表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

177/199

第177話、EndingNo.7、『おとぎ話の続きを、長い夜の真ん中で』③




SIDE:ミィカ



お互いの相棒というか、魂の片割れと言ってもいいハナとマーズの二人が手を組んだ? のだから。

日々を面白おかしく過ごすためにと、目が覚めたと思ったら兄さまから逃げ出したい、それこそ異世界でもなんでも。

……だなんてのたまうマニカの口車に乗るというか、それこそ何だか面白そうであるからと。


黄金のドラゴンから戻ったばかりのミィカは。

今の今まで覚えたことのない自身の感情を誤魔化す意味も込めて、そんなマニカについていくことにしていた。




『もう一人の自分』、あるいは本性とも言うべき姿を。

ハナに見せてしまった以上、その格好良くてセンスのありすぎる立ち振る舞いにハナがやられてしまって。

既に召喚契約を済ませてしまっているのに、欲しがってがっついて求めようとするかも知れないからと自分にいいわけしていたわけだが。



マニカが、できればすぐには見つからないような、『虹泉トラベル・ゲート』を使って移動するような場所が良いと訴えて来た時。

楽しそうだなと思った以外に、ハナ姫さまを置いておいてもこっちのある意味で我がまま姫さまについていくべきだと思ったのは。


ハナ姫さまのことだからどうせあの変態オニ……兄さまの傍にいるであろうから少しくらいは離れていても悔しいけれど大丈夫であろうといった理由もあったが。

起きがけで、問答無用で引っ張ってくるのもかわいいマニカが。

思わずミィカがそう思ってしまうくらいには、いつもと様子が違っていたせいもあるのだろう。




「待ってください、マニカさん。へん……オニいさまならばまだこちらへ来るのには時間がかかることでしょう。言われなくとも、うちの姫さまが空気をよんでからだを張って止めてくれているはずです。それよりもマニカさんその御姿は? 仮面やマントはともかくとして、そんなうちの姫さまに負けないくらいの……その、なんと言いますか。どこもかしこも小さめでしたっけ?」



とはいえハナは顔と髪のボリュームでだけで言えばそれこそドラゴン並ではあるのだが。

ミィカは自身を棚に上げて、ドラゴンの姿で見たときは中等部セントレアくらいの背丈身なりであったマニカが。

そんなドラゴンの威圧にやられた……わけでもないのだろうが、気を失ったようにリアータに受け止められてから、今の今まで客室で休んでもらっていたから、そろそろお見舞いに行かなくてはと足を向けたのならば。


既に目を覚ましていたマニカは、部屋へ入るや否やどこへともなく冒険しに行きたいと駄々っ子になっていて。

そんなセリフに合わせるかのように、初等部リトクラスに通うにも少々早そうに見える(ハナとともにブーメラン)幼いマニカがそこにいた。




「あ、はい。いつもは認識阻害のついているマントのおかげで、普段は大きめに見えるのはあると思います。それと、こうしてお外に出る際に供給魔力なども含めて手伝っていただいている方がいまして。チェリさんって言うのですけれど。なるべく兄さまの素晴らしさに近づけるように、肉付きをお願いしているのです」

「なるほど、そうだったのですか。その可愛らしいお姿がマニカさんの真の姿という事なのですね」

「もう、ミィカさんったら。そのお言葉、そのままお返しいたしますよ~」

「何だか使い方間違っているような気がします。……まぁ確かに私も今の状態が真であるとは思っていますが」



それこそ、マーズがその場にいたのならば。

泣かないから出ないはずの涙を流してツッコミが追いつかねぇと吠えるところであろう。

ツッコミ役がいないと、嘘だろうとツッコまざるを得ない無自覚さを振りまいて話が進まないところではあるが。


 

 「私なんて全然です。チェリさんには、兄さまのように可愛くして欲しいとはお願いしてはいるのですが」

 「かわ……いい? いや、ええと。そう言う見方ができなくはない……のかな」

 「……はっ、そうでしたっ。とにもかくにもまずは逃げましょう! 兄さまに見つかってしまいます!」



そんなことよりもとにかくマニカはそんなツッコミ役が間に合う前にここから離れたいらしい。

首を大きく傾げつつ、むつかしい顔をしていたミィカは、はっとなってひっくり返りそうであった顔を戻して。



「ここではない異世界へと冒険に赴きたい、という要望は理解しました。お供するのも吝かではないですが、追っ手が居場所を特定するのを遅らせるためには幾つか準備が必要でしょう。さしあたって、行き先を話してしまう可能性の高いうちの両親に話をつけにいきましょうか。口止めは無理でも、しばらく席を外しておいてもらうくらいならば交渉が可能なはずです」

「あ、そうですね。と……冒険に行くんですもの。外出の旨をミィカさんのお父さまとお母さまに伝えないと」


それもこれもやり方次第。

下手をすれば、わたしも俺もついていくと言い出しかねないのがネックで。

それはそれでありなのかもしれないが、ハナが戻って来た時に誰もいないのではうまくないので、どうにか上手く説得したい。



私にはそういった相手もいません。

そんなマニカのもうらしい勘違いを否定しつつ励ましフォローできるような言葉を考えつつ。

今度はミィカの方から、そんなマニカの手を取っていて……。



   (第178話につづく)








次回は、8月19日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ