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なんか出た

 アレクさんは帰って来るや否や、早速、僕とイナリを連れて南へ向かうという。


 僕も弓には慣れたし、イナリも随分動けるようになったらしい。


 クニャージさんによれば、素材が素材だから早々壊れることはないらしい。


「まっ、簡易修理程度なら俺でも出来るしな」


 そういってアレクさんがドヤ顔をする。


 そう言えば鉱人は手先が器用だったか。


「糸集めが専門だぞ俺は。スパイダー製装備の整備や修理もやれる」


 と、心の声が漏れていたらしく、そんな事を言われてしまった。


 翌日には早くも装備をまとめて出発となった。


 なんでも、南方にも狩人事務所の出張所があるらしく、食糧についてはそこまで心配ないらしい。


 そりゃあそうか、谷を訪れる冒険者の大半は危険で厄介な糸の採集が必要なスパイダー狩りなど求めてはおらず、南方の虫狩りへと向かう。


 そこには森の民も居るだろう。プレート・マンティスならばマジックバーストなど必要ない。近づいて頭の関節の隙間を狙えば良い。そこが急所だとアレクさんも言っていた。


 なので、腕自慢が来ていてもおかしくはないだろう。


 それ以外にも地上から来ているとも聞いた。


 エレベーターが見えて来ると、降りてきたときとは違う視点でそれを見上げていた。


 使われているワイヤーはクモの糸製。ゴンドラの装飾も、実は単なる装飾などではなくクモの布を使った補強材。


 なるほど、エレベータが成立するのはクモの糸あっての事だったんだと改めて再認識した。


 来た時には単に鉱人の技術力程度にしか思っていなかった。


「お前ら。鎧型にしなくて良かっただろ」


 エレベータを過ぎて辺りに商人が居なくなると、アレクさんがそんな事を言って来る。


 なるほど、たしかに。


 ここは主にプレート・マンティスを狩りに来た地上の冒険者や鉱人の狩人ばかりだ。


 彼らは革鎧やクモの布製だろう厚手の衣服を着ている。甲冑然とした鎧を着こんだものはいない。


「何で?相手はカマキリなんだから、鎌で攻撃されても防げるように鉄や甲殻の鎧の方が良いんじゃない?」


 と、イナリが聞いた。僕もそんな気がする。


「相手は緑や茶褐色。どういうことか分かるか?」


 それは見つけにくいという事になる。


 だが、見つけにくいならばより一層、防御力は高くて良いだろう。クモの布は引っ張り強度は高いので切裂かれることはないかもしれない。だが、打撃を吸収できるわけではないので、柔らかい布ではダメージが簡単に体へと入る。ハズだ。


「見つからないんでしょ?だったら余計じゃない」


 と、イナリは僕と同じ考えだ。


「スパイダーならそうだな。奴らは獲物が寄って来るまで動きはしない。だが、マンティスは動くモノに寄って来る」


 それはそうだ。見えにくい上にあちらから寄って来られては不利になりかねない。


「鉄鎧のカチャカチャ音など鈴を鳴らしているようなもんだ。甲殻鎧もカタカタ音が出る。寄ってくるのが一匹とは限らんだろう?」


 なるほど。


 視認したから寄って来たというならまだしも、予期せぬところから音に釣られて集まって来られたんじゃ、不利どころでは無いか。


「そんなの、どうやって倒すのよ」


 というイナリをじっと見るアレクさん。


「お前さんの速さがあれば、隙を付けるだろう。俺も目が良いし、小僧もそうだな?なら、やりようはある」


 そう言ってニヤリと笑う。


 そんな事を話しながら向かった先は、村という程度の規模しかないが、一応、食糧や消耗品の調達が出来そうな場所だった。


 そこの一番立派な建物は狩人出張所。いや、なんか、谷の事務所より上だよね?


「食いモンとスパイダーが専門のあそこより充実してんのは当然だろ。オカのギルド職員も居るからな」


 なるほどね。


 確かに、ココには地上から来たであろう冒険者が多い。あ、やっぱり森の民も居るし。


「ワナマルのヨイチか」


 そう言って近づいて来た老人の顔を確認した。


「ミツヨシ・・・様」


 俺は唖然とした。そこに居たのは隠居した前の長ではないか。


「誰だ?」


 アレクが聞いてくる。


「『森の民』の伝説。前の長です」


 そう言うと、興味を持ったのはイナリだった。


「ちょっと、何で救援断ったのよ!」


 いや、ここで蒸し返すかね。しかも使者が来た時点で隠居してたから。


「ん?元気なお嬢さんだ。どうだ。ヨイチなら文句はなかろう。今どきの若いモンでここまで来るのはこいつくらいだ。森でいくら鼻を伸ばしても外にはさらに上が居るからなぁ」


 と、何やらボケた事を言ってくださる。


「こんなバカいらないわよ。多少弓が巧いだけでしょ。で、何で救援に来なかったのよ」


 はい、全く興味を持たれてない。


「救援?魔王は倒したと聞いておるが?」


 などと言って首をかしげる。


 そして、後ろを見た。


「ミツヨシさん、何してる・・・・・・の」


 なんか、細マッチョな美女がやって来た。


「ノケライネンの外れ娘が何しに来たんだ?」


 嗤い顔でそう言った。


「ヤーナ、アンタが魔王を倒したの?」


 いや、質問に質問で返したよ。コイツ。


「魔王?200年出なかったって言うから、どれほど強いかと思ったけど、谷製の長刀を一振りだったよ。お前みたいな落ちこぼれなら無理だっただろうがね。そう言えば、槍に魔力を纏わすとかいう大道芸は完成したのかな?芸を見せてもらいたいね」


 ホント、wが生えそうってこういう嗤いを言うんだろうな。


「そう、それは良かったわね。次の夏にはシネッタで舞ってあげるから、見に来れば?」


 えっと、何言ってんの?話が見えない。


 

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