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第18話、ねことサムライガールと、いつもの登校風景




いつものガイアット国における日課を終えたマーズは。

一旦家に戻って牛乳を置いてきたクルーシュトとともに、スクール下町を通りつつスクールへ向かうこととなったわけだが。

何かを考えているかのように真剣な表情のままでいるクルーシュトに対し、話の取っ掛りを、とばかりにマーズが口を開く。



「随分深刻そうだけど、やっぱりあのヤローがやったら袋叩きにあいそうな転入の挨拶がまずかったのか?」


とはいえ、ハナは話の内容をしっかり理解せずに言わされているだけで。

諸悪の根源はその後ろで腹話術師のごとく暗躍していたメイド幼女ミィカなわけで。

その辺りを忠告すべきかどうかマーズが考えていると、ウィーカをほとんど無意識に胸元で撫で回していたクルーシュトは、ハッとなって顔を上げた。



「まずくない……とは正直言えない内容だったかな。彼女の父上の事を考えれば、頼もしい召喚仲間が欲しかったのだというのは予想がつくけどね。私……いや、私たちクラスの女生徒たちにはおおむね受けは悪くなかったよ。問題なのは男子生徒たちだな」

「あ~、そう言えば朝の会でもちょっと雰囲気おかしかったよな男連中。かわいいお姫様にテンション上がってたわけじゃなかったのか」 



それには当然マーズも気づいていた。

解せないのは、男どものおかしいテンション……その問題に、最初に会ったであろうマーズが全くもって認識できていないことにあった。


確かに、伝説の従霊道士の娘だけあって規格外の魔力を持っているだろう事は把握できたが、マーズにとってみればそれだけで。

彼女に対し特に嫌悪感を覚える事はなかった。

だが、クラスメイトの男子たちはそうではなかったらしい。



「何て言えばいいのかな。今まさにマーズが口にした、もし男だったらという感覚に近いかもしれないね。あくまで好意的に受け取ればだが、同性……男同士のいがみ合いに近いのかもしれない。普段の男どもならば見た目素のままに可愛らしい彼女たちに対しあんな敵意むき出しの態度は取らないんじゃないかな」

「うにゃ? あ〜見えて男の娘だったりするのかにゃぁ。身体的な事だけじゃにゃくて、その魂とかがさ」

「レスト族などにある、魂の入れ替わり、か。一応サントスール&アーヴァインの姫なのだから出自はしっかりしてるはずだし、私から見ても彼女たち側には男らしい要素などないように見えたけどね」


聞き役に徹するマーズに対し、軽妙に続くクルーシュトとウィーカのやりとり。

レスト族のところでクルーシュトの視線がマーズを映したが、マーズは聞き入り考え込む仕草をしつつそれをスルーしていた。


言わずもがな、マーズに流れる血のうちの半分は確実にレスト族のものである。

魂を複数持ち、人格、見た目ごと定期的に入れ替わる不可思議種族であり、こっそり疑っていたリアータと同じく、クルーシュトも『夜を駆けるもの』とマーズが同一人物であると考えている人物の一人であった。


クルーシュトはスクール内において『風紀委員』の長をこなす傍ら、スクールの付随する街の警邏、警備を行う『風紀』の一人でもあり、夜更かしをする仮面の怪盗(悪さと言えば名前の割にそれくらいしか上がっていない)と出くわした事があったからだ。


まぁ、マーズは知らないの一点張りであるし、『夜を駆けるもの』は自分と無関係であると主張しているため、それこそ『変わる』瞬間でも目撃しない限り、真実は明らかにならないわけだが。




「ええっと、あれだ。クラスの雰囲気、悪くなってたりするのか? ミィカはともかくハナのやつ、いじめられたりしてないか?」


逸れそうになる話題を無理やりにでも修正し、マーズは問う。

会ったばかりで人となり全てを知っているわけではないが、いじめられようものなら何倍にしてでも返しそうなミィカに対し、純粋で単純っぽいハナは真正面からそれを受けて、傷ついていそうな気がしてならない。


一度知り合った以上、彼女らの親に何とはなしに頼まれたからという理由以上に気になって仕方ないマーズは、見た目そのままの仏頂面で念を押す。




「私の目が黒いうちはそんな事させないつもりだが、本人もどうやら異性にいい印象を与えないであろう理由を分かっているようだったよ。今はどちらかというと彼女たちの方が男子生徒達を避けている状況だね。それがいいか悪いかはともかくとして、そんな様子だから今のところは問題になるようなことは起きてないかな」


私を誰だと思っている、などと言わんばかりに目を細め、新転校生とクラスメイトの仲を取り持とうとしているのがよく分かるクルーシュトの態度。


しかし、元より男嫌いなのか、周りの圧がきついからそうなってしまったのか。

ハナの方が避けているというのは印象として意外な話ではあった。

同性相手ならばそれこそ友達100人作ろうかといった勢いなのに、男がいるとミィカの後ろに隠れてしまうらしい。


髪のボリューム的な意味で全然隠れられていないのがまた可愛いと言うのがクルーシュトの弁であるが、

そうなってくるとやっぱり先ほども挙げた疑問が湧いてくる。



「うーみゅ。それにしちゃあまーずにはくっついてたみたいだけど」


自分を棚に上げて? ウィーカはマーズのツンツンとさか頭に取り付いて、匂いが残ってるぞとばかりに鼻をひくひくさせる。


「いやいや、あれは不可抗力だって。……まぁ、避けられてはいないかもしれないが」


会ったばかりのリアクション……ミィカも含めて思い出すに、好かれているなんてうぬぼれを抱けないのは確かであった。

こちらとの接触に対し、何かを恐れていた節があったのは確かで……。



     (第19話につづく)









次回は、6月20日更新予定です。

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