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第96話、氷だの鉄仮面など似合わないくらいに、心は熱く飛んでいき




Girls SIDE




ガイアット王国にて起きた、異世界からの『厄呪』による事件……侵攻侵略は。

案の定、リアータたちが勢い込んで向かった意味は何だったのかと言うくらいあっさりと解決してしまった。


と言うよりも、ガイアットの姫、イリィアについていく形でやってきたリアータたちとしては。

人の家のお父さんと、たくさんいるらしいお母さんとの揉め事に巻き込まれそうになったところで。

子供を叱りつけ躾けるために物語の中で生まれたけものが現れたわけだが。



同じようにいつも物語を壊す……あっけなく台無しにしてしまうマーズ曰く。

今回の件に関してはほとんどがそのけもの……ギルルと呼ばれている彼の仕業らしい。


らしい、などと素知らぬ振りをして、その大きさにさえ目をつむれば。

長毛の瞳まで隠れてしまうタイプの大型犬にしか見えない彼の、ご主人さまになれる権をめぐってマニカとハナが争っている間に、ミィカとともに、もふもふを堪能させてもらっていたが。



実のところ、リアータとしては彼、『クリッター』とは初対面というわけではなかった。

それもこれも、ギルルと呼ばれるようになってしまった彼が、世界の中枢……生と死の境、その門番めいた『役目』を負うものの守護者でもあるからだ。


その役目の前任者は、リアータの祖母で。

次代の一番手となる候補のものが、何らかの理由があって、その任につけない場合の代役の一人として、リアータの名前が上がっていた。




(でも、あの様子だと私にお鉢がまわってくることはなさそうね)


どこかで聞いたばかりのような。

久しぶりのガイアット親娘水入らずを邪魔しないためにと、そのままとんぼ帰りすることとなったリアータは。

マーズやマニカウィーカたちとも別れて。

ハナやミィカとともに、スクールの寮棟へと舞い戻っていた。



(ギルルさん可愛カッコよかったなぁ、ご主人さまになったらお腹を枕がわりに貸してくれるのかしら)


思えば、思っていた以上にもふもこで、あるいは母のように。

自分にも、自分だけの魔精霊や使い魔、式神を探し見つけ出すべきかな、なんて思っていたからではないだろうが。

夕飯を終え、就寝の準備を始めていたリアータの部屋へ、来客の気配がして。



『夜を駆けるもの』あるあるで。

思わず寮棟の中庭へと続く窓の方を見やってしまったが。

それは律儀にもちゃんと部屋の扉をノックする音で。



「はーい」


一応念のため夜着の上に巻くタイプのマントを引っ掛けて。

扉を開けると、予想通りと言えばいいのか、『夜を駆けるもの』スタイルなマニカと、ハナとミィカの姿があった。




「夜分遅くにこんばんは。ちょっとお話、いいかな」

「ほほーいっ、今日も今日とてがーるずとーくしにきたぞーっ」

「毎度すみませんね。裏庭のところでまごまごしていたカワイイに過ぎる子を発見したものでして」

「もうっ、ミィカさんってば! それは言わない約束でしょうっ」



『夜を駆けるもの』と言ったら、マーズがこなしているものだと勘違いしていたのも今や昔。

悲しみに暮れる深窓の姫君を慰めるために、毎夜月光のぞく窓際から颯爽と訪れていたと言う、それこそ物語のようなシチュエーションに憧れていないと言えば嘘になるが。

過去も今も現実は女の子同士と言うオチである。


ミィカにからかわれて、あっさり『夜を駆けるもの』へなりきるための仮面を剥ぎ取ってしまったマニカは。

今そこにそうしているのを、夢だと称しているらしい。


よくよく聞けば、ガイアット王国の時のように、『おぷしょん』などを借りない限り、マーズが眠りについている時にしか出てこられないから、とのことだが。


実際はこんな早い時間帯から、マーズが寝てなどいるはずがないから。

きっとマーズが寝たふりでもしてその身体をマニカに貸しているのだろう。


リアータはもちろん、そんな事など口にはせず。

いつものように三人を部屋へと招き入れる。




「もう寝る前だから、熱めの果実茶砂糖なしでね。……それで? 結構常連なハナさんとミィカさんはともかく、マニカさんがわざわざ直々にここへ来るってことは、何か頼みごとでも?」


今の今まである意味ずっと、マーズの後ろへと隠れてしまっていて。

世界の礎となる使命が、自分に回ってくるのだろうと。

半ば覚悟していた部分はあったが。


マーズの影響なのか、最近のマニカは表に出ることも多く、とても活発的で。

ちょっと申し訳ない気持ちにはなりつつも、彼女が前向きになってくれるのならば喜んで力を貸しましょう。

そんな気持ちでおもてなし、単刀直入で問いかけると。



「はい。実はですね。次の休みの日にでも、リアータさんの故郷であるラルシータへとお邪魔させてもらえないかと思いまして」

「ガイアットのむちむちおねーさんとは召喚契約、げっとしたからな。次の目標はラルシータにいる魔導人形のおねーさんなのだ!」


ある程度は予感もあった、マニカのそんなお願いと。

それに便乗してついてくる気満々な、ハナの声高な宣言が飛び出してきて……。



     (第97話につづく)








次回は、5月26日更新予定です。


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