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第39話、幽玄なる姫に隠れていたけど、闇のメイドさんも負けずかわいい(妹談)




初めて会った日の夜は、最後の最後まで正体を明かさなかったのに。

二度目だからもういいだろうってなもんで、特に隠そうとすることもなく何事もなかったかのように名乗ってみせる三色の髪の世にも美しい少女。


そんな彼女に対し、やはり慣れがあったのか初めに反応したのはムロガであった。




「よろしく。ナイトさんって呼ばせてもらっても?」

「あぁ、さんはいらないよ。こちらも親しみを込めてムロガと呼ばせてもらおう」

「うん、どうぞどうぞ。っていうかマーズの妹って言うのは否定しないんだね。マーズはもう一人の……いや、きょうだいはいないって言うものだから、訳あって隠してたものだと思ってたけど」

「まぁ、うちの家庭の事情を知っているだろうムロガには隠しようもないってのはあるけれど。どうやら兄さまは私のことを今のところは知覚できないようでね。過去を紐解いていけば、ままあることではあるのだけど、許可なしに『代わる』のも面倒でね。これでも苦心してはいるんだ、いろいろと」



こぼれるのは苦笑。

初めてまともに動いたようにも見える表情に、そうは言いつつも面倒ごとばかりでもない、なんて感情まで伝わってくる。



フレンツ家は昔からカムラル家と関わりがあった……側付きとなることも多かったため、定期的に魂が入れ代わることも、その面倒を解決する方法も、知識として確かにムロガの中に存在してはいたが。

そんな、満更でもなさそうな顔をされてしまえば。

大変なんだなぁ、なんて相槌を打つくらいしかできなかった。


であるのならば、彼女の存在をマーズに伝えるべきじゃないか、とも思ったが。

彼女がそんな今を謳歌しているのならばいらないお世話かも、なんてムロガはひとり、完結させていて。




「なんだ。誰かと思えばマーズじゃなくてカムラルの姫さまじゃんか。かわいいのはぶじか? ぶじならさっそく契約するぞぉ」

「ふむ。夜ではないから仮面は必要ないわけですか。……まぁ、なんにせよ仮面が必要なのがよくわかります。姫という人種は、とかく生きにくいといったところですかね」



そんな中、呪縛から解き放たれたかのようにハナとミィカが駆け寄ってくる。

クロだけは、そこにいたのがげに恐ろしき主でなかったことに戸惑っているようで、あまり近づくことなく天井付近をふらふらと飛び回っていたが。

ナイトは来るもの拒まずの姿勢でそんな二人を受け入れんと手を広げていた。


そんなところまでマーズに似なくても、なんて思っているうちに、勢いのまま真っ先に飛びついて抱きつかん勢いであったハナは。

正しくもフェイントをかけるみたいに急いでその足を止め、ムロガが抱いていたうさぎを、その大きすぎる瞳をきらっきらさせて愛で始める。



「あっ」

「……おっと」


結果。

見事に不意をつかれたミィカは、たったひとりでナイトの元へ突っ込んでいく形になってしまって。



「ミィカみたいな可愛い娘の抱擁。これが幸せってやつかな。そんなに私に会いたかったのかい?」

「むぐぅっ、むぐぐぅ……」

「な、なんだこれ。何見せられてるの?」




その後。

アクマに憑かれしうさぎ……アルミラージは。

ハナに忠実なのりもの従属魔精霊と化した真っ黒なユニコーンの『バイ』とともに。

『ルーミ』と名付けられ、無事にハナと契約を交わすこととなって。

幼な可愛いハナを更に引き立て、ふところマスコットの地位をしっかと確立していくわけだが。



その時その瞬間の失態を思い出すと真っ赤になって暴れてミィカが大変なことになるので。

その時のことを後々聞きたがったマーズがミィカにぼこぼこめっためったにされても(だけど一撃たりとも避けようとしないのがマーズクオリティ)教えてもらえなくて。

やきもきしつつ、もっとだ、もっと打って来い! とばかりに変態っぷりを発揮するのは。

また別の話である。


SIDEOUT



     (第40話につづく)








次回は、8月21日更新予定です。

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