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第25話、見かけ通りだったのなら、きっと度し難い人たらし



「……っ」


別に、その辺りのことを口にするつもりはなかったのだが。

そんなムロガに対し、そっと首を振るミィカの姿が目に入る。


ハナの、サントスール由来の魔力……呪いめいた何かを取り除けば男子生徒たちの対応も変わるのではないか。

クラス委員として、考えるべきとこではあったのだが。

そんなミィカを見るに、どうやらそのままにしておかなければいけない理由があるらしい。




「ま、とりあえずみんな席について、そろそろ先生来るよ」


これはやはり、マーズが心配するような何かがあるのかもしれない。

ムロガはそう思いつつ声を上げ、未だその小さな手でごしごして、その大きすぎる黒色瞳を擦っているハナと、どこかムロガを気にしている風のミィカに近づいていく。



「……大丈夫だった? 彼らもね、悪乗りするところはあるかもしれないけど、悪い奴らじゃないんだよ。

ハナさんがかわいいから、ついちょっかいかけたくなっちゃうんだ。あまり気にしないで」


そんなんじゃねーよと。

バレバレなガラハたちの捨て台詞をスルーしつつ、ムロガは苦笑する。


「いいんちょ、それ、ほんと? ハナ、ちんちくりんでかおでっかくない?」

「もちろんさぁ。正にお姫様って感じでかわいいよ」


同い年のはずなのに、後ろで無表情なままユーライジア一の美姫ですよ、などとあいの手を入れているミィカも含めて。

やはり種族的なものなのか、身に纏う魔力のこともあって、成長が遅いんだろうと考えるムロガ。

特に潜在魔力は、その属性にもよるが老化や成長を妨げているものがあると確認されている。



「男の風上にもおけぬな。彼奴らは一度痛い目を見ねばわからぬようだ」

「『風紀』の長としても見過ごせませんね。目を光らせておく必要がありますか」


小さな子供のように頭でっかちなのは確かなのだろう。

そこも可愛いと思うのだが、子供っぽいと思われるのもいやだろうと、ムロガは口にはしなかったが……。



「そう言うわけでってわけでもないのですけれど。ハナさん貴女、魔法契約を結べば魔精霊様方などに限らず召喚できるのでしょう? よろしければわたくしとも契約いたしませんか? 『風紀』としてはその方が見守りやすいですし」

「うむ。それは余も考えていたところであるな。それがあればいつでも城を抜け出せる……じゃなかった。外で遊べるしの」


初日は、マーズとの予定があるということで遠慮する形となったが。

他国ながら姫君であることなど共通点も多く、興味もあったし仲良くしたかったのだろう。



「ほんとう? いいの? ハナのほうからお願いしたいくらいだよ」


小さな……小動物などが大好きなクルーシュトと。

実はハナやミィカと負けず劣らずの体格であるイリィア。


召喚魔法契約。

それは、いきなり呼び出されたりするのだろうかと。

色々と問題になったりしないのだろうかと。

ムロガは内心で思いつつも、みんなが仲良くなるのはいい事だと。

無意識のままに、自分に声がかかることはないだろう、なんて思いつつそのまま教壇……黒板前に上がり、授業の準備を始める。



召喚魔法契約は、結構簡単にできるようで。

自らのステータスを呼び出し魔力のパスを繋げ、何番目に登録するか諳んじればいいらしい。

2人目、3人目の『はーれむめんばー』が加わったぞ、だなんてはしゃいでいるハナを脇目にムロガが準備を続けていると。

ずっと何かを言いたそうにしていたミィカが近づいてきて、壇上のムロガを見上げてくる。



「先程の……姫様に対してのことばは、本意のものですか?」


男なら可愛さ云々より、小生意気なやつだと身構える気持ちが大きはずだと。

暗にそう言いたいのだろう。

そう聞かれるだろうことは、何とはなしに予想がついていたので、ムロガは嘘偽りない笑みを浮かべてそれに答える。



「もちろん、本当さ。学級委員長の責任感……と言いたいところだけど、ぼくもマーズと同じで小さくてかわいいものが好きなんだ。好きだからっていじめたくなるだなんて、ひねくれてはいないつもりだよ」


恐らく、ミィカはハナが異性に嫌われる……反発されるその原因を、明確に分かっている。

ムロガにその様子がないから、訝しがっていたのだろう。

ならば同じようにハナに悪感情を抱かないマーズはどうなのか。


恐らく、リアータやムロガはそう思っているように、マーズにレスト族としてのもう一人の人格が、『夜を駆けるもの』……仮面を被り正体を隠す少女が在るからなのだろうと予測しているが。

マーズという前例がある以上、ミィカはそれ以上深く詮索する気はないようであった。



「あ、そうそう。ミィカさんだって負けず劣らずかわいいよね。給仕服、凄く似合ってるし」

「そ、そんなっ……こと」


ムロガが、はぐらかすためとは言え、嘘を言っていないのが分かったのだろう。

常に反発というか、やり合っているマーズには引き出せない、ミィカのしおらしい表情。


自慢すればきっと悔しがるに違いない。

なんてあさっての方向でムロガがによによしていると。

クルーシュトやイリィアとの契約が済んだのか、縮こまるミィカにくっつき割り込むような形で今度はハナが見上げてくる。



   (第26話につづく)









次回は、7月10日更新予定です。

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