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第156話、EndingNo.2、『まだここにいて、小さな世界を照らすから』③





SIDE:ウィーカ


生涯の相棒と決めた人物にまとわりくっついて、時には盾となり人知れず相棒を護り。

時には愛玩動物として、その腕の中を終の棲み家にするつもりで、モフモフを提供しつつもまどろむ『猫』なウィーカは。

歴代のオカリーの一族にならい、異世界旅猫として『あおぞら』世界などと呼ばれる場所へとやってきていた。



相棒はもちろん、小山のごとき赤オニのナイスガイから180度生まれ変わった魔性の魔導人形、マーズ・カムラル。

マーズに加えて、なんの因果かともに行動することとなった『エクゼ・ヴァンピール』のクロと、元『ガシャドクロ』のカーシャ。

でこぼこどころか、一癖も二癖もある四人組は。

チーム名『モフ・トラヴァント』として、音楽を中心とする才能が超常不可思議な力となる世界にて、歌合戦ならぬ、お互いの信じるものをかけてせめぎ凌ぎ合う争いへと巻き込まれていた。





「【ヴルック】の箱庭めいた病院、ね。なるほど、確かに。サビと油の匂いがするよ」

「本当かよ。鼻いいなぁ。オレには消毒とか病院っぽい匂いしかしないけども」

「時空の狭間を超える魔導機械……いえ、この世界ではオーパーツ扱いなんでしたっけ。それがあるとするのならば、地下ですかね」

「……ご覧のとおり目的を果たしたから帰るってにょはいいけど、本当に戻れぬのかにゃぁ。っていうか、一応『きぼー』とかいう団体に加入してるんだし、義理は果たさにゃぁあかんでしょ」

「まぁ、下っ端の私たちが、それを見つけられたとして、使用の許可が得られるとは思えませんけど」

「それ以前に名前から判断するに、異世界間を移動できる装置じゃなさそうな気もするんだよな」

「ふむ。皆の意見に一理あり、か。まぁ、現物さえ見ることができれば物自体の複製は可能だろう。幸いにもこの世界で得られた能力もあることだしね」



そんな中、ウィーカたちは。

偶然か必然か、音楽に即している部分を含めた超常の力を扱う者たちの団体、そのうちのひとつに身を寄せることとなっていた。


世界の滅亡を目論む能力者の正体を暴き、それを阻止せんと日々表舞台、その裏側に限らず精力的に働いている。

そんな彼、彼女らの能力に、ユーライジアで言うところの従霊道士めいたものがあって。

彼、彼女らの魂の相棒的存在、『ファミリア』には犬や猫のような小動物が多く。


はじまりのきっかけは、真っ白猫が靴下を履いているといった、プリティの極みなウィーカが。

この世のものとは思えない魔性の魔導人形と美少女肉襦袢付きスケルトンと、闇のモヤまとった真っ黒カラスといったしもべ三人を引き連れていると言い張ったことで。

何故か気に入られ受け入れられたと言うもので。



一度知り合って袖振りあった以上、世界の滅亡を企んでいる存在が見つかるのか、果たしてそれを止められるのか。

マーズでなくても、答えが出ぬままに途中退場はいかがなものかと思っていたのは確かではあるのだが。




「でもにゃぁ。この世界はまぁ居心地は悪くにゃいんだけど、モテすぎちゃうからにゃぁ。これ以上ふえるのはさけたいところにゃんにゃけど」

「あぁ、未だウィーカをファミリアの一人にしたいって言ってくるやつがいるのか? 今度会ったらガツンと言っておいてやろうか」

「ははは、いいですね。元マスターに真正面からがつんと言える気概があるとは思えませんけど」

「言質はとったよ、後輩クン。噂をすればなんとやら、だ。早速新たなライバルがお目見えのようだ」

「??」


あえてぼかして呟いたことで。

案の定勘違いしたマーズが人の気も知らずそんなことを言いつつも、あってないような力こぶを見せつけてくる。



この世界へやってきて歌っぽい能力を得たことで、マーズ本人はウィーカやクロだけでなくありとあらゆるものと意思疎通ができるようになって。

クロ自身は待望の人化(魔導人形なマーズによく似た黒髪の美少女)ができて。

カーシャはこの世界の不思議能力で、素材を生み出せるようになって。

ウィーカ自身は、父のとっておきである『猫の七つわざ』を使えるようになったわけだが。


そんな中でもマーズは、お約束で自覚はないが、この世界の人々にもおおいにモテた。

それこそ老若男女、犬猫鳥兎限らずに。


何でも、この世界の歌の中に出てくる理想のヒロインそのものらしく。

現在のカーシャのように身体に引っ張られて本当にヒロインになってしまって。

このままこの世界にいたら、巌のごとき頼もしさを。

終の棲み家と決めた逞しささえ失ってしまうのではないかと危機感を覚えてしまったのだ。




故に、発破をかける意味合いも兼ねてこの場所に、そんな言葉がこぼれたわけだけど。

ウィーカが終の棲み家で惰眠を貪ることを邪魔してくるライバルが、また現れたらしい。




「おぅおぅおぅ! 当初の目的忘れるくらいやっべぇのがキターって思ったら女の子と小動物ばっかりかよ! ……まぁ、見た目なんて関係ないがな! オレは! オレより強い奴に会いに来た!!」



言葉面だけ見ると、まったくもってその見た目と似合わないのに。

いつも近くで見ていたような気がして、妙にしっくりくる。



「マニカ……じゃない?」


そこにいたのは、カムラルの乙女を幻視する、ある意味で呪われし凄絶なる美少女であった。

呆然と呟くマーズ。

まったくもって隠しもしない、暴風のようなこの世界の力の源の余波を受けて、クロとカーシャは自然と身構えて。


彼女の目的が、十中八九強さを秘めたマーズであると確信したウィーカは。

置いてきた負い目のせいで下がり気味なマーズを必然的に守るような形となって、たたっとそんな蓮っ葉かわいい少女の前へとまろび出て。




「ほほう、いい度胸にゃぁ! このあたし(のかわいさ)にかにゃうと思うのならば、存分に挑んでみるがいいにゃ!」

「うっ、これはぁっ。確かにすっげぇ強敵かわいいだぜぇ! 激ってきたぁ!!」



そんな、どこかずれたやり取りが始まりの合図。


故郷から遠く離れた、未だ太陽が色つかない、青空冴える世界で。


一番かわいいを決める戦いが始まるのであった……。



     (第157話に続く)









次回は、4月21日更新予定です。

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