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第6話、冗談みたいなのは見た目だけにしろと言いたくなるくらいのお人よしなお節介




「まぁ、現実を認めたくないのはわかる。オレだって名前負けっつーか、申し訳ないのは自覚してるんだ。あんまりいじめないでくれよ」

「……?」



古代語でカムラルの星。

あるいは火の女神。

ドヤ顔で両親から名付けの理由を聞かされた時、グレかけたのは忘れたい過去なのだと。

勘弁してくれとばかりに両の手を挙げるも、ハナは何言ってんだこいつとばかりに首を傾げている。




ユーライジアの至宝、十人中十二人が振り向き恍惚と立ち尽くす。

などと揶揄される美少女が存在していたのは、過去の話で。

現在カムラルと名のつく人物は山のように厳つい強面な大男しかいないのだと。

何度も何度も一から説明しなくちゃならんのかと内心でぼやいていると。

さっきまでぶつぶつと何やら言っていたミィカが、我に返ってフォローしてくれた。



「ふむ。いいネタをいただいたのでこれからも継続していじらせていただきますが。それはともかくとして、姫様のおっしゃっているのはあなたのことではなくて、『夜を駆けるもの』の事ですね」

「あー、そういやいたっけ。……ていうか、今もあるんだなその噂」

「え? 知らなかったの?」


それこそ眉唾ものだろうと指摘するよりも早く。

リアータが大層驚いた様子でマーズを見上げてくる。

知っていて当然、なんてリアータの態度にマーズはがしがしと頭をかいてみせて。



「いや、存在自体は知ってるんだけどな……」


それこそ、『夜を駆けるもの』なる何でも屋貴族が存在していたのはカムラルの至宝が健在の頃の話で。

今、その名を名乗る者がいるとすれば、偽物……代行者か何かだろう。

それこそ、カムラル教会の誰かがこっそり代わりを受け持っている可能性もある。



身内の話題で盛り上がってるみたいで、なんだかいたたまれない気持ちになっていると。

またしても懲りずに突っ込んできそうな勢いでハナが手を上げた。


「『夜を駆けるもの』! その名のとおり夜だけ現れ、魔物退治から『あなたの心』盗みまで、なんでもござれの仮面黒マントのひと! だったらボクはこう依頼する! ボクの『はーれむめんばー』に加わってくださいと!」

「……」


素敵です姫様! と後ろで煽っているミィカを見るに。

彼女の差金と言うか、やっぱりハナ自身言っている言葉を理解していないような気がしなくもない。


目前で垣間見て流石に衝撃だったのだろう。

ぽかんと言葉失っているリアータを脇目に、マーズは一息ついて実際のところを問い質してみることにする。



「『夜を駆けるもの』に関しては、取り敢えず置いておく事にして……つまりハナは、親父さんみたいな究極の従霊道士になりたいってことか?」



従霊道士。

かつては会話の通じなかった存在……世に蔓延る魔物モンスター=獣型の魔精霊とも呼ばれる存在に力を示し、契約の元に使役する者達の総称だった。


しかし、ハナの父が従霊道士の全ての常識を変えてしまった。

獣、人、神に分類される魔精霊だけでなく、人族、獣人族、竜人族、果ては今や幻と言われる魔人族まで使役……ではなく。

その魅力と強さで慕われ、家族として扱い、離れていても瞬時に呼び出し(召喚)、駆けつけてくれる……いわば軍を作ったのだ。


偶然か必然か。

そのメンツが見目麗しい少女、女性ばかりであったため、『万魔のハレム王』などと呼ばれるようになったわけだが。


恐らく、そんな父を見てハナは勘違いしたのだ。

ハーレム王などとは周りのやっかみにすぎないし、本人がそう名乗ったわけでもない。

単純に父のように、沢山の仲間と友人が欲しいだけなのだろう。

それを、侍女のミィカが面白がって煽っているだけ。

……そんな事を考えまとめつつマーズが問うと、ハナもミィカもこの時ばかりは大きく頷いて見せて。




「おお。そのとおりだぞ。マーズ、パパのことしってるのか?」

「ふふ。どうせ見込みもないのにオレ様もハーレム王になる! なんて憧れてる口でしょう」

「いや、もちろん。いっぱしの男なら憧れるに決まってんだろ。なんてったって伝説の『ユーライジア・ステューデンツ』の一人なんだからよ」



だいたい三十年ほど前、ユーライジアの世界に訪れた滅亡の危機を救ったスクール出身の英雄の一人。

会った事があるからこそ、マーズは自信を持ってきっぱりはっきりそう言える。


対して、何か言葉を返そうとしてうまく出なくてなんとなく悔しそうにしているミィカ。

いろいろ誤魔化してはいるが、マーズも男なのでミィカの言い分を否定するつもりもない。

ただ、そんなミィカに反撃したかっただけなのである。



「そっかぁ。マーズもそう思ってるのかー。ボクもパパみたいになりたいんだ。そのためにはまず、カムラルの姫様をはーれむの一員に加えなくちゃいけないんだ」

「目標、結果と繋がってるようには思えんが、どうしてそう思ったんだ?」

「姫様……サントスール家には、昔から言い伝えがあるのです。『何か困った事があったら、お人好しなカムラルの姫が助けてくれる』と」

「随分勝手な言い伝えって言いたいとこだけど、うちにもあるわね。似たようなものが」

「あー……なるほど」



続けてミィカに、リアータにそんな事を言われて。

マーズは曖昧な呟きを漏らし誤魔化し笑いを浮かべる事しかできない。


事実、ハナやミィカの案内役をかって出たのも、そもそもは家から頼まれたからだし、ちょくちょくリアータにちょっかいをかけているのもマーズ自身がそうしたいのとは別に昔からの付き合いだからと両親に頼まれたせいでもある。


とは言え、いやいやでやってるわけじゃないし、下心がないわけでもない。

マーズはその部分に突っ込まれないうちにと、カムラルの姫……『夜を駆けるもの』の方へと話題をシフトする事にした。



「どっちにしろ、『夜を駆けるもの』に会ってみなくちゃ話にならんって事だよな。確か……日が暮れる頃からユーライジア下町の冒険者ギルドの前に出現するって話だったが、ハナ達って確か、スクール内で寝泊りするんだろ? 外出許可取ってるのか?」


それは、ハナやミィカ達だけでなくリアータにも言える事だが。

国土の六分の一を誇るスクールの敷地にはは、他国からやってきた生徒用の寮があるのだ。

マーズとしては入寮一日目だし、いきなり外出は無いんじゃないのかと暗に言ったつもりだったが。



「心配御無用。ユーライジアに実家がありますので、姫様には我が家でくつろいでいただく手はずとなっております」

「あー、言われてみればそうなのか」



言われてすぐに、マーズはミィカの苗字……エクゼリオ家の事を思い出す。

どうしてミィカがサントスールの姫付きの侍女をしているのかは分からないが。

エクゼリオ家と言えば、ユーライジア・スクールを牛耳っている四王家の一つだ。

加えて一世代前の理事長も担っていて、簡単に言えばつまりミィカはいいとこのお嬢様なのだ。

身分としては、姫であるハナやリアータと変わらないと言ってもいい。



その時思い浮かんだのは、ユーライジア・スクールの名物と言ってもいいエクゼリオの居城、『闇の王城』などと称されるもののことだった。

寮で管理されているわけでないのなら、門限的なものはもしかしたらないのかもしれない。



「んじゃどうする? 町案内ついでにギルドにでも行ってみるか?」

「おお、よろしく頼むぞ、マーズ!」

「ついでに買い物も済ませてしまいましょう。荷物持ちもいることですし」


今後の展開として、そうなるだろうと確信していたマーズは苦笑しながらもミィカの一言に頷いて。



「折角ついて来てもらったのに悪いなリアータ」

「問題ないわ。私も買いたいものがあったから」

「お? おう……」


学校案内はご破算になったから、ここで解散なんて事は到底口にできそうもない。

ついてくるのが当然のようなリアータの態度。

実際、門限までまた少し時間があるしまぁいいか、なんて思いつつ。

(その分、日が沈んでもないので目的が変わってしまいそうだったが)

皆で連れ立って町へ繰り出す事になって。



ミィカだけでなく、リアータにまで荷物持ちとして期待されている事に気づかされたのは。

それからすぐの事、だった……。 



   (第7話につづく)









第7話は明日、更新いたします。

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