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第23話、文字通りオニの居ぬ間のとなりのクラス



GirlsSIDE



ハナとミィカがクラスにやってくると。

二人の挨拶に対し、女生徒は朗らかに挨拶を返してくれ、ハナの可愛さにやられてハグしたり、スキンシップしてくれたりする子が多いのだが。

男子生徒にとってみればそれ自体が気に食わないらしい。

あからさまに舌打ちするものがいたり、ハナの挨拶を意図的に無視しているものも多かった。


それを女生徒が良く思わなくて、余計に悪循環になるわけなのだが。

その日は発言力の強い……所謂クラスカースト上位の女生徒達がまだ来ていなかった事もあり、三人のガラが悪そうな(どこかの見かけだけのやつとは違い)男子生徒が、ハナを取り囲むようにして声をかけてきたではないか。




「おらぁ、懲りずに来やがったか。このちんちくりんがっ」

「クラス間違えてんじゃねえのか~?」

「ちやほやされやがって、この。うらやましぃだろがいっ」


それは、正しくマーズが危惧していたこと……だったのだが。

実の所それらは同性の悪友に対する挨拶みたいなもので、それほど悪意のあるものではなかった。


やっかみや嫉妬はあったのだが。

所謂それはマーズが妄想していたように、お調子者の三枚目な少年が、全校集会の場で、あんなある意味勇気のありあまっている男らしい宣言をした事による期待と言うか賞賛というか、態度こそ分かりづらいものの、つまるところ結局男子生徒達もハナに興味があった、という事なのだろう。


それこそが、力ある生徒達の集まるスクールたる所以とも言えよう。

これが、このユーライジア・スクールでなかったのなら、ハナはもっと強い悪意に晒されていた事だろう。

とはいえ、これが初めての学校生活である。

二人にとってみれば怖い悪意を向けられたに等しいわけで。



「ちんちくりんっていうなよぉ! これでも成長してるんだからなっ。クラスだって間違ってなんかないやい。16才の子はハイクラスに通うんだぞっ」

「ちやほや……はされてますかね。同性の特権をあげつらうのは、さもしいとは思いますが」



売り言葉というか、話のとっかかりのようなものなのだが。

律儀に、それぞれ返事するハナとミィカ。

怖がる素振りを見せないのは、歩み寄ろうとする努力なのかもしれない。


しかしそれが買い言葉となったのか。

相手にしてもらっていると思ったのか、三人組の男子生徒からすれば、小生意気だが上等じゃねぇか、といった印象になるわけで。



「成長してる、だぁ~? 確かにちんちくりんのくせに顔でかくね?」

「髪のせいじゃねーの? そのボリュームやばすぎだろ」

「お姫様だなぁ。リアル箱入りってやつか」


初めにつっかかってきた、デリカシーのないところが玉に瑕なのはモブ男子Aことガラハ・ダラク。

ダークエルフで肌が焼けているせいか、不良のレッテルを貼られ、損ばかりしている。


そんなガラハに追随するのが、人狼族ワーウルフのアオン・モーンだ。

二の腕も脛も青いもじゃもじゃで、実際はそうでもないのに不潔キャラだと思われがちな切ないモブB男だ。


そして、二人とは少しずれて、おっとりしているのがモブC男ことオーク人族のミール・ツィーキである。

実はスクールに通える程の理知的で紳士なオークなのだが、オークだからという偏見で三人一緒くたにされ、モテない三人衆と認知されている。


隣のクラスのアクマ的でムキムキな、ある意味有名な隠れモテ三人組とその度に比較され、貧乏くじを引くのが常であった。



転入生であるハナたちの案内を、そんな例の隣のクラスなマーズに取られてしまったのも。

こうやってつっかかっている(彼らとしては、彼らなりのコミュニケーションだったのだが)原因なのかもしれない。


本当は、もう少し普通に話しかけたかったのだが、彼らのキャラというなけなしのプライドと。

ハナから放たれるモテない……負のオーラ(魔力)がそれをさせなかった。



「むぐぐぅ。ひとが気にしてることをぉ!」

「髪は父君、母君とも多いですからねぇ。髪で上手く隠せば、小顔になると聞きましたが、うまくいきませんか」

「やっぱり、単純に幼いんじゃないのぉ。ちいさい子は、頭大きいって言うしね~」


確かに、同じくらいの背丈で、ハナとミィカでは失礼ながら倍くらい顔の大きさが違うように見える。

目鼻立ちがしっかりしていて、首周りも太く、たくましく成長する証とも言えるが。

年頃の少女に対しての言葉としては、ちょっとデリカシーに欠けるだろう。


ミールとミィカが、どさくさに紛れて同調しているというか、普通に会話しているのを見て。

ハナはよってたかって苛められている、なんて思ったのかもしれない。


その大きな瞳に涙が浮かび、感情が高まって。

それに乗じて魔力……負のオーラも広まっていって。


思わずモブBことアオンがやべえ、言いすぎたかと元々青い毛むくじゃらの肌を僅かばかり青くさせた時であった。

ウルガヴ』クラスのカースト上位と目される三人組が教室に入ってきたのは。




「……むっ。貴公ら、何をしているっ」


初めに目ざとく状況を把握し、古めかしいというか格式張った割に幼い声を上げたのは。

全身緑の奇術師めいた男装少女、イリィア・ガイアットで……。



   (第24話につづく)









次回は、7月4日更新予定です。

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