~、しかし、ヨイチよ。冒険者になったとは聞いたが、ここへ来たか。ナナップよりは良い場所だ。なかなか良い案内人も居るようだしな」


 ミツヨシ様はそう言うと、ヤーナという美女を追いかけて行った。


「ヤーナの奴。偽王倒して有頂天になってるじゃない。ホントに言い伝え読んだんでしょうね」


 イナリが小声でそんな事を言っている。


 偽王ってなんだ?


「あの女、魔物の森に近いカーマネン領の騎士なのよ。ヤーナ・ハゲリンって言ってね、自称最強騎士らしいけど、脳筋過ぎんのよ」


 コイツも大概だとは思うんだが。


「なるほど。事情は分かった気がする。あのヤーナって人が魔王の偽物倒した上で、あっちこっちに報告したって事だね」


 そんな所だろうな。


 でも、それで信じるか?


「報告っていうか、討伐隊を編成して奥地に突っ込んだんでしょ。偽王とその取り巻きを倒して、魔王を討伐したと信じてるのよ」


 うん、ちょっと分からない。


「でも、言い伝えにあるんだよね?偽王が居るから気を付けろみたいな話」


 そう、あるなら疑ってもっと調査するんではなかろうか?


「しないわよ。カーマネン領で見つかったソレって、シネッタで見つかる1年前の話だから。時間を置いて魔王や魔将の選別中に突っ込んだんでしょ」


 いや、それなら本物じゃ?


「偽王も魔王の一種なの。魔王が一頭なんて決まりはないのよ。それに、シネッタの調査後にもあの女は討伐に出たんでしょうね。事態をややこしくしやがって、あの脳筋!」


 ポンコツに脳筋と罵られるのは何か不憫な気がするけど、仕方がないのだろうか?


 あれ?


「魔王はたしかシ-ルド系の魔法を持ってるんじゃ?」


「偽王もあるわよ。アレなら物理で魔法も破るでしょうね。脳筋だから」


 脳筋スゲェ~


「じゃあ、イナリの言う魔王はそれ以上と?」


 そう聞くと頷いた。


「250年ぶりの大物なら、物理じゃ無理でしょ。そこはアンタが頼りよ」


 う~ん。なんか喜べない。


 そんな会話を横で聞いているアレクさん。


「まあ、オーガの大繁殖なら仕方ねぇな。偶にしか出ないアーマード・マンティスみたいなもんだ。面白そうだな」


 まあ、ある意味、面白いのかもね。鉱人クラスにもなれば。


「それは今後の事ですよ。隊商が出るまでは待つ予定ですから」


 そう言って出張所でマンティス討伐の登録をして草原へと向かった。


 草原へは村の門を通るのだが、そこで鉱人の門番に止められた。


「そこの二人、冒険者証は?」


 そう誰何されたので提示した。


「二人とも”新人”じゃないか。明確な規定じゃないけど、ここは最低でも”初級”からだ」


 ここでは特殊技能は認められないらしい。


「実績で言うなら、”中級”どころじゃねぇがな。こいつら」


 ヨシフさんが門番にそう言う。


「ヨシフさん、しかし・・・・・・」


 門番も困っている。


「デス・スパイダー倒したのはコイツだ」


 と、僕を指さす。


「で、こっちはあのアント狩りだ」


 そう言えば、イナリはパワードスーツが面白くてアントの巣へ一人で突っ込んだんだっけ?


「えぇ~、さすがに冗談キツイですよ」


 と笑う門番。


「そう思うんならアーシャに聞いてみな」


 アレクさんがそう言うと、なぜか話が纏まった。


「そう言う事でしたらどうぞ」


 アーシャさんもただの受付ではないらしい。が、怖くて聞けない。


 村を出ると起伏に乏しい草原が広がっている。


 ただ、先の方は沼になっていて、そこにはマングローブ林が点々とある。


「スゲェ所だろ。あの木が忘れの海の塩気を取り除いて、この草原が出来てるらしいぜ」


 と、アレクさんが説明してくれる。


 そんな草原には所々、木というには小さく草と言うには大きなモノが時に群生し、時にポツンと生えている。


「マンティスにはちょうど良い隠家だろ?アレ」


 と、アレクさんも言って来る。


 そして、少し先では早速、マンティスを狩っているのを発見した。少し距離があるので眺めているだけだが。


「普通に接近戦やってますね」


 それは剣や槍を持った冒険者が対峙している。


「的がデカい脚か羽根を先に潰したんだろう。鎌を残すと手間がかかるが、『森の民』や一握りの弓使いじゃ無けりゃ、一撃で首を狙い撃つなんて無理がある。アーマード・マンティスじゃないから避けない、弾かないなんて事は無いからな」


 そう言って、アレクさんはその戦闘から目を離して辺りを窺いながら進んでいく。


「あ、居ますね」


 僕がカマキリを見つけて二人に声を掛けた。


「居るな。流石に見えるか」


 というアレクさん。イナリは全く見えておらず、目を皿にして探している。


「見えないじゃん」


 と、文句を言っているので、狩って場所を教えよう。


「ワームが出たらよろしく」


 そう言って肘関節をスナップで固定して矢を番え、手首も固定した。


 ホント、これは楽。


 相手はこちらに気が付いていないか、警戒をしていないのだろう。まったく見てすらいない。


 狙いを定める。


 パンという音と共に打ち出された矢がプレート・マンティスの首関節を射抜いた。


 魔力矢を使う必要がないので光ってはいない。


「あれかぁ!」


 イナリが浮かびあがった姿を見つけて掛け飛んでいった。


「ホントに一瞬ですね」


 ものすごい高速で向かったイナリはワームが出て来る前にマンティスの尻を叩き潰して戻って来た。


「いっちょ上がり!」


 やはり、あのヤーナって人にイラついていたんだろう。倒しておいてなんだが、マンティスがかわいそう。 


  

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