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とうとう、狩りに行く時間らしいね

 あれからしばらくはこの弓に慣れようと毎日練習していた。


 500mどころかさらに伸びて600mでも当たるようになった。動かない的なら1kmでも何とかなるかもしれない。


「ほう、さすが『森の民』だな。片割れはイナゴだけで飽き足らずに、最近はアントにも手を出しているようだな」


 片割れってなんでしょうね。


 それはともかく、最近見なかったアレクさんが現れた。


「アレクさん、最近見ませんでしたね」


 そう言うと、ニヤリと笑う。


「ちょっと草原まで散歩にな」


 話に聞いたここの草原は散歩するようなところではない。ファンタジーと言うより何か違う世界の魔境なんだ。


 人の背丈ほどもある虫が飛び跳ねたり、蛇かと思うような虫が這いまわっているらしい。


 そうそう、谷と忘れの海だけがこの盆地というか地溝?に存在している訳ではない。


 谷を出た川は巨大なデルタを形成してそこに草原や林、沼が存在する。林と言っても大木がある訳ではなく、湿原に根を張った細い木々が主体でとても歩きにくい密林だという。そして、草原の様な開けた場所が所々に存在する。


 そんな環境のため、虫が多く棲み、川を下ったり崖を降りてきたような魔物や獣は虫にエサになる事が多いという。


「湿原と言う事もあって、毒を持つ虫も多いが、心配すんな。狩りをするのはそんな奥地じゃない。そもそもマンティス系が居るのは上から獣や魔物が降りて来やすい場所だ」


 そう、地理的には谷より南方になる。


 エレベーターの南へと向かう訳だ。


 そこは湿原から草原に代わった場所が多く、崖には時折小さな滝や渓谷が存在している。


 そう言う所なので地上に生息する獣や魔物が降りてくる。


 虫の知識がないその様な獣や魔物はここの虫への警戒心が低く獲物になりやすい。


 そして、ある程度乾燥した草原であるためムカデの類はほぼ居らず、イナゴやトンボ、カマキリの楽園であるのだとか。当然その頂点に居るのはカマキリ属。マンティス系という事になる。


 その中でも厄介なのが、風魔法を持つとされるアーマード・マンディス。一般的なプレート・マンティスは魔法を持たない。もし、姿かたちが同じなら見分けがつかないが、全く違うので見分けは付く。


 正確には、アーマード・マンティスはその攻撃範囲が広いので、こちらが見つける前に攻撃が飛んでくると言った方が正しいが。

 しかも怖い事に、その攻撃を受けても血が出ないので、攻撃を受けても周りは気付くのが遅れ、対応が後手に回るのが常だという。ふと、レーザーというモノが浮かんできたけど、よく分からない。


「それで、イナゴやクモの類は食料や材料となるので狩るのは分かりますが、マンティスを狩るのはなぜですか?」


 不明点を挙げるとすればそこだ。イナゴはどこにでもいる上に食料となっている。これを狩らない訳にはいかない。


 デス・スパイダーをはじめとしたクモはその糸が非常に有能な繊維であり、長く丈夫な脚も道具の材料となる。さらに、谷にもよく巣を張るので危険除去の為にも討伐が行われる。


 だが、カマキリ属はエレベーター周辺なら可能性はあるが、谷にやってくることはほぼ考えられない。


 確かに人という獲物が居るのは確かだが、そんなリスクを侵さずとも食うに困る事はないだろう。


 まあ、寄生虫の影響で秋ごろに自ら湿地の水辺へと飛び込んでいく虫が多いらしいが。


「そんなのお前、勲章だろう。アーマーやプレートと名が付くだけの事はあって、布と合わせれば、十分鉄に対抗できる盾や防具が出来るぜ。軽さでははるかに鉄に勝る。余禄みたいなもんだがな」


 との事で、狙う理由は冒険者のソレではあった。


 地上の冒険者たちが特に食える訳でもないのに魔物を好んで狩るのも、安全確保や討伐賞金という生活の為であると同時に、討伐した魔物の種類や数でランク上げが出来るという名誉の部分が大きい。ランクはその人の強さの証であり、中級ともなれば単なる盗賊崩れなどとは違う戦闘スキルを持つと同時に、そのランクに見合う行動が求められる。

 と言っても、魔物討伐を主としたそれであって、町の治安維持や統治を行う騎士とはまた別である。

 ただし、辺境においては記憶にある「保安官」なるジョブに相当する役割を担う事もあるが。 


 そんな訳で、冒険者たるもの、やはりそうした「冒険」を嗜むのは業みたいなモノだろうと、自分を納得させる。 

 確かに、弓の腕を試したい。そんな遠距離から攻撃してくるヤツをアウトレンジで倒すなんて、アーチャーの夢ではなかろうか?森で獲物をしとめているだけでは絶対味わえない。


「調べて来た結果だが、結構な狩人が草原に居るせいかアーマード・マンディスは中々姿を現さないな。いるのは緑や茶褐色系のプレート・マンティスだった。アーマード・マンティスはグレーだ。草原の日に当たるところでは目立つが、影だと分からんだろう」


 そんなあからさまに色の差があるなら簡単に見分けは付きそうだが、そうか、木陰でじっとされていると見付けられないか。

 透明化していても揺らぎで見分けがつくデス・スパイダーの方が楽かもしれない。


 

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