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第74話、すぐそこにある騒ぎに気づかないふりをして、穏やかに緩やかにお茶会はつづく



Girls Side



ひとしきりマーズに取り巻きくっつこうとする先輩後輩の、戯れあいを終えて。

ウィーカの爪の届かない背中、耳後ろに乗っかったことでこれ以上邪魔されないと判断したのか。


ハナやミィカたちとともに、本日のお茶会会場……あまりここらでは見られない独特な世界観の庭園へと案内された真っ黒なカラスそのものな【エクゼリオ】の魔精霊クロは。

タクトが手づから作ったと言うハーブティと焼き菓子を堪能した後、申し訳なさげにおずおずと。

それまでは使えなかったはずの言葉を駆使し、ここへ来た目的を口にする。




「あの、ええと。すいません。タクトさん。私実はですね、魔導人形さんについてとても興味がありましてですね。もしよろしければお話を聞かせていただければと、こうして参った次第なのです」

「ん? 魔導人形について聞きにきたの? うん。わたしの実家、ヴルック家にもたくさんいたし、結構詳しいよ」

「みゃふん。おみゃーくっそまじめだにゃぁ。そんままどろっこしい聞ききゃたせんでも。まどーにんぎょそのものなクーママに興味があるんにゃろ」

「え? あ、いやその。大丈夫なんですか。魔導人形であられること知ってしまっても。今まであ、ご主人さまも知らなかったのに」

「あぁ、うん。みんなにだったら別にいいよぉ。ご主人さまってマーズ君のこと? あれ、そう言えば言ってなかったっけ。クーちゃんとウィーちゃんのお友達として気づけば家族みたいにいるのが当たり前だったから忘れてたよ。まぁ、わたしとしては実は魔導人形さんだって自覚があんまりなかったりするからねぇ」



クロとしては、主であるマーズにすら今の今まであかしていなかったわけだから。

彼女が奇跡と呼ばれた魔導人形であることはなるべく公にするべきではないとの配慮だったが。

ウィーカも当のタクトも、あまり気にしていないというか、ここにいる皆ならばあかしても構わないと判断したのかもしれない。



(……)


そんなふたりの様に、偽ってここにいる自分が申し訳なくなってきて。

ここは礼儀として正体を明かすべきであろうと思い立った時。

すべてわかっているのだ、とばかりに割り込んできたのはハナであった。



「クーさんのお母さんは【ヴルック】の魔精霊の中のまどーにんぎょうさんって種族なのか? うちにはさまよーよろいとかしかいなかったけど、リビングドールとかとは違うのかな」

「アンデット系モンスターと、【ヴルック】の粋とロマンを集めた魔導人形をいっしょにしてはいけませんよ姫様」

「え。だって、お人形さんの中に魂、魔力がはいって動いてしゃべれるのは同じじゃないのか? あ、でもでもマニカもクロさんの中に入ってるんだから違うのかぁ」

「え? いきなり何を言い出すのですか姫様、クロさんがマニカさんとなんですって?」

「ん? なんだミィカ、気付かなかったのか? クロさんの中にマニカいるじゃん。いつもマーズの内なる世界にいるみたいに」

「えっ?」

「……あはは。あの、その。さすがですね。ハナさん。ええと、その。ごめんなさい。私、マニカです。

今回、クロさんの体をお借りしまして、兄さまから抜け出してきちゃいました」



何でもないことのように、ある意味タイミングいいような悪いようなところで。

きっとやってきた時から気づいていたらしいことを口にするハナ。

それに気づいていなかったらしいミィカは、まじまじとクロinマニカ見つめてくるから。

今流れにのって正体をあかすつもりだったんですけどもなんて言い訳できずに、クロのままペコペコと頭を下げていて。



「兄さま? あら、もしかしてマーズくんの妹さん? いるのは知っていたけどこうしてお話するのは初めてよね」

「ふみゅん。あたしだってはじめっから知ってたもんね。だからまーずにとっつくむしの先輩後輩だって……って、だれがむしにゃぁっ!?」

「うわわぁっ、クロさんにお借りしてるんですからごろごろするのやめてくださいよ、ウィーセンパイぃっ!」



しかし、タクトはさすがの年の功でマニカがこっそりやってきたのを知っても動じるどころかある程度彼女の存在を知っていたらしくしみじみしていて。

ウィーカの方も、言わないだけでやはりマニカがやってきたことに気づいていたらしい。

そのまま同じひとにとっついてるものどうし? の仲良しさで再び戯れあいを始めてしまって。



「くっ、なんということっ。そんな面白に気づいていないのが私だけだったと……って、姫さまっ、どうしたんですかまた急にっ」

「おー、ボクたちもおんなじ落とし穴のにゃんこだからいちゃいちゃしようかなって」

「いまいち意味がわかるようなわからないようなで、何仲間なのかは非常に気になるところですが無問題ばっちこいですよ姫様っ」

「ふふふ。わたしたちの子供たち、みんな仲良しで素敵ねぇ」



けっして、自分たち世代が仲良くなかったわけでもないが。

ある意味でそれは、タクトたち親世代が求めていた平和そのものな光景でもあって。


オニの居ぬ間に苦労も知ってか知らずか。

少しばかり緩く、話題が逸れたままに少女たちのお茶会は続いていく……。



      (第75話につづく)








次回は、1月30日更新予定です。

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