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第64話、エピソード3、『インディスアーム、未来』



Girls SIDE



「おーい! マーズーっ!! ……あ、やっぱり噂のにゃんこウィーカもいっしょだな!

ミィカの言う通りだな。せっかくのお休みだし、町を案内してくれーっ」

「ふふ。しもべの都合などまるでお構いなしの我が儘なところが、姫様っぽくていいですね」



ウィーカが何者かの気配を感じ取り、鼻とひげをすんすんさせ、そちらに顔を向ければ。

何かとうわさの転入生二人の姿があった。


リアータか、はたまた主のクルーシュトか。

ウィーカの方としても気になっていたのと同じく。

ハナとミィカも、世にも珍しい【セザール】の魔力秘めし猫でもあり魔精霊でもあるウィーカのことが気になっていたのだろう。



『ふにゅう。朝会で離れたところからは見てたけど、間近で見ると確かにまーずがめっさ好きそうな二人だにゃ』

「(……あんまりいじめてやるなよ。返り討ちにあっても知らんからな)おはよう。二人とも。わざわざお出迎えご苦労」



今は、マーズの内で引っ込んでしまっているマニカ自身が、その終の棲家を出て行くつもりがないわけだから。

今日の予定は元よりあるようでないわけで。

言われてみればスクール下町と呼ばれる場所の案内、ちゃんとしていなかったなと思い立ち、朝の挨拶とともに片手を上げ、二人が駆け寄ってくるのを待っていると。

マーズにだけ聞こえる、そんなウィーカの声がする。


めっさ好きそうなのは、否定するところが見当たらないから流すとしても。

普段から猫の姿をとっているくせして喋ることが好きなウィーカが、【念話】へと切り替えたのは。

マーズやリアータ、クルーシュトと言ったごくごく親しいものとしか喋らない、恥ずかしがり屋な部分がまったくもってないとは言い切れないが。

光の勇者と闇の魔女の一人娘といったハイブリッドな本性を曝け出すことなく、か弱い猫のまま近づいた方が警戒心を抱かずにもふもふしに行けるといった打算もあった。



そんなウィーカに一応心内で忠告だけはしたものの、ウィーカにはあまり響いた様子はなく。

意気揚々とハナたちの元へと駆けていって。




「みゃう~ん」

「おぉ、すごいぞ。ミィカ、やっぱり【セザール】属性の子だっ。【セザール】属性はうちにいなくてなぁ。おっと、申しおくれた。ボクはハナ・サントスール。こっちがメイドのミィカ。……どうだろう、ボクと契約してはくれないだろうか。さっそくだけど、クルーシュトから聞いていてね。もし会えたらぜひにと思っていたんだ」

「……っ、どうも。メイドのミィカです」

「……?」



いつものミィカならば、【セザール】属性どころか、獣型の魔精霊には軒並み嫌われて逃げられてるじゃないですか、くらいは言いそうなのに。

何だか少し腰が引けている気がしなくもなかったから。

マーズがそのことにおや? と疑問に思っていると。

すぐ近くに来ていたウィーカも、そのことに気づいたらしい。



と言うよりウィーカにしてみれば、ハナのような、今すぐにでももふもふしたそうな好意的な反応も。

ミィカのような、恥ずかしくて表には出さないけど、あんまり近づいて来ないでいただけると助かりますといった反応も、特段珍しいものではなかった。



今ではどうか分からないが、実はマーズといとこどうしだったりする(マーズの母がウィーカの母の姉になる)ウィーカのことを、母親が苦手にしていたのだ。

ウィーカ……厳密に言えば彼女の父だが。

彼はそれを分かっていて敢えてもふもふされに、もふもふしたくない方へととんでいく習性があって。



「おー、まさかきみのほうから近づいて……って、あれ?」

「……にぃっ!?」


たとたとっと。

華麗にとんでいった先は案の定、大歓迎状態で両手を広げてまでいたハナではなく。

その脇をぬるりとすり抜けるようにして、ミィカの元だった。


今の今まで聞いたこともなかったであろう、ミィカの悲鳴? に、ハナもびっくりして振り返ると。

時既に遅く、ウィーカはミィカに向かって正に獲物を狙う肉食獣のごとく飛びかかっていて。



「ひぃゆわぁっ!? ……って、あら? おかしいですね」

「みゃうん」

「きゃふぅっ!? や、やめてくださいっ。ザラザラしますっ」

「いいなぁ、ミィカいきなり好かれてるしぃ」


良き。

なんて眼福な光景なのだと。

ハナの言葉に同意しようとして、意味合いがまったくもって違うことに寸前で気づき、慌てて口を紡ぐマーズ。



ウィーカは、大丈夫だと。

触れても自分は傷つかないし、君が傷つくことはないと、証明したかったのだろう。


ミィカは、ウィーカのざらざらの舌の感触に飛び上がって変な悲鳴を上げつつ、リアータにも負けぬほど動かないはずの表情を目まぐるしく変えていたが。

本来、反発しあうはずの【エクゼリオ】と【セザール】の魔力が、何の抵抗もなく触れ合えていることに疑問を覚えているらしかった。


本当なら恥ずかしくて逃げ出すところなのだが。

不思議そうに首を傾げていることで、自然と受け入れる形になっており。


マーズにとってみればオレここにいても大丈夫なのだろうかと思ってしまうくらいで。

そもそもが少女たち視点であるはずなのに、初めてここにいるオレいいのかなと、メタなことまで考える始末で。




「おぅ。ミィカにさわってもぺろぺろしてもばちって言わないのか。……わかったぞ。だからウィーカはしろくろなにゃんこなんだな」


ある意味使い物にならなくなっている(ツッコミ役として)マーズの代わりに、目ざとくミィカの疑問に気づき解決したのはハナであった。

彼女が言うように、真白一色の猫かと思いきや、しっぽの先と足元だけが靴下を履いてるみたいに黒いのだ。


ウィーカによれば、パパもそうだったとのことだが。

人間族の魔法属性、その素養が髪色に出るように、ウィーカのその毛並みは彼女が相反するはずの【セザール】と【エクゼリオ】の魔力を共存させていて。


闇の魔力の素養が強すぎるミィカと触れ合っても、ハナの言うバチバチな反発が起こらないのは。

『慣れている』ウィーカがうまく暴発し荒れ狂う魔力を受け流しているからなのだとも言えて。




「……ん? ってか、なんで今まで気付かなかったんだろ」


そんな、魔力の流れを見ていて、初めて気づいたこと。

ミィカから、生まれでた【エクゼリオ】の魔力が、ウィーカに吸い取られて。

それから更に、辛抱たまらなくなってミィカとウィーカをまとめてもふもふ、抱きしめているハナへと流れ込み。

それがまた、ミィカの元へと戻っていっているではないか。



それに、一体どんな意味があるのだろうか。

ハナが男とけものばかりに嫌われるのと繋がっているのか。


そんなことを考え出したら、しっかり声に出てしまっていたようで。




「……っ! みっ、みるなあぁぁっ! こ、このへんたいぃぃっ! 【サンドーラ・エクゼリオ】っ!!」



今やすっかりキャラ崩壊……時代遅れのはずの暴力ツンデレヒロインさながらに。

闇のドラゴンをかたどった、攻撃魔法がマーズ目掛けて飛んできて……。



 (第65話につづく)








次回は、12月14日更新予定です。

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