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第182話、EndingNo.8、『照らしていく、長いこの道の途中、迷わないように』③




SIDE:マーズ



「……兄さまが行方不明?」


魔王城にたどり着いても、『何だか面白そうだから』とミィカのお株を奪う勢いでついてきたリアータとともに。

今の今まで目覚めたマニカとミィカが意外にも仲良しでお茶していたというサロンへとやってきて。

ミィカの給仕によりとりあえずのところひと心地ついた四人+心の臓の杖(inマーズ)。



マニカが未だマニカのままでいるのを見て、やっぱり私たちをおいて一足先に帰ったわけでもなかったのねと、リアータが呟くと。

何故かそれに対しぶんぶんと首を振り振り、マーズいなくなっちゃたのだ? と確認するように聞いてくるハナ。

そんな、突飛な行動に。

ミィカが今日の姫さまは一段と面白が冴えてますねとツッコミを入れる中。



(おーい、マニカぁ! マニカちゃーん! 今日も気絶するほどかわいいねぇ!)


どうせ声は届かないであろうと。

普段思ってはいるけど、そんなに口にはしない言葉を吐き出しつつマーズは手を振ってみる。



「……っ、そうなのだっ。でっかいドラゴンなミィカにも負けない、でっかいがいこつさんなカーシャさん『げっと』するのに夢中で、いつの間にかいなくなっちゃった……うん、えと、その、何だかものすっごい『らすぼす』にさらわれちゃったのだぁ!」



のだぁのだぁのだぁ……と。

あからさまなほどに響き渡る、びくりとリアクションしそうになっていたマニカを遮るかのごときハナのセリフ。



(ううむ、適当に言ってるようでそうじゃないのが凄いよなハナって。もしかしなくともアイの怪人がやってきてたのにも気づいてたのかな)



俺より強い奴に会いに行くというか。

どうやらハナには、万魔の王の娘だけあって、王の主戦級の頼もしい仲間たち(そのほとんどが魔精霊で言えば神型クラス)のような、剛の者を探し見つけ出す、センサーのようなものがあるのかもしれなかった。



「え? そうだったの? ……いえ、確かに言われてみれば私も、カーシャさんではなくてほんの一瞬ではあるけれど、何だかイヤな気配を感じたような気がするわね」

「そうなのだっ、マニカみたいにかわいいのを仮面やマントで隠しているわけじゃないのに、すっごくあやしいひとに有無を言わさずさらわれちゃったみたいなのだ」

「かっ、かわっ!? いきなり何を言い出すんですかぁっ」

「……そこはかとなく嘘っぽいんですけど、姫さまにそんな殊勝な能力があるはずないですよね。そうなってきますと本当に? きゃつをさらえる相手など、それこそ親世代……神様クラスしか思いつきませんが」

(……ぐぶぅっ!? いや~な瘴気ダダ漏れの神様レベルのばけものだって、だってよおやじぃ! よかったなぁ! ハナだけじゃなくリアータにも気づいてもらってよぉ! マニカには認識されてないみたいだけど、だけどぉぉ!)


どうせ誰にも渾身のツッコミが届かないのならば、というよりも。

何だかんだで膝から崩れ落ちて涙ちょちょ切れそうな言葉回しを、これみよがしに口にするマーズ。

別に父に対して鬱憤が溜まっていた、と言うわけでもなく。

そんな、ミィカの言うところの面白いリアクションをしてくれそうだといった期待があったからで。



「……つまりは、ええと。これから兄さまを探しに行くということでいいのですか? ハナ姫さまは何かあてがあるのでしょうか?」

「あて? うんうん、もちろんあるぞ! まずはそうだな、イリィアひめのところだな!」

「イリィアさんっていうと、ガイアット王国? 宝石乙女イシュテイルさんたちの暮らすっていう」

「ガイアットは……足を運んだことはなかったでしたっけ? 煌びやかな宝石をまとった人や魔物、魔精霊がいるとか」

「そう、あやしいらすぼすの配下の、七色の槍を持つ死神さんがいるのだ、なんとかして『げっと』……じゃなかった。こてんぱんにこらしめたのならば、きっとらすぼすさんもごうをにやして出てきてくれるかもしれないのだっ」

(ぶふふふっ、配下扱いっ。同級生の同学年って聞いてるけど、確かにガイアット王ならばオヤジの居場所知ってるかもなぁ)



ここまで来ると、流石にハナの何やら目的があるらしい(本当に死に神の王を『げっと』する腹積もりではないだろうが)、

勢いに任せたはったりかと思いきや、意外にも悪くはなさそうな一言で。



「なるほど、分かりました。何だかとっても面白そうです。マニカさんはもちろん、リアータさんもお暇であるのならばお付き合いいただいても?」

「そうですね。兄さまをさらって行ってしまうようなお方、正直気になります」

「……まぁ、危なくなるようなことがあったら言われなくても来てくれるだろうし、せっかくだからお邪魔するわね」

(うーん、何だかハナ、随分とこの杖気に入っているいみたいだし、いざとなったら強引にでも自己主張したいとは思うんだけどなぁ)


正直に言えば出ようと思えば出られはするのかもしれない。

だが、何度も言うようにハナに何やら企みごとがあるようであったし。

このまま絶賛待機中でいれば、先ほど求めてやまなかった、防ぐこと敵わない幸運な事故が起きそうなので、黙しはせずとも動かずにいて。



「それじゃぁ準備をいたしましょうか姫さま、その後生大事に抱えていらっしゃる武器はともかくとして、防具諸々を揃えませんと。後一応ではありますが、姫様の冒険行脚の旨を両親に伝えなくてはいけませんし」

「……っ、もんどうむよーっ!! 一番やりはこのボクなのだぁっー!」

「えっ、ハナさんっ?」

「ちょ、ちょっと!?」

(くっ、あのオヤジにしてこの息子! いやらしい気配が漏れ出てしまったかぁ……!)



ぐるんと急転回して変わる視界。

やっぱりもしかしなくてもハナは内にいる泣かない赤オニの存在に気づいているんじゃぁなかろうかと思いつつも。

マーズは、それでもそのまま座して、見守っていくことにして……。



   (第183話につづく)









次回は、9月19日更新予定です。

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