表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/199

第24話、メガネのいいんちょは、モブに見せかけて存外特別



「やべっ」

「お、イリィアさん、クルーシュトさん、ムロガさん、おはよ~」


そこでようやく、傍目から見れば気に食わないルーキーにちょっかいをかけ、ネチネチお小言を言うような中堅手前な冒険者のごとく。

ハナたちに突っかかっている絵面にモブAことガラハは気づいたらしい。


涙目のハナが負の魔力を噴出していたおかげで、既に来ていた他の生徒たちが、間を空けるように空間を作っていたのもまずかったようだ。

マイペースなモブCなミールはどこ吹く風で挨拶なんぞしていたが。


それこそ元祖ちんくしゃなイリィアや、気弱なおぼっちゃんっぽいメガネのムロガはともかくとして。

見た目こそ涼やかで穏やかな古代語で言う『ヤマトナデシコ』なクルーシュトが、『風紀』委員の長であり、怒ると手をつけられないであろうことをクラス全員が認識していたこともあり、一応水ウルガヴクラスのモブ三人組のブレーン的立ち位置であるアオンは、青い毛並みを震わせながら言い訳を口にする。



「おはよう……って。何って慣れない転校生とコミュニケーションを取ろうとだな」

「本当ですか? ハナさん、泣いているように見えますが」

「んな、違うのだっ。泣いてなんかないやいっ」

「ちげえって! ……あ、いや。ちょっとデリカシーは足りなかったかなとは思うけどよ、親交を深めようと思っただけでさ」



デリカシーのないのが個性なガラハも、状況のまずさをはっきりと実感したらしい。

大きな大きな瞳を、ごしごしして誤魔化すハナと同時に、自分でもそんなつもりじゃなかったと言わんばかりに弁解する。



「貴公、もしやわれのときのように身体的特徴をあげつらったのではあるまいな」

「……」

「いや、だから口が滑ったっていうか……すまん。すまねぇ、この通りだ」



ガラハのデリカシーのなさは、常習で筋金入りらしい。

無言で威圧を高めるイリィアに圧されるようにして、折れるように頭を下げるガラハ。


ハナはそれに対し、意地でも泣いてなんかないのだと言い張っていたが、手早くガラハが反省したことでイリィアの威圧も引っ込んだようだ。

どうやら、彼らの勝手な印象が先行して、お互い勘違いしていた部分もあったようで。

ただ、勘違いされる理由もあったのだろうかと、クラス委員長なメガネのムロガが考え込んでいると。

周りが落ち着いたのが分かったのか、マイペースだからこそなのか、ミールが鼻息ひとつ吐いて手を上げた。



「ん、でもなにかおかしいんだよ。……僕たち仲良くしたいだけだったのにぃ、何だかハナちゃん見ているとぎらぎらしてくるんだよお」

「ギラギラって。さてはお主、こんなにも幼きハナ殿を狙っておるのか、下劣なっ」

「いやいや~。違うって~。僕はどっちかって言うと月水の女王さんみたいな子がタイプだしぃ」


ミールが何気なく呟いたそれは。

表現はともかくとして、このクラスの男子生徒たちの共通認識であった。

嫌い……嫌というよりは、むかつくと言うか、反骨心が湧いてくるというか、いじり倒していじめたい感情が沸いてきてしまうのだ。


ムロガとしては、クラス委員としてクラスをまとめなくてはいけない部分がそうさせるのか、あまりその感覚が分からなかった。

やはり、ハナから溢れる【エクゼリオ】の魔力がそうさせるのだろうか。

しかし、それだとミィカも中々の闇の魔力を持っているし、クラスには闇の魔力を持つ者がほかにもいるので、ハナだけがそうなるのは説明がつかない。



(でも確か、アーヴァイン……いや、サントスールの人って)


代々『呪』なるものを背負っていて。

周りのものに迷惑をかけないために国内にこもり、国の内外に分厚い霧を貼って、外に出ないという話は聞いたことがあった。


故に、サントスールの姫であるハナが転入生としてやってくると聞いて。

驚いた記憶がムロガにはあったのだが……。



     (第25話につづく)









次回は、7月7日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ