酒に呑まれたその後に
「……はぁ」
「大丈夫だから、な?」
顔色が死ぬほど悪い――精神的なものと二日酔い――彼女を全力で慰めながら、昨日のことを思い出す。
…
……
………
昨日は、俺と彼女が入っている部活の飲み会だった。
人当たりがよく、人のいい彼女は必然的に部活の幹部になっていて、いろんな人と話しながらハイペースで酒を呑んでいた。
結果、それほど酒に強くない彼女は当然の帰結として……
「あっはははは!! ねぇ、きーくんこっち来て!」
……超ハイテンションで暴走していた。
どうやら笑いが止まらないらしく、笑い転げながら周りの人に絡みまくる彼女のフォローに終始する羽目になり、酔いなんかは完全に吹っ飛んだ。
「はいはい。とりあえずおちつけ碧」
「えっへへ~♪ きーくんすきー」
ぐでーっと抱き着いてくる彼女を適当にあやしながら、生暖かい目線を向けてくる仲間を目で牽制していると、彼女が唸りながらこちらを見ていた。
「きーくん! ちゅー!!」
「は? いやいやここどこかわかってるか? サークルのメンツの前でとか死ねるんだが」
「するの!! どーせみんなわかってるんだから!」
「やれやれー!」
「ひゅーひゅー!」
「おまえら・・・」
酔っ払い特有の無敵の羞恥心なしで突っ込んでくる碧に、これまた酔っ払いのノリではやし立てるサークルの奴ら。
気の早い奴はもうスマホで撮ってるし、がっつり肩をつかんでいる彼女は止まりそうもない。
覚悟を決めるしかなさそうだ。
「とりあえず座れ」
「やった~!」
よろこんでぴょこぴょこ動き回る碧をどうにか座らせると、そのまま覆いかぶさるようにキスをした。
一層激しくなる囃し声を背に、すぐに唇を離すと体を支えるふりをして耳元でささやく。
「続きは帰ってからな」
「・・・! うん!」
キャー、と赤い顔に手を当てて騒がしい彼女に酒を与え続けて潰して、家まで背負って無事に帰って来これたのは行幸と言わざるを得ない。
酔っ払いの彼女とサークルメンバーが騒ぎに騒いであれ以上のことが起きなかったのがなによりだ。
そして今、彼女は吐き気と後悔で死にそうになっている。
「うえぇぇ……ごめん、ごめんねきーくん…」
「いいから楽にしてろ。飲ませすぎたのは俺も悪い」
「それじゃなくて……それもだけど、きのうのキスとか…」
「それもいい」
濡れタオルで顔をぬぐってやると、二日酔い以上にひどい顔をしていた。
「碧とのキスは嫌じゃない。サークルのお前に色目を使っていたメンツに見せつけられたんだから結果的にはよかった。直接見えないようにもしたしな」
「……なんだ、おんなじこと考えてたんだ……」
顔色は悪いままだが、どこか晴れたような声で呟く彼女は、昨夜より…そしていつも通り魅力的だった。
「明日サボってのんびりしよーよ」
「……なら今日しっかり休んで治せよ」
昨日より楽しいことになるんだからな。