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第184話、EndingNo.8、『照らしていく、長いこの道の途中、迷わないように』⑤




 

SIDE:ハナ


 

こうして、ハナは。

万魔の王が抱える不思議……意外とこのユーライジアの世界にはたくさんいる、『もう一人の自分』だけの『ばしょ』を探し見つけ出すために。

ミィカたち頼もしきともだちとともに、それでも父、あるいはサントスール家の教えである、『何か困ったことがあったら、カムラルの魔女を頼るように』といった言葉を念頭に置いて。

 

まずはハナたちが手始めにと向かったのは。

世界の至宝眠る場所に次いで、生と死の距離が近いとも言われる、【ガイアット】王国であった。





(えぇっ!? とらぶるなイベント全カット!? ……じゃなかった、何故にガイアット国? オヤジの居所掴むんなら、まずは母さんのところじゃない?)

 

ハナにミィカ、加えてマニカに、魔王城までついてきていて、そのままついてくる気満々であったリアータを加えた面々は。

何だか張り切っているというか、鼻息の荒いハナに押されるがまま【虹泉トラベル・ゲート】を使って、宣言通り迷うことなくガイアット王国へと辿り着く。


前半はともかくとして、相変わらず心の臓型の杖に棲みついてしまっているマーズのツッコミ通り、世界の公然の秘密とされる、【ヴァーレスト】の廃教会地下深くに眠るマーズやマニカの母の存在については。

少なくともマニカと、あるいは実は結構その場所と深い関わりのあるミィカあたりは知っていそうなものであったが。

ミィカもマニカも、興味本位でついてくることとなったリアータも。

いつも以上に何だかはりきっているハナの思うようにさせてあげたいと思っているようで。


内なる世界に閉じ込められていて聞こえていないらしいマーズのそんなツッコミは、文字通りそのままスルーされて。

それならそれで、こっそり地の文に徹するからいいもん、だなんて拗ねてる可愛い? 姿も見られることがないのだから自由にやるか、なんて思っていて。




「おぉ! ミィカくんもマニカくんも元気そうじゃないか。あんなひと事件あったばかりなのに、みんなで家に遊びにきてくれたのかい?」

「こんにちは、イリィア姫さま! 今日は輝石を……じゃなかった。ガイアット国にいる、ええと。してんのーのひとりを『げっと』しにきたのだぁ!」

(ま、マジかぁっ!? ってかいつのまにかガイアット師匠悪? の四天王にされてるぅぅっ!?)



ハナ自身は、ここへやってくる時点でずっと考えていたことなのだろう。

万魔の王の娘として、特別な従霊道士なハナであるからして、魔物魔精霊どころか人族でもお構いなしに『げっと』……契約できるからと。

ガイアット王に話を聞くついでに仲間に引き入れて一石二鳥なのだ。

そんな風に思っている節があって。



「してんのー? どこの誰かな、それは? うちはそういったまとまりだと、12人かなぁ。これといった名前みたいのはなさそうだけれども」

「いきなり四天王などと言われても初面白耳ですよ姫さま。マ……母さまは魔王などと呼ばれてはいましたが、そう言うポジションの方は二人しかいないとおっしゃってましたし」

「四天王かぁ。そういう呼ばれ方じゃなかったと思うけれど、うちの式神さんたちは四人ね」

「四人の天の王。確かに契約できたらその、わくわくしますね」



戦って懲らしめて? 『げっと』するにせよ。

それはおまけで、『らすぼす』についての話を聞きたいにせよ。

今の今まで過保護な親たち+泣かない赤オニに邪魔されて、そういった幻想めいた日常から離されがちな彼女たちである。

実際にいるかも分からないというよりも、勢いだけで口にしているようにも見えるハナのそんなセリフでもしっかり盛り上がる彼女らがそこにいて。



「ボク、きいてるのだっ。いろんな世界をまわっては、かわいい女の子をつかまえてこのガイアット国に閉じ込めてるって! だからちょっとこらしめて……じゃなかった、ちょっとお話を聞きたいと思って。ついでに契約出来るのか聞いてみるのだぁ!」

(ぐふぅっ……っつかハナってばいったいどこからそんな情報を!? しかし、ううむ。言い方はあれだけどそんなに間違ってはいない……か?)


愛多きガイアット王が、あらゆる世界で愛すべき人を。

愛娘イリィアの母や姉妹となるべく存在を探し求め、死にゆく運命を奪ってでも輝石を与え彼の地に留めおいているのは事実である。

その内情を知っているものならともなく、傍から耳にすれば何だか悪さをしていそうな四天王のひとりに数えられてもおかしくなさそうには見えて。


 

「あー、うん。なるほどね、よくわかったよ。今日は珍しく玉座の間にいるだろうから、存分に懲らしめてもらって構わないよ」

「? 何やら急激にちんやりされていますが」

「あぁ、ミィカさんちはいつだって泰然としていて格好良いものね。残念な気持ちは沸かないか。羨ましい」

「??」

(説明しよう! そんなイリィア大好きオヤジさんは、無駄にかっこつけて娘にもそんな内情をあかしていないから、世界中をめぐって女性を追っかけまわし嫁探ししている放蕩オヤジだと思われているのだ! ちなみにミィカパパは、ああ見えて意外と残念な部分もなくなないのだけど、そういうのは時を巻き戻して(職権乱用)なかったことにしているから、格好良いままのパパなのだ!)



「玉座の間ってことは本当に王様みたいですね、四天王さんは」

「え、でも玉座の間ってことはそれって本物の……」

「と、とにかくばとる……『げっと』しにいくのだっ、たのもぅ! なのだぁ!!」

 


王様、おじさん、男の人。

リアータの続く言葉をまたしても遮るようにして、ハナは突然鬨の声上げて。

心の臓型の杖をわぁーっと掲げつつ駆け出していってしまう。

 



その時そんな杖の中の人が思うのは。

あれ、そう言えばハナってば召喚契約する相手ってかわいいもの、女の子やけもの型な魔物魔精霊たち限定じゃなかったっけ、なんてことで……。



    (第185話につづく)








次回は、10月1日更新予定です。

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