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第21話、【火(カムラル)】の身の回り担当(武器防具的な意味で)、【金(ヴルック)】の一族



一部でウワサの凸凹コンビ。

食堂へと向かう道すがら、人の多くいる所へ行く前にと、マーズはいきなり本題を口にした。



「今回こうやって飯に誘ったのはさ、ウルガヴ組に入った転入生二人について、ムロガの思う所を聞きたかったからなんだよな」

「思う所? ……ああ、女子にも男子にも人気ものだよね。いろんな意味で」



始業式の壇上でいきなりハーレムつくるぞ宣言して見せたちんちくりん。

そんなハナが男だったなら冗談ではなく鼻について生意気だと思われて。

そんな行動ができることにちょっぴり嫉妬と羨望がある。

悪意、というほどではないが、その時感じたものと同じ空気を同じクラスで一日吸って過ごしたムロガは、なんとも曖昧な表現を口にした。



「いちゃもんをつけるというか、クラスの中ではサントスールさんに接触しようとしてる男子は多かったと思うよ。だけどねぇ、そんなサントスールさんをなんだかんだ言って守ってるっていうか、エクゼリオさんが間に入って煽っててさ。そこに他の女子がサントスールさん可愛さで周りを固めてるから、結局男子対女子の構図になっちゃってるんだよね」



クラスをまとめなくてはいけないクラス委員長である事のせいで、それらに対する傍観者的立ち位置にいたいんだけど、とはムロガの弁。

始業式の時のような勇気ある発言をするかどうかはともかくとして、ハナの立場に自分がいたならもうとっくに事はすんでいるんだろうな、などと自分勝手に思うマーズ。


話を聞いていると、クルーシュトの発言も含めて、外から見ているよりはあまり大事ではないように見えて。

かえって手を出しづらい、悩ましい状況ではあった。



(まぁ、そりゃそうだよなぁ)


発言や行動も含めて、結果的にハナが悪意を誘引していたとしても、それに簡単に従ってしまうようなみみっちい男どもなど、そもそもこの由緒あるスクールに通えるはずもなく。

危ないのはスクール内よりむしろ外で、このまま下手に刺激するより、念のためこっそり見張ってる位のスタンスで居るべきかと思い至ったマーズであるが。



「ムロガとしては? いいんちょとして一日過ごしてみてどう思った?」


例えばそう、ヤローどもを嫌悪させるフェロモン何かが出ているのだとしたら。

突然の転入だって、それを治すための荒療治の可能性も捨てきれず、そんなことを聞いてみる。



「気にするねぇ。あれでしょ。ちっちゃかわいい子が好きなマーズとしては気になっちゃう感じ?」

「ああ、まぁな」


そんなんじゃねえ、などとお得意のツッコミを予想していたのだろうが、マジなのか否定する事など何一つないからなのか、珍しくツッコミポイントにも気づかずに頷くばかりのマーズ。

そんなマーズだからこそ救われたのだと、おくびにも出さずにムロガは苦笑してみせて。



「まぁ、一応クラスのまとめ役だし、揉め事を起こして欲しくないのは正直なところだけどね。僕自身、彼女たちに何か思うところはないよ。かわいいなとは思うけど。……でも、こうして傍観者の立場だから気づけたのかもしれないけど、サントスールさんもしかしたら男子が怖いんじゃないかなぁ。極力その辺りは出さないように努力しているみたいだけど、そう考えると辻褄が合うんだよね、いろいろと」



触れ合うくらい近づいたわけでもないけど、はっきりはしないけど。

そう言い置きしつつも、ムロガにはどこか確信があるようで。

同じような事を、クルーシュトからも聞いていたので、おそらくそれは間違っていないのだろう。



「言われてみれば初めて会った時、ちょっと怖がってたかもな」

「それは、マーズの見た目のせいもあると思うけど……なんなら試してみれば? がばぁって、いきなりだっこしてみたりさ」

「おいやめろ。それはさすがにアウトだろ」

「手加減できるんでしょ? やってみれば面白いんじゃない」

「面白いとか言うなっ。第一そんなことしたらハナが可哀想だろ」

「……うーん。大丈夫だと思うんだけどな」


何故なら、マーズはマーズで特別だから。

口には出さないが、それこそムロガには確信があった。

マーズは見た目だけなら巌のような風体だけれど、不思議と人の懐に入る事のできる稀有な人物であるとムロガは知っている。

でなければ『兄』の依頼したあの写真たちのような、自然な笑顔を導き出す事などできないはずで。



「そう言えばアニキからまた『写真』の依頼受けたんでしょ。サントスールさんたちの。そのどさくさでスキンシップしちゃえばいいんじゃないの?」

「いやいや、そんな依頼知らんて。そもそもムロガに兄ちゃんいたの初めて聞かされたぞ」

「またまたぁ」



マーズが特別である事。

それは本人に確かめたわけでもないのに、リアータやクルーシュトと同じくマーズ=『夜を駆けるもの(ナイト)』だと思っているからである。

ただ、希望であるリアータとは違い、ムロガのそれはフレンツの一族における根拠のあるものだったのだ。



フレンツ家は、マジックアイテムの開発において代々、マーズの父方の一族……ヴァーレスト家に関わりを持っており、魂が入れ替わるというヴァーレスト一族独特の能力に触れ合う機会も多かったのだ。


「リアータにも言ったけどな、それ別人だって。カムラル教会の誰かが当番制でやってるだけなんだよ。

今度みんなで会うっていうから、ムロガも来るか?」


知らないだけなのか、はたまたとぼけているだけなのかは定かではないが、その瞬間確かに言質はとって。



「お邪魔じゃなけれ喜んで」


どう転んでもきっともれなくアニキの記事のネタになるそうな気がしたから。

してやったりとムロガは笑みを浮かべるのだった……。



    (第22話につづく)









次回は、6月28日更新予定です。

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