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ちなみに、筆髭じゃなかった

 眼力だけでモンスターを殺せそうなヤバい人が目の前にいる。


「マジックバーストが出来るだぁ?フン」


 そう言って僕を見下ろしている。実際の身長はそう差が無いんだけど、あまりのその・・・・・・


「まあ、実際に見てみればわかるさ」


 アレクのオッサンもそういう。


 すると、ヨシフさんは僕を指で手招く。


「やってみろ」


 そう言って、どこかへ連れて行こうとする。アレクさんを見るが、行って来いという事らしい。イナリは関わりたくなさそうだ。僕もだよ。


 だが、拒否権は無いらしく、僕はどこへともなくドナドナされる。


 しばらく洞窟らしいところを歩くと外へ出た。


「アレが見えるか?」


 アレって何?なんてボケは許されそうもない。


 見えるよ。150mは先にある的がさ。


「マジックバーストとかふざけた事言う連中は散らしも出来なかったあの的。散らせるもんなら散らして見な」


 えっと、桜の入れ墨では無いんですよね?


 ちょっと目が血走ってるので下手な事も言えない。


 言われたように弓を構えて矢を番える。


 矢にいつも通り魔力塊を形成して狙いを定める。


 不思議とここは風も無い。腕試しの的にしてはかなり大きく、この距離なら外す心配は全くない。


 気楽に射ると。しまったな。あまりに気を抜き過ぎて真ん中に当てるのは無理そうだ。


 などと思って矢を見送っていると、当たった瞬間、的が砕け散った。


「はぁ?」


 何、普通の的じゃなかったの?


「テメェ。本当にやりやがったな。だが、その『森の民』の竹矢じゃあ、魔力が無駄になってやがる。本来なら半分も要らねぇハズだ」


 と、一度見ただけで何やら得心している。


 そして、2人が待つところへと戻った。


「アレク。本物じゃねぇか。そうだな。デス・スパイダーの黒布一反でなら受けてやるよ」


 ニゴリとアレクを見る鍛冶師ヨシフ。


「それで良いのか?」


 アレクのオッサンが驚く。


「ああ、どうした?」


 ヨシフさんは気付いていないのだろうか?


「今日、デス・スパイダーをそいつが狩った。胴に一撃だ」


 アレクの言葉に血走った目で僕を見る鍛冶師。


「先に言え。なら、無傷で腹が手に入ったんだな?ミスリル塊用意しろ」


 ミスリル塊ってまた凄い話だな。いや、デス・スパイダーの原液袋と比べたら無価値に等しそうだけど。


 一体何を作ろうとしているのだろう?


「小僧、お前の使う矢はその長さで良いのか?」


 そう聞かれたので、実はデス・スパイダー素材でセルゲイさんが何やら弓を作るらしい事を伝えた。


「そうか。あのガキとも話をする必要がありそうだな」


 そう言って、工房へと消えた。


 僕らはそれから上層へと戻る。



「そういや、お前ら泊るところあるのか?」


 今更のように聞いてくるアレクさん。


 当然そんなものはないので、無いと伝えると、部屋を用意すると言ってくれた。


「ちょっと!こいつと一緒ってどういうこと!」


 用意されたのは何故か宿ではなく「家」だった。


 アレクさんが不思議そうにこちらを見ている。


「宿じゃないんですか?」


 僕がそう代弁した。


「何言ってんだお前ら。アーマード・マンティス狩るまで居るだろうが。宿なんて金がかかるだけだ。ここなら自由に使えるぞ」


 確かにそうだろう。


「心配するな。岩だからな。防音はしっかりしている」


 うん、そう言う話じゃないんだ。でも、野宿と比べたら断然マシでしょ。


「未婚の領主の娘なのに!」


 などと訳の分からない事を言うイナリは放っておいて、必要な物を買いに行く。


 お金?セルゲイさんが当座の生活資金を用意してくれた。買取金額には全然届かないらしいけど、そもそも、これから弓、防具、矢を揃えるのにかなり掛かるから、とりあえずと言う事らしい。まあ、この家もなんだけど。


 

 谷底から少し足を延ばすと開けた場所がある。


 ここは種を播いて次の日には芽が出る不思議空間だ。きっともう一つの記憶にある酸素濃度だけでなく、魔素濃度も高いからだろう。色々不思議な事が起きている。


「おりゃ!」「とう!」


 イナリがそんな掛け声とともに舞って、イナゴを次々と倒していく。谷でメインとなる食材はコイツで、猟の方法も複数あるそうだが、イナリに合った方法がこれだった。


 イナゴを弓で狩るには数が多いので僕は狩らない。


 ただ、デス・スパイダーほどの危険性はないが、糸素材としては重宝するパウークという種類のスパイダーが存在する。糸の強度はデス・スパイダーに劣るものの、それでも鉄の3倍、合金の2倍弱、ミスリルよりも軽いという素材らしい。

 そのパウークを獲るためにヨシフさんに作ってもらった試作の矢を使ってみたが、ホント、使いやすくて驚いた。


「もう良いんじゃない?」


 草に夢中のイナゴを手当たり次第に叩きのめしていたイナリに声を掛ける。


 早々減る事の無いイナゴを狩るのは気兼ねが無いらしく。それでいて槍の練習にもなるらしい。


「そうね」


 そう言って袋に詰めていく。


 メイン食材と言うだけあって、多くの人が狩ってくるわけだが、値崩れすることはない。イナリの働きで今日もホクホクだ。


「アンタもやりなさいよ。スパイダーばかり狩ってないでさ」


 などと言われるが、矢で狩れる量じゃないんだよ?


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