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第173話、EndingNo.6、『思い切り息を吸い込んで、この想いを空に放ちたい』④



 SIDE:リアータ


 

それは、もしかしたら。

リアータにとってみれば同一の存在、種族にも見えてしまっていた、『もうひとりの自分』とも言える存在……マニカへとよくよく触れ合ったことによって奇跡的に起こったことであったのかもしれなかった。




「人のせいにしちゃうのは良くないことよ……ねぇっ!」


鉛の雨あられに、悪感情を塗りこんでぶちまけたかのごとき、黒い斑の大地。

リアータは、飛行機とドラゴンのあいの子のような式神……【セザール】の魔精霊である『カグチ』に乗り込みつつ、戦場を駆け抜ける。



「きゅっ、きゅいぃっ?」

「ううん、何でもないわ。それよりもう少しでここを抜けられそうだから、あと少しだけ頑張って、カグチ」

「きゅぅっ!」


足元と背中に感じる、柔らかでもふもふなぬくもり。

母から託されるように受け継ぎ、物心つくくらいから仲良しであった、『セザール・ドラゴン』のカグチ。

ユーライジアから、召喚する形で連れてきた大切な友の一人。



今の今までたった一人でこの世界を駆け抜けていたこの世界での自分の事を考えたのならば申し訳ない気分にはなったが。

ずっと甘い世界につかっていたユーライジアでの自分が、思っていたよりも寂しがり屋であったのだと気付かされたのも確かで。



マーズたち『レスト族』のような言い方をすれば、内なる世界からこちらを見ているだけで、こうして声を発することすらできなかったから。

そんな些細なやりとりですら、嬉しいのだと。

この世界へ来てからというもの、しっかり口にするようにもしていて。



ユーライジアの、優しく過保護に過ぎた世界と。

いつだって死が隣り合わせの厳しい、だけど生きていると実感できる世界。


元々は、『虹泉の迷い子』として母の生まれ故郷なこの世界は。

一見すると、人間族ばかりであったけれど。

ずっとずっと昔から、それこそ母の代よりも前から三つの派閥、集まりに分かれて、魔法や超常の力を駆使して。

終わりの見えない、血で血を洗う争いを続けてきていた。



リアータの母ふたりは、この『トライアングル』と呼ばれる世界とユーライジア、どちらも故郷で、

どっちがどっちというわけではないといった結論に達したと言っていたけれど。


未だ母たちのように自由に立場を入れ替えたりできなかったリアータにとってみれば。

今の今まで事実見ているだけで、何もできていなかった……姉、あるいは妹である『アキセ』の故郷、世界で。


夢のように、ずっと見続けては代わりたいと切に願うようになるのに、そう時間はかからなかった。


アキセにも、母の言う甘い世界を。

あるいは、マーズによって救われている、『虹泉の迷い子』であった自分自身を感じて欲しいと思い続けていたからこそ、此度のように、マーズ……マニカが、その願いを叶えてくれたのだろう。




不意にアキセと入れ代わって。

それほど時が経った訳でもなかったが。


リアータは、三つの派閥のうちの、自然を司る集まりへと籍を置いて。

母から賜った式神四天王の力借りて、飛ぶ鳥落とす勢いで、活躍していくこととなる。




カグチたちの力ももちろん、この世界にとってみれば大きいものだったのだろうが。

結局のところ、鉄仮面だの氷雪の魔女だの言われ続けていたリアータにとってみれば、

気持ちの良いくらい殺伐としたこの世界が、性にあっていたとも言えて。


いつか嘯いたクルーシュトの言葉ではないが。

身につけた自身の力を思う存分発揮したい。

実際問題それが可能であるこの世界に、リアータは良くも悪くも調子に乗っていたのは確かで。




「……っ!」


三つの派閥による、唐突に始まる乱戦。

アキセが基本的に単独行動をしていたから、というのはいいわけか。

リアータは、同じ『自然』を司る派閥の中でも浮いた存在であった。

それは、仲間が傷つくのを見たくない、自身と言うよりもカグチの機動力についてこれないだろうと。

あるいは自身の思うままに行動したいといったわがままから来るもので。



今日も今日とて、仲間たちからはぐれるように、一人突出したリアータは。

味方以外の戦場に在る敵性を余すことなく自らの【ウルガヴ】魔法で。

カグチのドラゴンブレス風ミサイルで蹴散らしつつ邁進していた。

目標はあるようでなく、敵方の親玉クラスが、どこかに陣でも敷いていて待ち構えていればいいのにと思い出したところで現れたのは。

見ようによっては綺麗だと思えなくもない、黄色と黒と紫が強めな、斑色の小山であった。


思わずカグチに急停止してもらって騎獣モードを解くと。

有象ぞと蠢くそれは、ほんの僅かに透けていて、中身が見えていて。



「ゴオオォォォォ……」


果たしてそれは、人の成れの果てか。

『覆滅』を司る派閥の中でも剛の者の一張羅であるのか。

どちらにせよ、一筋縄ではいかなそうな、此度の暴走の(自覚アリ)終着点、目標になりそうなのは確かで。



「……的がおっきくて分かりやすい感じね。ここは一気呵成に、全員でしかけましょうか」

「きゅいぃっ!」

「のだっ!!」

「みりゅりゅっ!」

「ギャーッハッハッハ!」


やると決めたら出力最大、一撃必殺。

正しく物語が始まる前にぶっこわすマーズのように。

もう一つの、リアータが単独で行動している理由……

根源にも届きうる、四体の魔精霊を同時召喚したリアータは。

言葉通り、余計な横槍が入ってしまう前にと、一気で攻勢をかけてしまうことにして……。



    (第174話につづく)









次回は、7月27日更新予定です。

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