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第138話、似た者同士で自分のためといいわけしながら、邂逅し




SIDE:マーズ



その、地獄の底から響いてくるかのような、声と呼ぶにも烏滸がましいモノが聞こえてきた瞬間。

マーズは、マニカが知らずとも自身の内なる世界へと身を隠していたもう一つの理由でもある、異世界からのお邪魔虫を超えうる、カムラル家に伝わる生ける屍的ストーカーの存在に気づいて。

というか、ほんの少しでもその虚ろな相貌にマニカのことを映したくなかったから。


信頼に足るルキおじさん……と言うよりも、ユーライジア・スクールのさいごの校長先生にして、嘘っぱちの虚勢扱いされているルッキーとは違って、【リヴァ】の根源と目されるミィカパパにマニカたちみんなことを任せると。

マーズは、身体をマニカに託しつつ、魂の姿となって文字通り飛び出していた。




(ええと、なんだったっけか。万魔じゃなくて幻魔の下っ端? かわ……護るべき相手じゃねぇから名前までは覚えとらんな)


今は昔、親世代の『ステューデンツ』たちが大いに活躍していた時分。

敵対していた幻魔率いる軍の力あるもの……団長の一矢。

カムラル家だけでなく、セザール家やオカリー家にも因縁のある、魔人族の男。

名前は覚えてないが、同じ魔人族ということもあって、今はそうでもないとは言え魔人族のイメージを地の底まで落としたはた迷惑な存在のことは自然と認識していた。



(確か、ショウヘイバの島だったよな。きゃつの棲み家ってやつは)


そんな魔人族のイメージに相応しいと言えなくもない、地獄を揺蕩う御霊そのものであるマーズ(実はまだちゃんとその見てくれを確認したことがなかった)は。

メラメラと闇の炎の力を一層増しつつ、朧げながらも覚えていた情報……

そうは言っても、『レスト』族の『分割』、『分離』に必要な命を脅かしかねない強者の存在はマークしていたので。


マーズは、もうすでに解決してしまって(元に戻っている)いるであろうミィカ……【エクゼリオ】のドラゴンの代わりということにして。

その、根源複数人にすら嫌われてしまったらしい、ある意味勇者な同族(一応半分だけれど)の秘密基地目掛けて飛んでいくことにする。




それは、ユーライジア・スクールやラルシータ・スクールなどのあるこの世界に大きくわけて四つあるという大陸のほぼほほ中心とも言える場所にある、絶海の孤島。

『ショウヘイバ』と名のつくその場所は、かつてはラルシータとユーライジアをつなぐ『キマグレイン』の海底線路の中途……同名の駅の名がつくダンジョン……文字通りの最後の砦として徹底抗戦するための魔導機械などがあるという噂の、色々な意味でいつか行ってみたかった場所である。




(ある意味千載一遇のチャンスってな。意外と一人になるヒマ、なかったもんなぁ)


けっして誰かの為と言うわけではなく。

あくまでも自分のため。

そんなスタンスを保ちつつ。


何も言わず飛び出してきてしまったマニカになんて言い訳すべきだろうかと考えつつもマーズは。

結局空を飛ぶなり移動魔法や魔道具を使うなりしなければ辿り着けない場所へと。

ヒトダマとなって向かうといった、最も想像しにくい方法で向かっていると。


 


(……んんっ? あ、あれは。まさか、嘘だろう!?)

 

上空から俯瞰するようにして迫り向かったのがよかったのか。

ルッキーやマニカごと置いてきた、間違いなくそこにいたはずの人物。

島の木々の中でも目立ちに目立つ大きなお顔……ではなく。

荒ぶる亜麻色の髪と、だだ漏れな【エクゼリオ】の魔力とは似て非なる闇の気配に目ざとく気づき思わず声を上げてしまう。 




『ハナ、ハナじゃないか! お、おまっ、そんなとこで何してんだよっ!!』


いかにも主役級な活躍をしてくれるであろう闇のドラゴンと化したミィカを『げっと』チャレンジしていたのではなかったのか。

初めて出会った時に本人同士預かり知らぬところでお互いのお父さん主導のもと契約をすませていたから本当はそんな必要はそもそもないのだとは、マーズには当然分かりようもなく。

そんなミィカと同じように近しいものか契約を済ませていなければ言葉も届かないことにもお互い気づかぬままでそう叫ぶマーズ。



その声がどのように届いたのかは当のハナにしか分からないのだろうが。

しかし、マーズの声がしっかり届いたのは確かなようで。

崖下を見下ろし何やら観察していたハナは、ハッとなって顔を上げると。

マーズがハラハラするくらい落ち着きなく、海へ落っこちそうになりながらもマーズに気づいたらしくブンブンと手を振りあげて……ではなく。

一体どこから持ってきたのか、月型の魔宝玉を据えた杖を掲げぶんぶん振り回していた。


生まれたての魔精霊のごとき状態であるからこそ、

一流のヤドカリのごとくでおぉ、中々に良い家があるではないか、といった感覚に陥って。

今はないはずの身体がむずむずしたけれど。




「相手にとって不足なし! 受けてたとう、なのだぁっ!」



マーズの声が聞こえているのかいないのか、何か勘違いでもしているのか。

なんて思いつつも、ハナはなんだかんだで全部わかっていて、そんな台詞を口にしているような気もして。



『その意気やよーし! お邪魔するぜぇぇっ!!』


あまり自分らしくないテンションの上がりっぷりを自覚しつつも。

マーズはそう勢いこんで、ハナのもとへ……正確には、その月型の魂の器へとも言うべきものへと突貫していって……。



「って、ぐわっ。しまった! じめんなかったああぁぁぁーっ!!」


すぐさま聞こえてきたのは、ハナのそんな叫び。

マーズはすぐさまはっとなって我に返って。

新たなるホームを確認する時間すらなく。


すわ早速出番か、とばかりに。

呼び出しに応じる従属魔精霊のノリで再び飛び出していって……。



       (第139話につづく)









次回は、1月10日更新予定です。

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