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第181話、EndingNo.8、『照らしていく、長いこの道の途中、迷わないように』②




SIDE:マーズ




「そう言えば先に行っていたはずのマーズはどうしたの?」



そんな、リアータの最もなセリフは。

どうも、ハナの手元にある杖の中から見える範囲ではあるが、スルーされそうな雰囲気があった。



もしかしなくとも、マーズがそこにいるのを分かっているであろうカーシャも。

今の今まであってないような敵方であったことに遠慮しているのか。

あるいは新しき主であるハナに配慮しているのか。

何やらによによしつつも、そう言えばマーズくんとは親戚なんだよ、だからそんな不倶戴天な怨敵を見るような真似はやめてほしいな。

こう見えても傷つきやすいのだから……と言いつつもイリィアと一緒になってウィーカのもふもふに余年がなかったりして、それどころではなくなっていて。




「ハナさん、何やら大事そうに……ハートの形の宝珠ですか? 今まで特段得物を持っていないようでしたけど、その杖にお決めになったのです?」

「ぅやっ!? お、おおぉ。そうなのだっ。ムロガいいんちょ、この杖借りるって言ったけど、買い取りしちゃってもいいのだ?」

「え? 家の倉庫の肥やしになっていたレプリカだったと思うんだけどいいのかい? 別に初めからお金をいただくつもりはなかったから、気にいったのならば本物持ってくるけど」

「ううん、これがいいのだ! 固くてがんじょーだし、きっと運命の出会いってやつなのだ」

「ハナさんがそこまで気に入ってくれたのなら、うん。大事にしてあげて。メンテナンスが必要なら僕もできるからね」

(うーん。どうやらムロガはこれの価値聞かされてないっぽいな)



まぁ、母さんたちが装備するの恥ずかしいから預けておいただなんて言えやしないんだろう。

とはいえ、クルーシュトやムロガがこのタイミングで杖のことを気にかけてくれたのは行幸ではあって。

俺はここだぞぉと、間に合わなくなっても知らんぞぉ……ではなく。

このままベストポジションに居座っていたらラッキーなイベントが次々と目の前に繰り広げられてしまうぞと。

俺はもちろんそうなっても仕方なしに受け入れるだけだが。

特にムロガにとってみればできれば避けたいことだろうと(二度目)。

マーズなりに必死になって訴えてみるも、所詮は心のどこかで期待しちゃっていたマーズのツッコミは精彩を欠いていて。





「あ、はいなのだ。すっごくかっちこちだからだいじょぶだとは思うけど、その時はお願いするのだ。……って、そうだったのだ。それよりドラゴンなミィカも気になるし、とりあえずは戻ろう、なのだ」

「あぁ、私を目覚めさせた黄金の竜か。確かに実に興味深いね。赤オニくんのことだから、一足先にそちらへ向かっているんじゃないかな」

「あ、そうだったわ。マイカ元理事長にお任せしてきたし大丈夫だとは思うけど、マーズのことだからマニカさんが気になっていたのかも」

(くっ、露骨な誘導だな! 確かにミィカとマニカのことは気になるけども。気になってしかたないけども! もう、知らないからね! ラッキスケベ満載でウハウハしちゃうからな!)



結局のところ正直に欲望をさらけ出したとしても。

聞こえないフリをしているのか、本当に聞こえていないのか反応がなくて虚しいばかりで。


何とはなしに、無意識か意識的かはともかくとして。

ハナに何やら企みがあるようであったので。

もしも思わず口にしてしまったような展開になったのならば。

セルフふて寝と言う名の、自らに睡眠魔法でもかけるしかないな、なんて思っていて……。







              ※      ※      ※      






それから。

ハナの召喚によって呼ばれたメンツはもれなく送還されて。

ハナと新たに契約したカーシャを含めた召喚モンスターもいったん魔精球へと引っ込んで。

残ったものは【虹泉トラベル・ゲート】を各自使い、またの約束をしつつもマーズがそうは言っても期待していた事態は訪れることはなく。

それでも置いてきてしまったからと気になっていたらしいリアータとともに、ハナはユーライジア・スクール内にある、ミィカの自宅……通称スクール内の魔王城へと戻ってきていた。



しかと張り直されている、実はリアータの父がつくったらしい城の周りを覆う結界……『破邪結界』を問題なく超えたところで。

マーズとしても懸念していたマニカとミィカの元気そうな姿が見えてくる。



リアータによれば、マーズが急に抜けたことで焦ったのか、飛ぶコントロールを失って気を失っていたようで。

申し訳ないことをしたなぁと思いつつも、現況を鑑みるとマーズとマニカがうまいこと分たれているから。

このままならこのままでもいいのではないのか、なんて少し思ったりもしていて。



一方のミィカは、赤オニのいなくなったマニカと違って、ドラゴン化を経て戻るのはある程度負担があるらしく、元気いっぱい毒を吐く、といった感じではなかったが。

杖の中から見た限りではすっかり元の姿……ハナと負けず劣らずなプリティようじょに戻っていて。




「おぉー、お出迎えごくろー、ミィカぁ、マニカぁ」

「良かった、ふたりとも元気そう? ミィカさんはお疲れみたいだけど」

「まったくです。ただでさえ竜化でいっぱいいっぱいでしたのに、火の女神は降ってくるし、その隙をついておむすび姫さまはどこかへ行ってしまうしで大変でしたよ、もう」

「【カムラル】の女神ですか?! いったいどこにっ」

「おむすびゆぅなぁ! 泣くぞ、泣いちゃうからな!」

「ふふ。マーズがいたのならそれこそツッコミの嵐だったでしょうねぇ」



果たして、そう言うリアータが心の臓型の杖の中にいるマーズに気づいているのかいないのか。

どんなに怒涛のツッコミラッシュが吹き荒れようとも、その場に届いていないのだから。

結局のところは、さして意味をなしてはいなくて……。



  (第182話につづく)








次回は、9月13日更新予定です。

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