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第167話、EndingNo.5、『夢見てる、優しく滲んだその色に』③




SIDE:マーズ



それじゃあこの場はわかいふたりにまかせて~。


とりあえずのところ、ナイト……マニカと会った時のことを詳しくミィカに伺おうといった流れになって。

何かを勘違いして気を使っているのか、ミィカに任せるべきと判断したのか。


マイカは、そんな冗談ともつかない言葉を吐いて。

そんなマイカと言うよりも、娘であるミィカに何か言いかけて。

そのままじゃまするんじゃないょぅとばかりに【リヴァ】師匠をどこへともなく引っ張っていってしまって。



「お母さまの目論見通りにはいきませんからねあしからず。庭園の見えるバルコニーに行きますよ。まぁ、ここは朝でも昼でも真っ暗なんですけど」

「お、おう。それも魔王城の演出ってやつか。徹底してるよなぁ」


魔王の名を冠すといっても両親ともどもごくごく普通の魔精霊(あくまでも本人たちの言い分)であるからして、城の周囲に結界を張って闇色のヴェールに包み、常に夜でなければならない理由もないのだが。

 

マーズ自身の魂の片割れ、相棒がいなくなってしまったといった訴えは。

このユーライジアの世界において神にも等しいふたり(少なくともマーズはそう確信している)にとってみれば、それこそマーズの勘違いか、あるいは世界においてはそれほど大事ではないらしく。



あっさりミィカに任せて去っていってしまった二人に、呆然としていたマーズは。

そんなツンデレ風味なミィカの台詞に半自動でツッコミ返しつつも。

よくよく考えてみれば、マイカそっくりなミィカは正真正銘の神の子であるからと。


縋る気持ちもって改めてやってきたのは。

それも演出であるのか、濃い紫がかったヒトダマを光源としたランタンがうっすら照らすテーブルと机と茶器茶菓子の備え付けてあるバルコニーであった。





「言っておきますけれど、お茶菓子は姫さまやお母さま用ですから。あなたのぶんはありませんから」

「あぁ、お気遣いどうも。さっそくだけどマニカ、『夜を駆けるもの』と出会った時のことを聞かせて欲しい」

「むむ。冗談に決まっているでしょう。初めて会った時も言いましたが、そんな意地悪をするようなメイドだと思われているのは心外です」

「あ、すまない。少々気が急いていたみたいだ。スコーンと紅茶、いただくよ」

「打ってもひびかないとは正にこのことですね……はぁ。何だかバカらしくなってきました。どうしてこの清廉瀟洒、純粋無垢な私があなた方のために嘘をつかなければならないのですか。なんていうかまったくもって面白くないので、ここはあえてぶち壊させていただきますよ」



たぶんきっと。

勘違いというか、憂さ晴らしにあえてやっていた母マイカの台詞が恥ずかしくなってくるくらいに。

ミィカは拗ねてへそを曲げておかんむりであったのかもしれない。

初めて出会った時のようにどくどく全開で、ミィカは両手上げる勢いでむすっとしつつマーズにとって非常に気になる事を口にして。



「はは。確かにミィカはそう言う娘だよなぁ。我慢できずに自分から言っちゃうところとかさ」

「そこはそんなわけねぇだろってつっこむところじゃないんですかね。やはり相当妹さんのことが気になって気になって仕方がないようです」

「あぁ、やっぱり。ミィカってばマニカのこと知って……覚えているんだな」

「ええそうですよぅだ。妹さんにはへんたい兄さんに知らないふりをして欲しいと頼まれてたのですよ」



それこそ正直に言えば。

マーズは、ミィカが始めに知らないと口にしたのを、すぐに嘘であると気づいていた。

気づきつつも、お人好しでツンデレかわいいミィカのことだから、何か理由があるのだと察していて。

結局我慢できずに秘密をばらしてしまうそんなミィカのことを、後でマニカにフォローしておかないとな、なんて思いつつ。



「知らないふり、かぁ。その心は?」

「あなたと身体を共有し続けるだなんて、ぞっとしません。……私ならそう思いますけれど。あなたと同じで妹さんも相当あなたを想っているみたいですね。これ以上あなたの重荷になりなくないそうですよ。自分の身体ではない、借り物であると思い込んでいるあなたのせいじゃないですかね」

「それは……」



きっと最初から分かっていたけれど。

そう思い込んで、目をつむっていたことで。


明確にそんな言葉を叩きつけられて。

目からうろこ……勘違いしていたのは、自分自身であると。


マーズは改めて、そう思い知らされるのであった……。



    (第168話につづく)









次回は、6月23日更新予定です。

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