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第174話、EndingNo.6、『思い切り息を吸い込んで、この想いを空に放ちたい』⑤



 SIDE:リアータ


 


ガイゼル】の根源……を自称する雷獣のラウルが青く迸る電撃を撃ち放ち。

陽炎にて見るものを幻惑し嘲笑うあぐらをかいたシャム猫のオノマが笑いを忘れて炎の弾丸を吐き出して。

騎竜モードからマスコット兼アタッカーなホワイトドラゴンのカグチが、邪なるもの滅せんと光のドラゴンブレスにて、その場を支配する。



僅かばかり透けて、黒いタールのような人型が垣間見える斑色の小山。

恐らくは、この『トライアングル』の世界の三大派閥のひとつ、『覆滅』に類する存在。


会敵してすぐの、三者三樣な先制攻撃。

避けたり迎撃する様子もなかったから。

その斑色のカラフルな『ガワ』は前菜のようなもので。


中のひとが出てきてからがきっと本番。

そう思い、一人先行するも油断せず、黒い……いかにも『覆滅』の派閥らしい雰囲気な人型を見据えつつはっとなって。



「って、三人? イサク? どうしたの……っ!」

「みりゅりゅっ!」

 

主に水上海上で最大限の力を発揮する、どこもかしこもまんまるな【ウルガヴ】の妖精さん、イサク。

確かに式神四天王揃って先制攻撃を仕掛けたことを意味する、みんなの鳴き声……掛け声を聞いたような気がしたのに、気のせいであったかのように。


リアータのそんな誰何の声も、遅れて聞こえてきていたイサクの焦ったような鳴き声すらかき消す、ユーライジアでは一部の【ヴルック】の魔物魔精霊か、いいんちょことムロガが扱っていた銃火器の断続的な炸裂音が響き渡る……。

 


この世界ではけっこう異常なことらしいのだが。

リアータが、たとえそれを無防備に受けたとしてもばちばちとちょっと痛いくらいですむわけだが。

どうやらイサクは、誰よりも早く第三者の横槍に気づいて、範囲はそう広くはないが、粘土の高い水の膜を張る魔法を発動していたらしい。


ぷにににっと場の雰囲気にそぐわない、スライムをもふり倒すかのような音がして、思ったより大きめだった鉛色の弾丸が弾かればら蒔かれる音がして。





「へえ、攻撃のタイミングを狙ったはずなんだけどな、ノータイムで防がれるとは。やるじゃん『自然』のかわいこちゃんず」

「……っ! え? マニカさん?」

「お? アタシのこと知ってるのか? そう言う情報? 的なのって、『理制』……うちの専売特許だと思ってたけどな」



基本『理制』と呼ばれる派閥が扱う武器は、長距離からのものが多かったから。

わざわざこちらの攻撃範囲にまで入って近づいて、尚且つ話しかけてくる必要はないはずなのだが。

どうやら『理制』の彼女も、リアータと同じで他派閥の剛の者とお話がしたかったらしい。



文字通りの、挨拶がわりの攻撃の煙が晴れた向こうに現れたのは。

『理制』どころかこの世界にも、あるいはリアータ以上にはまっていない気がする、紅、金、茶三色をいい感じに組み合わせた長い髪の、マニカによく似た……いや、彼女自身が言うところによればきっと、この『トライアングル』の世界のマニカなのだろう。


一言二言聞いただけでも、大分蓮っ葉で元気いっぱいな感じではあるが。

いつだったかみんなでパジャママーティーならぬ夜の女子会をした時に、銃火器やロマンなアイテムをいくつも背負いつつ、硝煙の似合うかっこいい女性に憧れている部分はあるとマニカ本人から聞いたこともあって、すぐにそうと気づいたリアータは。

それでも攻撃を仕掛けられたことでぷんすこなラウルさま(そう呼ばないとへそを曲げるのだ)をなだめつつ、とりあえずの目的は達したということで、式神四天王な面々にありがとうと、どことも知れぬ世界へ還して。


ニヒルな苦笑を浮かべているつもりで、可愛いにすぎてできないでいるマニカ(この世界では真仁香というらしい)の方へと駆け寄っていく。





「やっぱりいた! 違う世界のようでつながっていそうだったからもしかしたらって思っていたのよ~」

「ををっ、何かいきなり距離ちかぁっ…………って! はわあっ!? リアータさん、リアータさんじゃないですかっ! なんでお、私、今の今まで忘れていたんでしょう。っていうかごめんなさいいぃぃ! 調子にのって攻撃してしまいましたぁっ!!」



そう、そしてそれこそが番外。

リアータがこの世界へやってきて、あまり同じ派閥のひとでも深い付き合いをしてこなかった理由。


魔力や魔法、問題なく式神召喚ができていて。

尚且つ母マリアやアキセの生まれ故郷である時点で、この『トライアングル』の世界がユーライジアと大きく関わっていると。

ユーライジアにて友誼を深めた相手が、この世界にも必ずいるはずだと予想していて。


らしくもなく嬉しくなってしまって思わず抱きつきにいったらマニカもその事を都合よくも思い出してくれたらしい。


今までの蓮っ葉偽悪キャラが恥ずかしいと。

調子に乗って攻撃までしてしまって申し訳ないと、いつもの素のお姫様に戻ったマニカが、色々な意味で泣き出す勢いでいるのを、引き続き降って沸いたどころか自ら突っ込んでいったささやかな幸せを味わうべく、そのまま抱きしめなだめ続けていると。




果たしてそれが羨ましかったのか。

弾丸雨あられな横槍からの奇跡の邂逅に混じりたかったのか。

ほったらかしにしていたというか、マニカショックですっかり忘れていた黄色黒赤紫な斑色の小山がぶぅわさぁっと崩れ消えて。


先ほどまでの小さな子供位にも見えた黒いシルエットはどこへやら。

辛抱たまらなくなった泣かない赤オニが、ぐぁばぁっと起き上がってこちらをガン見しているのが分かって。




「わぁっ、にぃ、赤オニさんが目を覚ましましたっ! とりあえず逃げましょう!」

「くすっ。マニカさんがそう言うのなら」



先ほどまでの蓮っ葉偽悪キャラが恥ずかしかったのか。

とにかく、赤オニさんから逃げ出すのがお約束の先決らしい。


十中八九どころか、確実に赤オニさんはユーライジアからやってきたのだろう。


そうであるのならばもう安心だと。

きっと遠くない未来に、この世界もめでたしめでたしで終わるのだろうと。

そう思いながら。



「ちょっ、なんでいきなり逃げるんだよ! オレだよオレ! やさしいオニならぬオニーさんがやってきましたよおおぉぉ……!!」



そんなやさしいツッコミ? をBGMに。


リアータはマニカの手を取って。

確かに少しづつ、良い意味で終わり初めている世界を駆け出していくのであった……。



    (第175話につづく)









次回は、8月2日更新予定です。

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