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第66話、とらぶる未満をなかったことにして、フィールドに馬とうさぎを召喚する




 SIDE:マーズ




どうせウィーカのやつはいつものように勝手知ったる我が家に侵入し我が部屋にて惰眠を貪っているだろうし。

今日の予定として、そんなウィーカの本来の主の元へと、休日の日課も含めてウィーカを返しに行くのだから同行に問題はないわけだが。

マーズ……と言うよりも、マニカに会いに朝も早くに我が家の近くで待ち伏せしていたハナとミィカの事を思うと、予定を変更する必要があるだろう。

 


元々今日は、ウィーカをクルーシュトにお返しした後。

いつものクルーシュトとの『打ち合わせ』があって。

その後に、魔導人形を扱わせたら世界有数の、ヴルック……クルーシュトの母方の一族というか。

現実的に魔導人形にしてクルーシュトのお母さんである彼女に、魔導人形についてのことを色々聞いてみるつもりだったのだが。



マーズがそうであるのだから、マニカにとってみてもハナやミィカはあっさり素顔を明かすくらいには気にかけていた、気になることがあったらしく。

どうやらマーズの内で覚醒してしまったようで。



(まぁ、よく考えたら元より運命共同体なのだから隠し事なんて不可能なんだよな。方針を転換しよう)



マニカは、色々な柵は置いておいてマーズ共にいたいと、一緒に在りたいと思っている。

であるのならば、マーズにはもう敢えて彼女と分かたれる方法を取る必要はないと思うようになった。


だが、同一人物……身体を共有しているのならば、夢のように語り合い、触れ合うこともままならない。

マーズとしては、こうしてハナたちとともにマニカも一緒になって陽のもとを出てスクールに通い、時には冒険なんかしてわいわいやっていきたいのだ。



離れたくない、離れられないのならばずっとじゃなくてもいい。

マニカのことを認識してマニカの元を離れ、スイ理事長やチェリに乗り移った、移れたことで生まれた光明。

マーズそのものとも言える魂が一時的にも居座れる、いてもいい器を探す。

初めはマニカに、なんて思っていたが。

そもそも抜け出て移動できるのはマーズの方なのだから。

どうせならこの今の愛すべき素晴らしい肉体に引けを取らぬような機体を。

リアルに鋼の肉体を持ち合わせている、恰好良く強そうな魔導人形を注文、あるいは探し出し見つけ出すつもりでいた。



……そう、その時点でマーズは少しばかり勘違いをしていたのだ。

クルーシュト、あるいは当然顔を合わせたことのある彼女の母を見ていれば分かりそうなものなのに。

ゴーレムやロボットもかくやな、力仕事と防衛、土木作業や少女の心を癒すための歌を流す的なものが魔導人形であるのだと。





「うむ、そうか。まずはウィーカをお家に返してあげるんだな」

「ウィーカさんのマスターは、クルーシュトさんでしたか。ガイゼルさんのお宅には伺う機会もなかったですし、ちょうど良いです。街の散策がてら、向かうといたしましょう」

「みゃぅん」

「そういや、ミィカはここ出身なんだもんな。街の観光よりも普段行けなさそうなところの方が楽しいか」

「あ、でもボクは街の観光もしたいぞ。まぁ、今日じゃなくてもいいけど。確かにともだちのお宅には行ってみたいな」



そんなわけで。

先程までのミィカにとっての恥ずかしいやりとり……レッドなツンデレっぽい一連の流れはなかったことにしたらしく。

それでも、俺の脳内記憶にはしっかりきっかり刻まれていて、そこの一等席におわすマニカは見せられないようなによによ顔をしているだろう、などとは当然口にはせず。

今回は、何やら外せない用事があったらしいお友達第一号なリアータのお宅訪問は。

お宅どころか城……ユーライジアスクールと双璧をなす学園が自宅であるし、そもそもが別大陸になるのでまた別の機会にしておいて。

結局のところ当初の予定通りに、一同はクルーシュトの自宅、ガイゼル邸へと向かうことになって。






ガイゼル邸はスクール校門から、スクール下町を挟んで世界と同名のユーライジアなる街の正面口近くに居を構えている。

それは、先祖を辿ればガイゼルの一族が代々門番を生業にしていたからであり、街の平和を護ることを誇りにしていたからでもあった。



「にゃーん」

「あぁ、ちょうどいい。今日は俺だけじゃなくお客さんもいるって、お家の人に言っておいてくれ」


一声鳴いてマーズの頭からぴょんと飛び降り、ユーライジア正面口の脇に広がる、背のそう高くない草むらへと駆け出していくウィーカ。

高くはないとはいえ、そんなウィーカの真白な姿はあっと言う間に見えなくなって。




「ここ、ですか? フィールド……いえ、草むらがずっと続いているようにしか見えませんが」

「ここっつーか、この先っつーか。道を外れたこっち側は全部ガイゼルさんちの敷地なんだよな、実は」



ユーライジアの街を、スクールの部分も含めて四つに区画すると、ウィーカの駆けていった先一体はユーライジア四王家の一つでもあるガイゼル家の管轄になる。

(ちなみに、正門の道を挟んで反対側は、女系一族なせいで遠慮してしまってあまりマーズは近づかないカムラル家の管轄で。スクールの学生や従属されている魔物、魔精霊たちが日々暮らす場所を、エクゼリオ家が。魔法研究棟や職員棟、スクール裏山にあたる場所を、ヴァーレスト家が管轄している)



「ほえぇ、ここぜんぶクーさんちなのかぁ。魔物さんたちが今にも飛び出してきそうじゃないか。……よし、せっかくだからくさをはむがよいぞ」

「姫さまってば。またこんなところで召喚して」

「ってマジかよ。無詠唱ってレベルじゃねぇじゃん。やるなハナ」



ウィーカを待っている間にとばかりに。

そんな、偉そうな口ぶりだけど全然偉そうに見えない言葉とともに。

ハナが召喚契約したばかりのルーミとバイを呼び出したかと思ったら。

勝手に草刈りという名の餌やりを始めていて……。



     (第67話につづく)








次回は、12月23日更新予定です。

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