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ま~たとんでもないことが

「セルゲイ、何の用?」


 美人さんが忘れの海の塩なみに塩対応してる。


「いや、何って、アレクのオッサンが荷物持ち連れて帰って来たから、とうとう狩ったんだなって」


 後ずさりながらそう答えるイケメン。


「狩ったのは小僧だがな。つまり、素材の使用権もコイツが一番だ」


 そう言ってオッサンは僕の肩を叩く。


「いやいや」


 そう言って笑うイケメンに先ほどの説明を聞かせるオッサン。


「マジックバーストを実現した『森の民』って、そんなチートが許されてイイ訳がない!」


 イケメンがいきなりラノベタイトルっぽい台詞を叫んだ。懐かしさがこみあげて来るな。ラノベって。


 ここに居る僕自身がラノベ主人公なんだけど。もう一つの記憶があまりの歓喜で機能してない。


「事実だ、セルゲイ。で、どうする?小僧」


 と、アレクのオッサンに聞かれた。


「待って。そもそも、『森の民』とは言っても、冒険者じゃないでしょ?」


 美人のアーシャもそんな事を聞いてくるので冒険者カードを取り出した。


「決まりじゃねぇかよ!」


 残念イケメンのセルゲイが頭を抱えている。


「仕方ねぇだろ。それに、小僧は『森の民』だ。お前の考えていたブツを持たせるにはちょうど良いんじゃないのか?」


 ニヤついておどけて居るが、アレクのオッサンの目は真剣だった。


「でも、鉱人じゃないのに無理だろ。いくら俺が谷一番の糸職人だとしてもだ」


 こちらも目が笑ってない。何の話?


「アンタら、ホントにやる気なの?」


 アーシャさんまで真剣な顔をしている。


 いや、だから、何の話?


「ねぇ、何の話よ。分かるように説明しなさいよ」


 うん、ごーいんぐまいうぇいなお方は空気を読まずにそう口にした。


「ちょっとした『夢』の話だよ」


 そう言って笑うオッサン。


「そうそう。糸を窯で焼いてさらに強化したブツで弓を作ろうって話だよ。アーマード・マンティスの鎌を叩き落とすためにね。ホント、『夢』だよ」


 そう笑うイケメン。


「ただの『夢』よ。600m先から気配を消して狙撃しないと狩られるのがこっちって相手を狩ろうなんて非現実的だもの」


 呆れた様に手を振って受付席に戻る美人。


「それ、出来なくは無いですよ。色々問題は山積みですけど」


 僕はそう返した。


「バカか?」という視線が6と、事態を把握できていない視線が2。


「カーボン弓を用いて遠射するんですよね?600mだとそんな強弓を直に僕が引き続けるのは無理がありますね。それに、いくら『森の民』の目が良くて狙いが精確と言っても限界があります。その距離になるとしっかりしたスコープが無いと難しいでしょう」 


 ただし、それはあればできるという自信でもあった。


「ちょっとアンタが何言ってんのか分からないんだけど?」


 だと思うよ。普通は分からない。


「マジックバーストが出来る上に、『カーボン』を知ってるのか?お前」


 驚いているのはイケメン。オッサンも内容について来れていない。すでにアーシャさんは聞いてすらいなさそうだ。


「セルゲイさんの認識とは少し違うと思いますが、概要は同じかと。繊維を焼成して、その繊維を編んだモノに硬化剤を浸み込ませてさらに熱硬化させるという事ですよね?」


 もう片方の知識が機能を再開してくれている。


「そうだ。曽祖父が編み出した『カーボン』を扱えるのは僅かな織物職人だけだ」


 カーボンが織物として認識されてる世界というのもちょっとどうかと思うけど、扱う繊維が鉄より強度のある蜘蛛の糸というファンタジー世界だから、そこは気にしてはいけないかもしれない。


「ああ、弓は門外漢だから分からんが、どうするよ、その小娘は。『北の部族』だろ?」


 普通に聞けば何を言ってるのか分からないと思うが、イナリは意図を察してムッとしている。


「鉱人ほどではないにしても、本来ならもっと筋肉質で、さらに言えばもっと俊敏・・・・・・」


 そう、僕が補足した。そう、北の部族と言うのは僕ら森の民とは違いマッチョ体質である。ただ、それは鉱人の様なパワー型ではなく、細マッチョ。だが、イナリはそうではない。


「どうせアタシは戦力外よ。領主の娘なのに戦えないひ弱です!」


 そんなイナリにふっと笑うイケメン。


「お嬢ちゃん。そう悲観するもんじゃない。そういう事も出来る奴が居る。甲冑師のクニャージなら、良いモン作るだろう」


 と、謎な事を言い出す。そこでふと思い浮かんだ。


「パワーアシスト?」


 不意にそう口を突いて出た。


 何だそれという顔で僕を見るイケメンとイナリ。オッサンは・・・聞いてた?


「アレでしょ。魔力で力をブーストする鎧」


 そう、イケメンに問うてみた。


「いや。流石に魔力を使う技は実現できてないな。それが出来ればって考えてる奴は多いけど。人の行う動作から力を取り出して補助するんだ。曽祖父が考えたスゲェ発明だ」


 おいおい、出力型パワードスーツじゃなくて、パッシブ型アシストだと?そっちの方が凄いんじゃないか?


 ここ、ホントどこよ・・・・・・


「それで、そろそろ良いかしら?」


 アーシャさんが声を掛けて来た。


「おお、そうだ。依頼達成証明だな」


 アレクのオッサンがいそいそとアーシャさんから何やら受け取ってる。


「素材は直でセルゲイに渡すことになりそうだ。あ、脚と頭は買い取ってもらおうか」


 そう言ってイナリの側にあった脚と頭を指さした。


「それはアレクさん?それとも、その子?」


「そりゃあ、こいつ等だろ。俺はこいつ等から巣の回収料だけもらうよ」


 そう言ってオッサンは笑った。 

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