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美容と弓には特に関係ないけれど、限度ってモノがね?

「マズい。もう一杯!」


 イナリがショットグラスの様な器を煽ってそんなことを言う。


 この食堂を見渡せば、同じ様な事をしている女性をよく見かける。美少女に美人に美魔女に至るまでがやっている。

 どうやら狩人事務所でアーシャさんに聞いたらしいよ。コイツも。


 飲んでいるのは正直、調味料だ。僕の前にもその小さな器がある。


 蒸した脚の身に垂らして食べたり、スープに入れて食べるんだよ。スープが緑になって何のグリーンスープだよって人も見かける。そんな苦そうなの見てる方が嫌だ。調味料。味付だよ?それを飲むとか大概だし。


 この調味料は川に生えている苔か何からしい。正直、ピリ辛苦くて飲もうとは思わない。


 ただし、健康に良いとか老化防止だとか。特に肌に良いらしいというので男女を問わずかなりの量を使っている。僕はその原液飲むのはちょっと・・・・・・


 イナゴがメイン食材で、少しの植物が添え物としてある。後はあの液体。


 ただ、記憶によればイナゴとあの液体はスーパーフードって奴に該当するんじゃないかと思う。虫の身は栄養価が高くてヘルシーっぽいし、どう処理しているのか聞きたくないけど、胴の部分もスープに化けている。特に、スープに入ってるこのカリカリしたモノがおいしい。これだけは分かる。頭だと思うんだ。原型はないけど。


 毎日似たような料理しかないと飽きそうなものだけど、塩の精製方法が色々ある様で、それだけでも味が変わっている。原液にも種類があるらしく、味付に使っているモノで数種類ありそうだ。ただ、薬味として出て来るのはいつも、この緑の液体なんだけどね。


「っくぅ~、マズい!」


 にこやかにそう言うイナリに呆れながら、夕食を平らげる。


「セルゲイさんの弓が出来たんだって?アタシの槍も作ってくれるらしいし、楽しみね!」


 などと言っている。楽しそうで何よりだ。


 食後、セルゲイさんの工房へと向かったが、案の定、道を間違えそうになるイナリ。


 ちなみに、イナリが通ってきた谷というのはここではない。


 アレクさんが本谷というその谷は、エレベーターを降りて最初に渡ったあの川の上流にあるという。


 つまり、場所を間違っていた。


 ナナップを出てひたすら北へと向かってあのエレベーターにたどり着いたのだが、実は本谷は北ではなく北西に向かう必要があった。ナナップからまず西へ向かう街道を行けば良かったようだが、いまさらそんなことを言っても仕方がない。


 とは言っても、ここから本谷へ至る道というのは荒野を行く道しかないらしく、それはさすがに遠慮したいのだが、年に一度は隊商が組まれるとかで、それについて行けば労せず行けるだろうという。


 まあ、それが出発するのは来年春の話だとかで随分先だ。ならば、一度戻る手も無いではないが、案内役がアレでは心もとない。隊商と一緒に向かえば、その時期だと北の部族の商人も買い付けに来ているかもしれないというので、そっちに期待する方が良い。


 さて、セルゲイさんの造った弓だが、たしかに弓の形をしている。


「どうだ?」


 そう聞かれたが、きっと彼も分かっている。


 弓は単に力で引けばよいというシロモノではないとはいえ、これは無理がある。引けるのはコツを体得しているからだが、引き絞るというにはまるで遠い。


「見ての通りですよ」


 そう答えるしかなかった。


「そうか。予想はしていたが、やはりな」


 というセルゲイさん。分かっていたならどうして?


 だが、その先の予想も出来たので追加させてもらおうか。


「だからと言って、クニャージさんの甲冑に期待しないでくださいね?確かに、引き絞る事は出来ると思います。予想ですけど。ただし、その状態で狙いを定めて射るタイミングを計るなんて無理だと思います」


 と。


 それを聞いたセルゲイさんのイケメン顔が崩れていく。


「万・策・尽きたぁ~」


 崩れすぎてね?


「尽きてませんよ。普通の弓だからイケナイんです。井戸の滑車やエレベーターの滑車。そして梃子。そう言った原理を弓に応用すれば可能ですよ。ヨシフさんにも素材の相談をした方が良いかと」


 にっこりそう答えたら、ガタガタ震えだした。


「鋼鉄の練成師に相談するだって?炉に放り込まれるぞ!」


 エェ~


 だが、そうした方が良いのは確かだ。造りたい弓が特殊だから。


 セルゲイさんに渡されたのはデス・スパイダーの糸を焼成、さらに成形したものを熱硬化させた代物だ。

 弓としては優れた弓だと思う。満州弓に近いだろうか。もの凄く重いのだが、途中、てこの原理でそれを緩和できるようになっているのだから。


 だが、それはあくまで鉱人基準の話でしかない。コレを引いたまま狙いを定めろだって?何の罰ゲームですかね。


 きっと、100kg超えているんじゃいかな?もう一つの記憶を探ると出てくるクロスボウの知識によれば、中世ヨーロッパで使われていたクロスボウが450kg、イングランド弓や和弓で50~70kg。で、素材の性能を生かして弓でクロスボウ並みの引きの強さに作ったから重さのある矢を遠距離飛ばせるだろうって?


 考え方が鉱人すぎてついて行けない。


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