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第186話、EndingNo.8、『照らしていく、長いこの道の途中、迷わないように』⑦




SIDE:ハナ



「……なんだ。ハナ姫さまは父上に用事があったわけではなかったのか。それで、『イシュテイル』の輝石について聞きたいのだったか?」

(お、イリィアのやつ普段の感じに戻ってるな。何だかんだで父ちゃんの前ではしゃちほこばっちまうようだなぁ)



アイの怪人と呼ばれる魔王? の四天王がひとり、【ガイアット】の死神王を杖ふらずして撃退したハナたち一行。


イリィアの言葉通り、何故だかガイアット王自身が目的ではなかったというか、一目して召喚契約をする気もなくなってしまったハナは。

おざなりにアイの怪人の居場所を聞きつけた後。

やっぱり何だか面白そうだからと、ついてくることとなったイリィアも加えて。



大好きな娘にツンデレ半分で苛められた、死に神ならぬ死に体なガイアット王のセリフ……

『オレ様を差し置いて怪人と名乗れる男はひとりだけ。きゃつの居場所知りたくば、同じ配下が四天王が一人、闇勇者ガイゼルのもとへ行くが良い』、などといった、ノリに乗っているのか丸投げしたのか判断に困る言葉とともに、ユーライジア・スクール領地の外れにある、ガイゼルのお屋敷へと向かうことになったわけだが。




「あ、うん。そうなのだ。イシュテイルさんの輝石がえと、すっごいモンスター、魔精霊? のさいごのお家……この場合魔精球でいいのか? としても扱えるって聞いて、もし余っているのがあったらなぁ、なんて思ってたんだけども」

「あぁ、そういうことだったのか。それは確かに少々無理があるかなぁ。私としても友達が家族になるのはちょっと。複雑というかなんというか」

「姫さま、迷わずこちらへ伺ったかと思ったらそんな目論見をなさっていたのですねぇ」

「輝石ってイリィアさんの額のところにあるものですよね?」

「うん、まぁ。父上との家族の証っていうかね。定期的に魔力の補充が必要で、その魔力の波長が合う人が私の場合がほとんどいなくて、ただだ面倒なばかりなのだけど」

(そういや、最近魔力補充してなかったな。投げ槍師匠なら可能なのだろうか。それは確かに、イリィアが借りてきたウィーカみたいになるのも仕方がないのかもなぁ)



マッサージというか、それなりに長い時間触れていなければならないので、こう見えて父上大好きなイリィアにとってみれば。

ハナに嫉妬めいた感情を浮かべつつもほっとしたり、顔を合わせれば正反対なリアクションを取ってしまうのも仕方のないことなのだろう。




「魔力の源、それこそうちにある『月の器』みたいなものなのかしら?」

「根源クラスでさえ終の棲家となりうるマジックアイテム。ラルシータの王が愛する妃のために手づから創り出したものだったよね。そんな上等で純粋なものじゃないよ。……身内の恥を晒すようであれだけれど、父上は女性がとにかく大好きでね。ユーライジアに限らず様々な世界を回っては、家族になってくれる人を探しているんだ。『イシュテイル』というのは家族の証。父上の勧誘にはい、と答えてくれたひとを空いている『宮』に住まわせている。この輝石は、さしずめこのガイアットに暮らすためのものってわけなんだ」

「なるほどです。ならばうちの姫さまをこちらへ遣わすわけにはいきませんねぇ」

「ハナ姫さまと姉妹になることに惹かれないこともないけれどね。もれなく父上がついてくるから」

(……うーん。イリィアの中ではそういうことになってるんだな。やっぱり過保護っていうかなんていうか)


イリィアだけが、血の繋がった娘であることには本人も気づいてはいるのだろうが。

そんな彼女も含めて、ガイアット王が次々に家族を連れてきている……ある意味仕事の一環であることは話していないのだろう。


それはそれとして、最近家族に加わった【エクゼリオ】の彼女が。

イリィアから見たらガイアット王のナンパに『はい』と頷きそうにない点を鑑みても、ひょっとしたらそうは言いつつも薄々感づいているのかもしれないが。





「うむ。そんなわけで『輝石』はボクらにちと荷が重いことがわかったので、次いってみよー。次に向かうはくーさんことクルーシュトさんちのお家だな」

(……? 荷が重い、ねぇ。何だかそこまでしてオヤジに会いたいってわけでもないのかな)


やはり、ハナには悪の総大将(いつの間にやらグレードアップ)なアイの怪人を追い求めることは別の目的があるらしい。

いずれにせよ、特等席で生暖かく見守るのみだと

新たにそんなハナの冒険にイリィアを加えて。

お話合いもそこそこに【虹泉トラベル・ゲート】にてユーライジア・スクール領地の端にあるガイゼルの屋敷へ向かうこととなって……。





                 

                ※      ※      ※





「みゃっ、みゃみゃん?」

「おや。みなさんお揃いで、今日はどうなさいました? 遊ぶお約束していましたっけ」


そう言いつつも、暇を持て余していたからなのか。

ガイゼル家そばに設えてあった【虹泉トラベル・ゲート】小屋を出てすぐに、最近はあんまり喋らないウィーカと、当のクルーシュトがお出迎えしてくれて。



「うぃーさんくーさん揃ってお出迎えごくろー! こんにちは! 今日はくーさんのお母さんを『げっと』……じゃなかった、お話がしたくてやってきたのだ!」

「えっ? クーの父上に契約をかけて戦いを求めにきたんじゃぁ」

「恐らく、イリィアさんのお父上を見て、四天王のみなさんは管轄外のおじさんばかりだと判断されたのでしょう」

「好みじゃないだけで、契約しようと思えばできるってことよね。実力の差を感じちゃうなぁ」

「クルーシュトさんのお母さん、お料理がとてもお上手なんですよね。教えてもらいたいです」

(ふむ。投げ槍師匠のインパクトにハナもお腹いっぱいか。ってか妹よ! それで作った料理はオレがいただけるんですよね、ねっ!)


ハナの目論見というか、子供の気まぐれにガイアット王はすぐにアドリブでノってはくれたが。

剣と奥さんと娘ばかりで生真面目で頑固者なガイゼル家当主が、魔王だ四天王だなんてノリに乗ってくれるかというと……やっぱり今なら乗ってくれるだろうといった気はするが。

それ以前にハナとしては、クルーシュトの母、タクトに会ってお話したいらしい。



「みゃみゃん?」

「お母様に? 今ちょうどお父様も帰ってきていて、お二人で茶室にいらっしゃると思いますけれど。『げっと』……ですか?」

「いやいやっ、それは言葉のあやなのだ。魔精霊でありながら魔導人形でもあるってきいたので、そこのところをくわしく聞きたいなぁ、と」

「……ふむ。そういうことでしたらまず、この私とお手合せ願いたいのですが、よろしいでしょうか?」

「おぉ、なるほどわかった、『げっと』するためのまずは『ばとる』だな! もちろんおっけーなのだぁっ!」

(ええぇっ!? 頷いちゃうの!? ってかクーはほんとバトルジャンキーだなぁ! 脈略がなさすぎるぅ!!)



結局のところ、ハナには何か目論見がありそうでそんな冒険めいた面白いことをしたいだけなのか。

ますます訳がわからなくなってくる、マーズがそこにいて……。



  (第187話につづく)








次回は、10月14日更新予定です。

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