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第22話、ぼこぼこちんまい主従コンビだけれど、言われなくともずっと友だち



GirlsSIDE



ハナとミィカがリアータの案内により『夜を駆けるもの』らしき絶世の美少女との邂逅を果たした、その次の日。


栄えあるハナのハーレムリスト=召喚契約者ナンバーワンのリアータに続いてナンバーツー候補ができた事。

しかも、故郷を出る前からハーレムメンバーに加える気でいた伝説級の少女をゲットする目処がたった事に興奮を隠せず。

ミィカがいなければ転入生活二日目にして大遅刻をしてしまうという失態を犯してしまっていた事だろう。



「でも、みぃか。もうちょっと穏便に起こして欲しいぞ~」

「温いやり方ではもう効き目がないからですよ。姫さまもご成長なさっている証でしょう」

「ほんとか? ボク成長してる?」

「ええ。めきめきと」


身長どころかあらゆる身体的特徴に変化のないハナにとってみれば、簡単に話題を逸らされる低度には嬉しい言葉だったのだろう。

実際、エクゼリオの魔術を使って夢などを操り刺激して起こすやり方は、ある意味呪いに耐性のあるハナでなければトラウマものなのだが。

ミィカ自身そんなハナに対してしかそんないたずらをした事がなかったので、他の人だったらどうかなど知るはずもないのであった。


まぁ、マーズに対してはそのうち手を出してみるか、などと考え始めているので。

今から彼にはご愁傷さまを言っておくべきなのだろう。

最も、そんないたずらのできるシチュエーションがどんなものなのか。

気づいていないうちはお互いに平穏でいられるのだろうが。



めきめき、にょきにょき~と調子はずれに歌を歌いつつ二人に宛てがわれた一年水ウルガヴ組へ向かうハナを、後ろから見守りながらミィカはそんな益体もない事を考えていた。


いたずら……と言うか人の色々なリアクション、人間観察の好きな彼女にしてみれば。

ハナのお付きとして実家、そして長年行きたいと思っていたスクールに通える事は僥倖……大変喜ばしい事ではあった。

勿論それは、言葉にも表情にも出さないが。




そもそも学び舎の中に実家があるのに、何故はるばる西方の大陸の果てであるサントスールにて、国家同士ならば立場同等と言ってもいいハナのメイドをやっているのか。


単純に、ハナの身の回りの世話、護衛、かつ同性で年の近い者を募集していて。

その面接に受かったと言われればそれまでなのだが。

それより何よりミィカの一族エクゼリオ……特に母方のものは、かのヴァーレスト一族と似て非なる理由にて、実家どころかしかるべき結界の中でなければ生きられないという特性があったからに尽きる。


それは、無尽蔵に闇の魔力を生み出し続け、それによって形創られる暴龍となり制御が効かなくなる、と言うもので。

あるいは闇の魔力を放出し続け、何かで代換えしなくては生命の維持も免れない。



先ほどの目覚ましの件ではないが、幸運にも生まれた時からそのような生命の危機に陥った事はないので、ミィカとしてはピンとこないのだが。

そんな理由で本来ならば学校にも通えずその敷地内の実家……通称魔王城でしか過ごせないはずのところを、ハナと一緒にいることですべてが解決されるという事で外に出る事を許されたのだ。



ハナにはその自覚は全くないし、幼馴染兼友達くらいにしか思ってないのだろう。

私はあなたの何倍もあなたに感謝しているし、あなたはかけがえのない存在です。

結構本気で日々口にしてはいるのだが、お互いテレがあるのか伝わっているようないないような感じで。


ハナと召喚契約を結んでいないのも。

契約なんてしなくてもいつでも側にいる、という事の証でもあって。

ミィカはそれを内心で誇りに思っていたりするわけなのだが。


当の主……ハナは、メイドになるまでずっと引きこもりだったミィカよりも一回り小さい佇まいながら、風を肩で切りそうな勢いで自らのクラスへと向かっている。


ハーレム王になる(ほとんどミィカの興味本位な仕込みではあるが)なんて宣言しただけあって。

すれ違う生徒たちに果敢にも挨拶を交わしてはいるが、成果のほどは半々と言えよう。



とにもかくにも、果敢で挨拶もあって、同性……女生徒たちの反応は概ね良好である。

それは同い年でありながらミィカとはまた違ったその身に秘められし力により、とんと成長しない=最小学級リトクラスの生徒と言われてもおかしくない身なりで、健気に頑張っている部分が大きいのだろう。


しかし、これが男子生徒ともなると話は変わってくる。

簡単に言うと、ハナは常に異性にモテないオーラを発しているのだ。


それは、悩ましい事にサントスールの一族に代々受け継げられる呪いのようなもので。

ひどい代になると、男女関係なく嫌悪され、かつ周りに不幸をばらまいたとされていた。


嫌悪され、避けられるのはハナから発せられる負のオーラが不幸を招くと無意識に悟られるからだそうだが、それがハナに限って異性のみに効力を発揮される仕様になっている。


それは、ハナ自身がそもそも男に恐怖を抱いているからに他ならない。

ハナがもっと幼い頃……今の見た目くらいの頃に起こった事が原因らしいが。

ハナの両親はあまりそのことに触れたがらないし、ハナ自身覚えていないようなので、深く掘り下げるうようなことはなかったが。

ミィカは闇の魔力に愛されし一族であるからして、ハナの負のオーラが何なのか感覚で分かっていた。


それは、かつての魔人族に連なる闇の住人達が好む、純度の高いエクゼリオの魔力素だ。

闇に棲まう者でなければ、確かに触れれば体に悪影響もあるだろう。

逆に、ミィカのような存在には、生命の源とも言える力なわけで。


友達を作りたい=男性恐怖症を治したいハナを守り、後押しする事は、ミィカにとって存在理由にも等しいわけなのだ。

ただ、従来の性格がたたって結構調子に乗ってしまうのが玉に瑕なだけで。



「みんな、おはよーなのだっ」

「おはようございます」


そんな風に人の来歴をおさらいしているうちに、二人に宛てがわれしクラスについたらしい。

今日は女生徒だけでなく、男子生徒ともしっかり会話ができるだろうか。


そう言えば、代々ハナ達一族を助けてくれる魔女の一族の名を持ったあの無駄に大きいマーズに対してのハナは、あまり恐怖心を抱いていないようだったなと、今更ながらに気づかされて。


それはそれで、どこか危ないような気がする。

とにもかくにも気をつけなければ。

マーズにしてみれば、言いがかりも甚だしくて突っ込まずにはいられない、そんな考えをまとめつつ。


ミィカは、余裕と常に上からの、メイドらしからぬ笑みを浮かべて、ハナの後に続くのだった……。



     (第23話につづく)









次回は、7月1日更新予定です。

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