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第43話、今更取って付けた名乗りを撤回するだなんて




SIDE:マーズ




「……そうだな。それこそヴルック家に頼んで、現実でも別々に行動できるように、魔導人形を創ってもらうなんてのはどうだ? 最近のやつは凄くて『モデル』そっくりに創ってもらえるらしいぜ」


この眠りから醒めたのなら。

『夜を駆けるもの』のお仕事ついでにオーダーしてくればいい。


魔導人形なんて言い方をしてはいるが、ひとつの命を維持できるほどの膨大な魔力が……魂があれば、もうそれは人族、魔精霊と何も変わりはしないと言われている。

現在では、新たな種族、【ヴルック】の魔精霊の一種として成り立っているほどで。


噂と言うか、隠すことでもないと言う事で本人から聞かされているが。

クルーシュトの母親は、まさにその新人類、【ヴルック】の魔精霊で。




「……うん。そうだね。それも悪くないかもね。でもそれだと、兄様を兄様と呼べなくなってしまうのかな。血の繋がりもなく、今までのようにすぐそばにいられなくなってしまうことを思うと、少しばかり躊躇う所はあるかも」

「それこそ、何言ってんだよ。たとえ分たれて独立したって、マニカは俺の妹、家族だ。それだけは何があっても変えられない、そうだろう?」

「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいな。だけど、うん。そうか。……よくよく考えてみればやっぱり一考の価値はあるかもしれないね」



マーズの臆面もない小っ恥ずかしいセリフに、思わず表情を崩しはにかむマニカ。

そしてそんなマーズの言葉は。

マニカとして生まれた彼女に新しき選択肢を与えるのに一役かっていたのは確かで。



「ん? 何がだ? 魔導人形のモデルの件か?」

「あぁ、うん。そうだね、それじゃあ夜、代わっていられる時に【ヴルック】家をあたってみることにするよ。兄様は、ハナさんたちのご機嫌を取っておいてもらえると助かるね」

「あー、ご機嫌取りも何も元よりハナたちとは仲良くしまくるつもりだけどな」

「あぁ、兄様タイプだものねぇ。ハナさんやミィカさんみたいな娘は特に」

「まぁ、否定はしないよ。って言うか、それを言っちまったらマニカだって十二分にその範疇だけどな」

「……莫迦。もう。節操なしなんだから」


だからこれからも仲良くしようぜ、などとのたまい真白にすぎる歯を見せるマーズに。

叶わないなぁとぼやきつつも。

マニカは楽しげに笑ってみせて。


『マニカ』と言う真名を然りと刻んで。

二人は、またの挨拶をして。


初めての、顔を突き合わせての語らいをお開きにするのであった……。


SIDEOUT





                ※      ※      ※





GirlsSIDE




ハナとミィカがユーライジアスクールへとやってきて。

マーズを皮切りに多くの人々と召喚契約を結ぶことができたわけだが。

従来の従霊道士とは異なり、アーヴァインとサントスールの血が混じった特別な召喚士であるハナは。

御自らが契約をした相手のところへとお邪魔するのもお手の物で。


契約したばかりのムロガ・フレンツの危機にさっそうと駆けつけただけでなく。

カムラルの姫、『夜を駆けるもの』でもあるナイト(マニカ)ともより一層仲良くなることができて。


さらにさらに、獣型の魔精霊2体とも新たに契約することとなったハナは。

いつも以上にほくほくのもふもふで、今日も今日とて朝の登校準備をミィカに任せつつ。

当の本人は、改めまして昨日の成果は? とばかりに住まう寮棟に備え付けてある中庭までやってくる。




「ゆくぞっ、【サモン・アーヴァイン】、『ルーミ』、『バイ』っ!!」


実のところ、人型のみならず獣型の魔精霊召喚もハナにとってみればこの時この瞬間が初めてであった。

人間族に……特に男子に避けられることの多かったハナではあるが。

獣型の魔精霊ならばその限りではなく。


いくらでも機会はあったのだが。

実家のサントスール王国に棲まう魔精霊と言えば、幽玄なるサントスールの結界内にしか留まれないゴーストやそれらに類する【エクゼリオ】の魔精霊ばかりであったため。

一緒に連れていけないのならば召喚の枠を埋めてもしょうがないと、契約をしていなかったのだ。


ちなみに、ハナの召喚ストック枠は、100ある。

それは、大好きな父にも引けを取らない数で。

ハナにとっての数少ない誇れるものでもあったわけだが。



……そんなことを考えている間にも、うまく呼び出し指定ができたのか。

ハナの目前に七色のエフェクト、カーテンのようなものが湧き上がったかと思うと、二体の獣型の魔精霊が飛び出してきた。




一体は、バイコーンもかくやといった漆黒の体躯と、銀色のたてがみを靡かせた、ポニー程の大きさ(ハナやミィカが騎乗するのにちょうどいいくらいの大きさ)の一角獣である。

そのつぶらな瞳は、ついちょっと前に見たギラギラしたものなど微塵もなく。

わぁと、思わずハナが歓声上げてもふもふしに近づくと、優しげにひひんと一声鳴き、その鼻筋をハナへと寄せてくる。


元々は【ヴルック】属性の魔精霊であるからなのか、そのたてがみは多少ちくちくしたが。

その背中はつるりとした光沢を放ち、なだらかにへこんでいて、とっても座りやすそうである。

事実、それを表すようにしてその背中には藍色の海色めいたもふもふな毛を持つ、こちらもたいへん可愛らしい一角うさぎがいた。


それは、カムラルのお姫様にして『夜を駆けるもの』と呼ばれる、夜にだけ活動していたはずの何でも屋な美少女ナイトが、ハナたちが呼ばれた先にいて、今やすっかりハナやミィカ専用の騎馬と化した『バイ(ハナ命名)』とともに、弱らせ捕まえてくれていたことで無事にげっと……この度契約することのできたアルミラージの『ルーミ』である。



「ふふんふーん。もーふもふ」


本来、従霊道士としてのレベルが低いと。

捕まえ弱らせ召喚契約しても……特に獣型の魔精霊や魔物は言うこと聞いてくれない場合が多いのだが。

何故かバイもルーミも抵抗したりする素振りは一切なく。

ハナのブラッシングと称したもふもふを。

ただただ無抵抗に受け入れてくれていて……。



   (第44話につづく)







次回は、9月6日更新予定です。

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