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第140話、もう遅いだなんて関係ない、言わないけれど、大好きだから会いにいく




SIDE:ミィカ


世界を創り維持せんとする魔精霊、その長。

奇跡的な運命により、そんな両親を親に持つミィカは。

生まれながらにして、その身一つで自身の膨大な生命力、魔力を支えきれるものではないと理解していた。



ミィカの母がそうであったように、その大きに過ぎる力を固めるようにして、所謂内なる世界に『もうひとりの自分』が生まれた。

闇色の魔力纏いし、黄金のドラゴン


とはいえ、かの有名な複数の魂を持ちし一族、『レスト』とは違い、生まれたそれに確たる意志はなかった。

ひとたび外へ出たのならば周りに破壊を散蒔くからと、溜め込んで溜め込んだ末にできたもの。

正にもうひとりの自分、【エクゼリオ】の……魔王と自称し呼ばれるに相応しき第二形態といってもよかった。


だがそれは、ミィカが成長するたびに強大になっていって。

あるいは『レスト』族のように、分かたれる方法もなく、それを留め置き続けるための強靭な肉体をも持ち合わせてはいなかったから。

いつかの母のように、世界を恐怖に陥れる闇の竜となってスクールにも少なくない被害を与えていたことだろう。




しかし、ご存知の通りミィカにそのような事態は訪れなかった。

母の呪い……悩みごとがしっかり娘にも受け継がれていたことを憂いた父が、同じような悩み事を抱えていて共有できる友達をと。

幽玄の国サントスールへと旅し、見つけてきてくれたからだ。



サントスールの姫君の、ずっと側にいてくれる門番さんか魔法使い、あるいはメイドさんの募集。

(その三つの職業? 指定なのは、昔からのお約束、物語の決まりごとのようなものらしい)

両親同士は知り合いであったから、ある程度はお互いの事情は折込み済みで、出会うべくして出会ったのだろうが。

出会ったその瞬間から、ミィカの面白センサーを激しく反応させてやまなかったハナのメイドとなることにはまったくもって違和感はなかった。


不幸や呪いなどといったマイナスのイメージのつく力を吸い込み引き寄せようとするハナの『厄呪ダークサイド』。

それらが近づいてきて、周りだけでなくハナ自身にまで影響を与えかねないのを、ミィカの竜の元ともとれる闇の魔力を。

側にいることでかわりに注ぎ与えることで、お互いウィンウィンな関係を保ち続ける。



それを置いても生涯近くにいられるだろう親友。

巡り合わせてくれた父への感謝はもちろんだが。

(そのかわり、至極似たもの同士で母には苦手意識があったりする)

ハナに対してそう思っているなんてことは。

色々と誤魔化して、けっして口にすることはないだろうが。



おかげでミィカは、ハナが少しばかり離れた隙に闇の黄金竜へと成り代わってしまっても。

そんなミィカを『げっと』せんとする姫さまをおちょくれるくらいには自分を……余裕を保てていた。


だけどその余裕も、ミィカが目を離した隙に。

ミィカにも黙って自己犠牲めいた何かを成そうとしているハナにあっさり崩されることとなる。





「くっ、この面白姫さまウォッチャー上級者である私が、絶対面白いことに巻き込まれているに違いない姫さまを見失うとは、何たる不覚っ」

「っ、大丈夫ミィカさん。変身解除したばかりで体力失ってるんじゃない?」

「すみませんリアータさん。支えていただきまして。申し訳ないついでにこのままハナ姫さまのもとに運んでいただいたりしませんかね」

「あっ、うーん。私もハナさんのこと見失っていたしそれはいいのだけど、肝心のハナさんの場所は分かるの?」

「リアータさんは真面目でやさしいですね。普段ならある程度離れていてもあの大きにすぎるお顔……いえ、魔力ですからね。かくれんぼなどしてもすぐに見つけられるのですが、どうやら姫さま、姫さまのくせに『厄呪ダークサイド』を隠すことを覚えたようでして。これが面白い……困ったことにさっぱり居場所が掴めないのです」


あるいは、実はこっそり初めて出会った時に召喚契約を済ませていたから。

ハナが呼んでくれればどれほど離れていても居場所が分かるのだが。

面白いと言う理由でそのことはハナは知らされていないから(故にあんなちんまい身体で小山ほどもある黄金竜に立ち向かう体であったのだ)。

どうしようもない状況に陥って、誰でもいいから助けてくれいなどといった流れにならない限り期待薄であろう。


そのまま、真面目で優しいリアータがミィカの要求通り両腕でお姫さまだっこするなり、おんぶすりなりでミィカを運ぼうとするのをやんわり断りつつも。

はてさてそれならどうするべきか。

一瞬浮かんできた姫さまとの仲を引き裂きかねない邪悪な赤いのをどこかへぽいっと放りつつ。

最終手段として、滅多に頼るものではないとは言われていた【リヴァ】魔法使いというか、時魔法そのものともいってもいい父に助けを請うべきか。


なんて思っていると。

そのまま翼もないのにミィカと同じく生まれ持った力もってあてもないのに飛んで行きそうなリアータと。

やんわり逃れようとするも見た目より力が強くて為すべなくお姫さま抱っこされそうになっているミィカに対してそう言えばとムロガの声がかかった。



「あ、そうだった。大きなゴールデンドラゴンさんに挑むのに装備なしじゃ格好つかないってんで、うちにあった宝物のひとつハナさんに渡してたんだっけ。月型の魔宝玉のついた杖でね、魔精霊さんに好かれやすくなって、魔法も使いやすくなるんだよ」

アーヴァイン型の杖ですって!? そ、そそそれってもしかして月の器っ!?」

「うわっ、びっくりした。あぁ、そう言う呼び方もあるとは聞いてるよ。もちろん本物じゃなくてレプリカだけど」



それまで抱えていたミィカを手放す勢いでにじり寄ってきたリアータが言うには。

月の器などと呼ばれるマジックアイテムは、様々な理由あって世界、魔力そのものともいえる魔精霊たちが生涯を終えんとする時の終の棲み家とされるものらしい。

ムロガからすれば、年経た魔精霊が棲まうマジックアイテムは、その効果効力が格段に増すくらいの判断で。

リアータからもたらされた新事実に二の句がつげないでいると、ようやっと解放されたミィカが勢い込んでムロガに問いかける。



「そっ、それで!? もしかしてその杖を姫さまがお持ちであるのならば居場所が分かると?」

「う、うん。レプリカだし、住んでる魔精霊さんはいないけど、けっこう値の張るものだからね。盗紛失対策に居場所が分かるようになっているんだ」

「さすがムロガさん。それじゃあ案内お願いできるかしら、急ぎましょう!」

「え? ち、ちょっ。だから先ほどのは冗談ですってぇ!」



あるいはクルーシュトたちと同じように。

過保護にも出番を奪われ続けていたからなのか、リアータは大分張り切っていた。

せっかく離れたのにあれよあれよという間に再びミィカは抱き上げられて。


それはそれで、お互い何だか似合うなぁと。

苦笑するしかないムロガなのであった……。



      (第141話につづく)








次回は、1月20日更新予定です。

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