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第141話、転ばない三人組の頭脳担当は、正真正銘空前絶後の天才児(自覚なし)



SIDE:ムロガ



やる気満々なリアータにお姫さま抱っこされるがままに何処へともなく飛んでいってしまう勢いで。

実際問題ドラゴン化が解けたばかりで疲労の溜まっていたミィカが抵抗むなしくされるがままになりかけていると。

ムロガに、今ちょっと調べるからちょっと待って欲しいと止められたことで事なきを得る。



「リアータさん、ちょっと焦りすぎだって。まぁ、あるべき役目を奪われかねない気持ちは、分からなくもないけどさ」

「あっ、ごめんなさい。ムロガさん。ミィカさんも。そうよね、こうやってミィカお姫様を抱き上げる役目は私じゃなくて愛しの王子様の方がいいわよね」

「ふう。やっと地に足がつきました。……っといいますか、そのような役目を誰かに求めたことはありませんが。まぁ、ハナ姫さまにやってもらうのは色々と面白そうですがね」

「ふふ。ほんとにミィカさんって、ハナさんのことが好きなのね」

「何を当たり前のことを。姫様に嫌う要素など一ミリたりともないでしょうに」

「あー、うん。それは正直否定はできないわね。私としてはそこにミィカさんも入っているけれど」

「……っ、さっきからリアータさん、私を照れさせようとしてません?」



引き続き二人がそんなやり取りをしている間に、ムロガは早速とばかりに自前のアイテムストレージと言う名の橙色のリュックからひとつのマジックアイテムを取り出した。

それは、黒光りしている、少し大きめの上下に開くタイプの本のようなもので。



「あら? そのリュックって。どこかで見たような気が」

「注目するのそっち!? まぁ、それも分かるけども。マニカさん……じゃなかった。ヴァーレスト家のものが、カムラル家のものに有効の証として贈った初めのアイテム、その複製復刻品だからね」

「そのようなドヤ顔しつつも手の動きが見えないのですが。さすがですね」



色々言葉を言い訳のように並べ立てつつも、結局ムロガはマーズからもらったものだって自慢したかっただけなのかもしれない。

その事に気づきつつも、二人の反応は対照的であった。

リアータの方は、自分ももらったのあるわよと言わんばかりで。

ミィカの方は、あからさまに話題を逸らそうとしていて。



時間もないし、ムロガとしてもその辺りを深く突っ込まれるのは避けたいところだったから。

こうやってあくせくしていながらも、リアータが心配しているように、やっとこさ目的の場所へ辿り着いた時には何もかもが終わっていたという、今の今までの純然たる事実結果をも考えないようにしてハナのいる場所、正確にはカムラルの杖、フレンツ製、タイプ【アーヴァイン】がある場所を割り出すことにする。



「それってムロガさん家の商品?」

「あ、ううん。これは試作品っていうか、僕がほとんど趣味でつくったようなものなんだ」

「趣味、ですか。ひょっとしなくてもムロガさんって物凄い天才なのでは?」

「はは、まさかぁ。持ち上げすぎだってぇ」



まだ名前すら付いていない、【ヴルック】めいた黒の本。

元々は実家のマジックアイテムや、自作のがらくたを分かりやすくまとめていつでも閲覧できるようにしたもので。

そこに、ライバルにしてマジックアイテム開発の雄であるヴルック家の発明品のひとつである『キャメーラ』や、火の星の人と呼ばれる魔精霊の特性、魔道具使いの魔王と呼ばれた男の愛用品カードなどなど、いろいろ取り込んだ結果、大抵のことはそれひとつでできるようになってしまったというシロモノである。



傍から見れば、とんでもない未来を走っているように見えるだろう。

しかしムロガとしては、試作品などと言いつつも、実家で売っているマジックアイテムも含めて、それは全ては古代の遺物……ダンジョンによって発見された、用途の分からなかった骨董品を弄りまわしてできたものであるからして、言葉通りすごいことをしているなんて自覚は全くもってなくて。



それが、何であるのか。

知っているものが少なくない過保護な親世代に見せたのならば、こぞってムロガを。

例えばマーズたちの父あたりならば、是非にウチの娘にと変態的挙動で迫ってくること請け合いで。


気づかなければ良いを地で行く感じで、ムロガは何でもないことのように黒の本に【セザール】の魔力で世界地図を浮かび上がらせて。

ガイゼル】や【ヴァーレスト】の魔力を使って、ハナと月型の杖がおわすであろう場所を割り出してみせる。




「あれ、けっこう時間かかったね。……って、遠っ!? ユーライジア・スクールの敷地内どころか、大陸からも出てるじゃん!」

「これって、世界の地図ですか? こんな大陸間、真ん中に島があるんですね」

「嘘でしょう? 姫さまから目を離したのはそう長い時間じゃなかったはずですのに」

「なになに、ええとこの島は『ショウヘイバ』っていう名前だね。一昔前まではユーライジアとラルシータを結ぶ線路の経由駅だったみたい。『キマグレイン』が今も動いていたとしても、そんなに早くは移動できないと思うけど」

「あ、でも『虹泉トラベル・ゲート』は? ここにはないのかしら。スクールの『移動教室』でこの島行きのものは見たことなかったけれど」

「うーん。確か『虹泉トラベル・ゲート』って魔導機械でありながら、魔精霊の一種だって説もあるんだよね。だから、ふらっと動き回っている野良的存在がいてもおかしくはないと思うけど……あ、そうだ。『ショウヘイバ』島への行き方、黒の本で調べればいいんだった。ちょっと待ってて」



そんなことまでできてしまうと言うのか。

ありとあらゆるマジックアイテムの坩堝、パンドラの箱めいたそれに、リアータもミィカも感心を通り越して恐れのようなものを抱いていると。

それすら気にして気づいた様子もなく、ムロガはあっさりその答えを調べ上げてみせて。




「ふむふむ。『シャレード』や『ズイウン』、『キマグレイン』みたいな移動系魔道具の最高峰か。その名も『ブルーエッグ』。……所在地は、と。今はええと、ラルシータの『ライジア病院』地下に置いてあるみたいだね」

「それじゃあ、まずはラルシータ行きの『虹泉トラベル・ゲートね』

「……急ぎましょう、とにかく時間はありませんから」


でも、今はハナが側にいない一大事だったから。

遅きに喫すだとか、マーズの取り巻きズッコケ三人組だなんて到底言えそうもないとか。


それら全てをおいて。

リアータの言葉通り、まずはラルシータ行きの『虹泉トラベル・ゲート』を目指すのであった……。



     (第142話につづく)








次回は、1月25日更新予定です。

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