表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/199

第20話、あまりにもテンプレにすぎるから、かえって違和感なく周りは盛り上がる




そのようないつもの朝の一幕があって。

気づけば午前中の授業が終わっていた。


午後からはぶっ通しで課外授業、実践授業という名の『体育』が入っている。

午前中は座学ばかりであったため、眠気に襲われそうなところだが、反社会的な見た目に反して真面目に勉強する派であるマーズは。

書き込まれた黒板の文字を書き取るのに夢中になっているうちに、一緒に昼を食べる相手……悪友たちですらいなくなっているのに気づかされた。



(リアータやウィーカもいない、か。まぁ別に約束してたわけでもなし、仕方ないわな)



空の向こう側、天界のあり方について、そこはかとなく男のロマンの詰まっていそうな地学の先生の話に、ついのめり込んで夢中になってしまったのが原因だった。

名前負けの一年前転入生は、ぼっちなんかじゃない。

……などと、たった今置かれた寂しい状況を必死に誤魔化し一人ツッコミしつつ。

マーズはひとり教室を出る。



そして購買……または食堂に向かうかと足を動かしかけて、踵を返し別の教室棟へと向かっていた。

向かうのは、同階ながら中庭を挟んで反対側にある、ハイクラス一年水ウルガヴ組である。


クルーシュト、イリィア、ハナ&ミィカ、そしてもうひとりの数少ない悪友じゃない友人の在籍するクラスだ。


思い立ったが吉日。

ハナたちの様子を、クラスの雰囲気を体感しようと思った次第である。


とは言ってもマーズとしてはそれぞれ出払っているだろうと見込んでいた。

むしろ、いないと思ったからこそ、足を運んだわけで。




「ちわーす。失礼しまーす。……っと、思ったらいるじゃん。水組のいいんちょ、飯食った?」


前言撤回。

運良く、想定通りに悪友じゃない友人が居残っていたようだ。


「なんだ、マーズか。いいんちょ呼びはやめてくれっていってるでしょ。ムロガという名前があるんだから」


あえてのお気軽な口調で。

数人残って持参のお弁当などを広げていたウルガヴクラスの生徒達に挨拶なんぞしつつ、昼食を食べもせずに先生の机などを拭いていた、栗色髪をシニヨンにまとめた、琥珀色の瞳をぐるぐるメガネで隠したムロガ、と名乗った友人に声をかける。


「おお、ムロガ・W・フレンツくん。たまには一緒に飯でもどうかなってさ」

「たまにはって、そんな事初めてだろう。まぁ、僕もまだだったし、断る理由もないけどさ」


古代文字がミドルネームに入るのはやんごとなき出自の証拠。

本人は否定してはいるが、昔昔は四王家に連なる一族の出らしい。

そう考えると、マーズとも遠い親戚になるわけだが。

そんなマーズとの付き合いは、同じクラブ活動員である事から始まっている。



『プレ・ステューデンツ・クラブ』。

略してプレステ部。

月に三回ほどしか活動しない部ではあるが、マーズにとって親の世代……世界を守り助け救う任と資格を持つ【ステューデンツ】達が行っている活動を、予備軍あるいは卵として体験できる部活である。


がりもやしメガネと不良風全身キンニクのミスマッチな二人だが。

意外と真面目である所がキセキ的に反発せず、友達としてうまくいっていると、マーズ自身勝手に思っていたりする。


教卓へ至る台の上で、名簿などの片付けをしていたムロガは(台に乗った状況でもムロガの方がちょっと背が低い)、一つ頷くような仕草を見せた後、それじゃあ行こうか、とばかりにマーズの隣へと降り立つ。


同じクラスの悪友たちは、それぞれ横に縦にデカく長い事もあって忘れがちだが。

自身の腰ほどにしかないムロガを見ていると、どれだけ自分が一般から逸脱しているか突きつけられている気がするマーズである。


最も、ムロガの……フレンツの一族にはガイアットの魔精霊の一種族であるドワーフの血も入っているため、ムロガ自身元々平均より小さい理由もあるにはあるのだが、マーズにしてみればドワーフと言えば全身毛むくじゃらのヒゲの人たちのイメージがあるので、どこもかしこもツルツルなムロガを見ていると、あまり関係ないんだろうなぁとまとめるマーズである。

まぁ、その結構強引にまとめられた髪は、ほどくとボンっとなってしまうはムロガの弁ではあるが。


「な、なんだい? ジロジロ見て」

「いや、黒板の粉ついてるぞ」


マーズの中で話題に上がった栗色シニヨンの髪を、誤魔化すようにしてバシバシやると、言葉通りチョークの粉が舞う。


「いった! ぞんざいだなぁ、もう」

「大げさだろ。オレさま以上に手加減のデキる男はいないぜ」

「正直説得力が皆無だけどね」

「ぬわんだとぅ~」


そして、そんな身長差カップルの如きやり取りをしつつ、二人は食堂へと向かう。

文芸部の所謂腐敗臭漂う少女達においてナンバーワンカップリングだともてはやされている事など知る由もなく。

……ちなみに、鬼と悪魔、筋肉×筋肉の人気もそれなりだったりする。

妄想のはけ口となっているマーズ本人がその事を知らないだけ、まだマナーを守っていると言うべきなんかもしれないが……。



        (第21話につづく)









次回は、6月25日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ