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第61話、違う『ばしょ』にいる魂を、傍から眺めることがこんなにも




Girls Side




「……ふぅわああっ?! そこはやめてくださぁぃっ!」


見た目はスイな少女が立ったまま眠るようにフリーズしていたのは、そう長くない時間であっただろう。

びっくりして飛び上がって悲鳴をあげる様すら、ほとんど同じ顔をしている姉のアオイと違って、その種族の特性上老けることのない幼さを残しつつもスクールの長である大人な感じはあって。


それでもすぐ近くで伺っていた一同がそれぞれいろんな意味合いをもってびくりとしていると。

その隙を突くかのように、そんなスイから間欠泉であるかのような勢いで黒い黒い闇色の靄が飛び出し空の彼方へ散っていく。



「うおおぉ。なんだあれ、すっご」

「……ううむ。よく見ると『厄呪』とも違うようですね。【エクゼリオ】の魔力の方が近そうです」

「ちょ、ちょっと。大丈夫ですか理事長先生」


いったい内なる世界で何されて起こされ呼び戻されたのか。

マーズではないがツッコミたくて堪らないのをリアータは堪え、ハナとミィカのスルースキルに内心で感心しつつも駆け出すアオイとともに、飛び上がった拍子にそんままひっくり返りそうになってるスイを支えんと駆け出していく。



「スイちゃん! 大丈夫だったのっ!?」

「……っ、あ。どうもありがとうございます。って、アオイちゃんこそ。希少種狩りの異世界からの迷い人に会いませんでしたか?」

「ん? ううん? あぁ、さっきのスイちゃんがやっつけちゃった人たち? やっつけちゃったっていうかスイちゃんがみんなまとめてお帰りいただいてたじゃない。覚えてないの?」

「……」


異世界からの迷い人、と言う言葉にどこか聞き覚えのあったリアータであったが。

二人でそんなやりとりをしているのを見ていると、とてもスクールの長二人には見えない、あぁ、マーズが気に入りそう、だなんてしみじみ思ってしまって。



「わたしがやっつけた? ……あぁ、そうなんですね。クリッターさま、わたしの願いを叶えてくださったんだ。もう戻れなくなってもいいと思っていたのに、こうして解放していただけるなんてなんとお礼を言ったらいいか」

「クリッター? いや、ちがうょ。それって」

「くりったーだってえぇぇっ!? それってばちょうーぜつレアモンスターじゃぁないかぁっ! どこ、どこにいるのだっ、ボクげっとしたいぞぉぉぉっ!」

「わっ、ハナさんっ?」

「【クリッター】。魔物の脅威度で言えば世界に十二しかいないと言われる根源魔精霊と同等のS級。この世界と異世界を隔てるはざまに棲むと言われ、迷い込んだ弱者を喰らい、強者も喰らい、その力を必要としている世界へ運ぶと言われることから、【リヴァ】の根源魔精霊の仮の姿であるとも言われていて……」

「あら、ミィカってば物知りね。でもまぁ確かにそんなすごいのと勘違いされてもおかしくはない、のかしら?」

「あ、そうだょっ! 勘違いなのスイちゃん! それってクリッターさんじゃなくてお兄さんだよ?」

「えぇっ? そうだったの!? ……あっ、どうりで。おかしいと思った。しん……はっ、はわわわわっ」

「しん? って、急にどうしたのだスイりじちょうせんせー。水スライムさんが火スライムさんに変わったぞ?」

「むむむっ!? 何ですかそのけしからん反応はっ。姉さんってば、まさかぁっ!」

「うぐぐぅっ、やべて、くるしいよミィカちゃぅん」



家族同然でハナのもとにつくまでは一緒に暮らしていたらしいミィカがスイとアオイを姉と呼ぶのはともかくとして。

その見た目はハナたちとさほど変わらないとはい年上の女性二人にお兄さんと呼ばせているのは一体全体どう言うことなのか。


「そこのところは、どうなの妹さんとしては……って、あれマニカ?」


本当の妹としての意見を是非にも聞かせて欲しいと辺りを見回すもいつの間にやらマニカの姿はなく。

加えていつの間にやら、近くを跳ね回っていた桜色のスライムの姿もなくなっていて……。








桜色のスライムは跳ねる。

かしましくきゃっきゃしていたのを生暖かくローアングルから眺めているのも乙なものだったが。

完全無欠の水も滴る少女に包まれ守られていても見つかっちゃうのだから妖精スライムの内に咄嗟にお邪魔したとはいえ、見つかるのは時間の問題のはずで。

スイとは違って、何故か意思疎通ができる(チェリさんと言うらしい)スライムさんにすまないねぇとぺこぺこしつつ外へと急がんとしたわけだが。



「ぴぎゅっ」

「駄目ですよ、兄様。妹からはそう簡単に逃げられないのです」


スライムの地面との接地面、いわゆるゆるいカーブを描く足……あるいは両頬とも言える場所を両手で持たれ持ち上げられ、思わず変な声まで出てしまったが。


こうなったらもう、どうしようもないから。

どうにでもな~れ、とばかりにぐんにょりと弛緩していると、そのまま正面をむかされて。

すぐそこに、下手すれば触れてしまいそうなほど近くにマニカの、身内といえどもこれほどに近ければ致死量のダメージを受けるであろう綺麗さと可愛さが襲いかかってくる。



「ぇり、ぇりっ!!」


やめてくださいしんでしまいますと訴えんとするも声にはならず身動きも取れず絶体絶命のピンチ。

突き合わせてしまってごめんなさいとチェリに謝り倒していると。

そんな声とうねうね悶えているのが面白かったのか、正に止めを刺さんとするマニカの笑顔が広がって。




「やっぱりだめだよ。私は、『オレ』は兄様から離れられない。離れたくないんだ……」



そんな、マニカらしくなさそうなのに何故かぴたりと嵌ってしっくりくる声が聞こえてくるから。

ぷしゅぅっと空気が抜けるようにして。

桜色スライム……ではなく、マーズの意識はあっさりと飛んでいくのであった……。


SIDEOUT



      (第62話につづく)









次回は、11月30日更新予定です。

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