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自覚したらそこに強敵が居た

 ふと気づくと穴に落ちたらしい。


 幸いにも深くはなく、少し頭が痛いだけだ。


「ここはいつ?私はどこ?」


 そんな、誰かに助けてもらいたい衝動にかられたボケも出たが、気にしてくれる気配はなさそうだ。


 何をやっていたか思い出してみると、今日は冒険者に登録して初心者講習に参加していたはずだ。


 だが、仕事で工場を歩いていた記憶がある。


 工場ってなんだ?


 イヤイヤ、冒険者ってどういうことだ?


 ちょっと自分でも事態がよく分からないんだが。


 ゆっくり起き上がって穴から顔を出してあたりを見回してみる。


 ここは工場なんかではない。間違いなく冒険者講習でやって来た森だ。


 工場?


 そうか、工場ってのはここの話じゃないな。どこだっけ?


 少し考えてみると、思い出した。


 どうやらこれが転生って奴らしいことに。


 神さまには会っていないから転生特典は無いんだろう。たぶん。あったらいいなぁ~


 だが、考えてみれば僕は「森の民」って選ばれた部族?なんだ。弓の名手が多い村でも指折りのウデを持っている僕がチートでなくて何だよ。


 とも思うんだが、それって世間知らずがそう言ってるだけだって云う考えも頭をよぎる。


「よりによって何でこんな場所にシールドボアって厄介な奴が出るんだよ」


 ホント、ここら辺に居るはずがない。川を挟んだ向こうの森に居るんじゃなかったのか?


 そうか、ボアってイノシシだから海でも渡るんだっけか。


 持ち物を確かめると弓は壊れていない。矢もまだ持ち合わせがある。


 シールドボア。


 森の民にとってもあまり相性が良いとは言えない魔物だ。


 恐竜にトリケラトプスっていたはずだが、アイツのエラっつうかトサカっつうか、あの広がった部分を魔法で再現してるイノシシなんだ。


 だったら胴や頭を狙えって?


 シールドって名前は伊達じゃない。あくまでトサカは見栄えであって実は全周に結界を張り巡らせてるんだ。


 それを破るには魔石を加工した特別な矢じりか魔法による力業しかない。


 魔石の矢じりなんて街でひと月生活できるって言われるほど高額だし、シールドをうち破るほど長時間魔法を持続する魔法師って冒険者なんかにはならないレベルだ。そんな魔力と技術があるなら貴族のお抱えとか教会のお抱えになってるよ。


 つまり、ヤツを倒すのは新人冒険者には無理って事だ。


 だけど、魔石で出来るなら矢に魔力塊を纏わせれば可能じゃないのかと今の僕は思ってる。もう片方の記憶だとその魔法矢で炎やら氷やらを現出させることも可能って。


 なら、やってみても良くね?


 穴を這い出てシールドボアを探す。


 ふと見ればヤツに弾き飛ばされたんだろう新人の遺体が転がっている。それもひとつじゃない。


 そして、見つけてしまった。


 奴は穴に俺が落ちた事を理解していたらしいな。這い出して来るのを待っていたんだろう。


 いや、見ているのは別の方角か?


 どっちでもいい。弓なら狙える距離だ。


 矢を番えて矢に魔力塊を纏わせる。表面にまんべんなくの方が良いだろうか。


 などと考えながらそれを終え、狙いを定めて放つ。


 「森の民」だからな。弓ならあくびしながらでも扱えるさ。


 シールドボアに届いた瞬間、体表面の手前でフラッシュを焚いた様なまぶしい光を放った。


 どうやら成功らしい。ドヤ! 


「何でやねん!」


 何の事はない。フラグという奴だよ。ヤツは何事も無かったかのようにこちらへと体を向ける。


 話しによればシールドが発光するのは破れた証拠だという事だったんだが?魔石矢を使った時にはああやって激しく発光して崩れ落ちるって習ったぞ、座学で!


 だが、ソイツはピンピンしてやがる上に攻撃態勢だよ!


 いや、考えるんだ。


 魔力でヤツのシールドを破る事には成功した。のかもしれない。だが、矢はそこで力尽きたって事では?


 あ!ERA(爆発反応装甲)みたいなもんか?


 だとしたら、魔力塊に結界が対抗して相殺されている可能性が高いな。あの壁を超えなければ奴にはダメージが入らない。


 うん?


 タンデム弾頭?なんじゃそら。


 ああ、そうかそうか。魔力塊を二つに分ければいいのか。


 って、空間が複数なきゃ無理だっつうの。矢の表面で塊を二つ作るような器用な技が出来るなら族長の所へ行ってるんじゃね?そのくらいの操作技術だ。


 「森」を出たならその足でどっかの貴族に召し抱えられるほどには稀有な存在だ。


 いや、まて。


 そう思って矢筒に手を伸ばす。


 そもそも矢に魔力を纏わすなんて中二な発想をここの連中はやりはしない。魔力はそれを編んで術式を組み込んで炎だの水だの風だのを現出させる事に用いるエネルギーだ。矢に纏わせたからって何かが出来るわけではない。


 なんなら、炎や水を現出させたら飛びはしないじゃないか。風?それこそ無理だろ、空気抵抗どころの話ではない。


 当然だが、着弾点で現出させるなんて発想も存在しない。出来るのかどうかも分からん話だ。


 しかし、ここに一本の矢がある。節で区切られた中空の矢が。


 それを番えて中空部分に魔力塊を小分けにしていく。


 何、部屋が分かれているなら勝手に分離してくれるのさ。そういう植物だからな。原材料が。


 欠点を上げるならば、矢自体が魔力を吸収するから長くは持たないって事。ヤツに刺さるくらいの時間なら何とかなるだろうが。


 節三つで空間は二つ、矢じりも節先の加工だからここにも塊入ってるだろ、たぶん。きっと・・・・・・


 突進を始めたシールドボアにその矢を放った。


  

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