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なんか、想像の斜め上・・・・・・

 それからしばらくイナゴ狩りとスパイダー狩りを続けていると、ようやく完成したらしいソレを手にした。


 それはファンタジーで見る弓にしては異様に近未来的で、アーチェリー競技用であれば色々伸びているであろう棒の類がない。

 あの棒でバランスを取っていたはずだが?


「お前の疑問はもっともだな。スポーツボウは規定でバランサーが使われていたが、ミリタリーボウは仕組みが違う。小さなマスダンパーに変更してある」


 という。それでどこか未来的な印象を受けるのか。


 その弓は全体が真っ黒だが、それはフレーム部分もカーボンをかぶせているからだという。


「レインボーメタルなんてモンを見せびらかせばどうなるか分からんだろう?布で覆えば分からん。もちろん、布の種類なんぞ、鉱人の中でも僅かな職人しか見抜けん」


 と言われた。


 まあ、それは良い。


 それ以上に違和感があるのはパワードスーツだ。


 僕の「記憶」にあったものはまさに甲冑のソレだった。


 甲冑が単に防御を専らにしているのに対し、中に様々な機構を持つ分、少々ゴテゴテしているのが違いだったとおもう。


 が、コイツは体に密着するフレームは確かにそれっぽい。防護力を一切考慮しない産業用だ。


 そこにいくつかのホースのようなものが配されている。


「何よ、コレ」


 装着したイナリが戸惑うのも仕方がない。


 が、明らかな違いにも気が付いたらしい。


「体が軽く動くんだけど?」


 どうやら彼女の骨格はバネの様に動くらしい。僕のはそんな俊敏さは、なくはないけど、そこまでとは思えない。


「あんまり跳ねると天井にぶつかるぞ」


 ピョンピョンやってたイナリはクニャージさんにそう叱られている。


「コイツを持ってみろ」


 ヨシフさんにそう言われてデッカイ槍を渡されている。


「お‥重・・・ん?ああ、そうでもないかな?」


 重そうに持ったが、どうやらコツがあるらしい。すぐに軽々と持てるようになっている。


 それはイナリだけではない。僕も近未来的で重そうな弓を軽々持てている。


「坊主の弓は元から軽い。小娘のアレは鉱人でも一部にしか振り回せない代物だが」


 その一部に入るんですね?ヨシフさん。だって、多少重そうだなとは思ったけど、普通に渡してたからね。


「さて、コレが鎧だ。と言っても甲冑じゃあなく、マントと服にしか見えないが」


 そう、それは服とマントだった。


 もちろん、ビキニアーマーや素足にガードだけなんて代物ではない。ファンタジーではなく実用的だな。


 まあ、イナリのまな板体型にビキニアーマーは似合わないが。


「アンタ、今何か失礼なこと考えてるでしょ」


 スッとイナリが槍をこちらへと向けた。風圧だけでもすごいんだけど。


「いや、軽そうに振り回してるなと思っただけだよ」


 そう返したが疑っているらしい。


「さて、ソイツを射てみようか」


 セルゲイさんとヨシフさんに連れられて工房の裏へ出る。


「扱い方はそう違わないと思うが、説明は必要か?」


 そう聞かれたが、特に問題は無いんじゃないかな?


 そう思って矢を番えるが、ここで問題が発生した。


「これ、どうやるんですか?」


 なんと、弓の真ん中に矢が通るようになっている。


「こいつは少々特殊でな、左右どちらでも持てる仕様だ」


「骨格もそう作ってある」


 と、クニャージさんまで出て来た。


 まず、左腕を振って肘の関節をロックする。なるほど、矢を射るのにちょうど良い位置になるのか。きっと、ヨシフさんの前世の装備なんだろうな、コレ。


 そして、矢を内側から通して、弦に掛ける。手首もほんのスナップで固定できる。


 そして、右手は人差し指がロック出来る様になっていて、そこで弦を引く。


 背中から腕の骨格に繋がったホースが何らかの働きをして腕を動かすとより以上の力がかかる様に軽く引けた。


 どうやらあのフライングドラゴンの透明な羽根から透明度が高くて歪みの無いレンズが造られている様だ。スコープサイトも良く見える。


 時間的にドラゴンの類は飛んでいないので、的を狙う。距離は500mだろうか。


「これは難なく射抜いてもらわんと困るな」


 ヨシフさんがそんな事を言っているが、ここから見ると点にしか見えないんだけどね?スコープでなら見えるけど、遠い。


「さすがに違和感がありますね。こんな狙い方はしたことが無いですから」


 と言いながらも矢の弾道をしっかりイメージする。頂点は200m程度先だろうか。当然、直射は出来ないので弓なり弾道を描くことになる。そして、風も読む。こちらと向こうでは強さも違うだろうし、間の風も変化しているだろう。


 短時間とは言え、そんなことを観測して見極めていられるのも、骨格のおかげだ。すごく軽く引いていられる。


 弦を離すと矢が飛んでいく。速いなんてモノじゃなかった。


「さすがに初めてじゃ、外れるかぁ」


 外れてしまったが、弓の特性やこの骨格の特性に慣れれば行けそうだ。


「外したって、お前。普通に見れば当たりだろ・・・・・・」


 望遠鏡をのぞいたヨシフさんやセルゲイさんが驚いている。


 そんなに驚く事かな?的はアーマード・マンティスの実物大らしいが、鎌と頭の間を通してしまっているじゃないか。


 ん?


「おっりゃ~!」


 おい、あの気の狂った加速してるのって・・・


 僕が射たあと、イナリが下に待機していたのだろう、走るというか飛んでいった。車とゼロヨン出来そうだね。

 馬の無い馬車。どうやって走るんだろうね?


「あっちもさすが『北の部族』か。体幹が並じゃないな」


 飛んでいったと思ったら、すぐに戻って来た。


「当たってないじゃない!」


 いや、そこは確認しろよ。


 

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