表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/199

第133話、エピソード7、『髑髏と赤オニと万魔の姫君』



Girls Side




ミィカの父、巨人族のごとき威容を誇る【リヴァ】の魔精霊に凄まれ迫られても。

元より気の置けない友であったからなのか、ルッキーにはちっとも影響がないらしく、むしろ飛び上がってそのままふんぞり返る勢いで。


「ちょっと、冗談じゃすまされないわよっ、もうっ!」


同じく旧友にして腐れ縁であるらしいミィカの母……マイカが、それが癪に触ったらしく怒り心頭でルッキーへと向かっていく気配がする。



恐らくそこからは。

もったいぶった挙句、【ルフローズ・レッキーノ】の小悪魔が引き起こした悪戯、お節介が詳らかにされていく次第であったのだろう。


しかし、マーズやハナがいないと分かったことで、とりあえずのところ必要がなくなったと判断したらしく。

スイッチが切り替わるみたいに元の姿を取り戻したミィカは。

そんな母たちの姿やりとりを見守るまでもなくその場を飛び出していた。



「おぉぉいっ!? ちょっ、ちょっと待っ」


御託……悪戯小悪魔おっさんの自供話なんて後回しだと。

いつもだったらとっくの間にあの無性に腹の立つドヤ顔を浮かべたマーズの姿がないことは気になったが。

まずは何よりハナの無事の確認である。




「くっ、私としたことが、少しばかり目線が変わった程度で姫様を見失うとはっ」


同年代の子達と比べれば一回りもふた回りもちんちくりん(自身の事は棚に上げて)なハナではあるが。

そのもふもふの化身のごとき亜麻色の髪も含め、彼女はいつだってどこにいても目立っていた。


その存在感、あらゆるものを引きつけてやまないオーラめいたものは、従霊道士にとってみても理想的な才能であっただろう。


それこそが、ハナの……サントスール家に代々受け継がれしもの、『厄呪ダークサイド』。

ミィカは、それが不運や負の感情を引き寄せ集めるだけのものだと思っていた。

事実、【エクゼリオ】のドラゴンが表に出てくるための陰の気、魔力を側にいることでハナが吸い取っていたわけだが。

ハナ自身は、無意識かそうでないのか、その呪いが良いものも悪いものも誘引する力であると理解していたのかもしれない。



ミィカは、自身が大きくなりすぎてしまったから見失ったのだと自分で自分を誤魔化していたが。

あの時の瞬間、今の今までずっと薄桃色の幕に守られていた世界が氷の小悪魔により開かれた時。

マーズの……言うなれば肉じゅばんめいた護りから一時的にせよマニカが解き放たれた時。

ハナはきっと、『破邪結界』によって守り隠さなければならないその相手に気づいたのだ。



ミィカ自身、その時は自身のことでめいっぱいですぐには思い出せなかったが。

いなくなってしまった……きっと間違いなく自らの意思で出て向かっていったハナは。

エクゼリオ家にとってみっても不倶戴天な存在に気づいたのだろう。

その類まれなき従霊道士として才能により、その息づかいを聞き取ることができたのか。

邪そのものである魔力を感じ取ったのか。


まさか、自分が身代わりに、矢面に立つなどといった許されざる腹積もりではないはずで。

ハナのことだから、もうとっくの間に仲間になっている闇のドラゴンをも超えるやばめの大物が現れたのだと。

今度こそボクがそのすんごいのを『げっと』するのだと、駆け出していったに違いなくて。




「とはいえ従魔の力を借りなければちんまい姫様に追いつくことなどよう……っ!?」


才能溢れるとは言えど、姫さまは子どもっぽいどころか子どもそのものなので。

一旦目標を定めたのならばそれしか目に入らなくなって皆の力を借りようという考えには至らないはず。

故にすぐに見つけることができると思っていて。

やっぱりミィカ自身が元に戻ればそんなハナとほぼほぼ変わることはなく。


闇の龍と成っていたことの反動、魔力と体力が著しく減退していることの自覚がなかったミィカは。

頭が重いから前のめりに転ぶことが多いのです、気をつけてくださいよとハナに日頃から口にしていたものが自分に返ってきたことに今更ながら気づかされて。



あっという間に迫り来る白一面の地面。

それにより滑ったのもあったのだろうと思い立った時には、来るであろう衝撃に備えて目をつむるくらいしかできなかったが。




「危ないっ」

「クロ、【ヴルック・ジェット】だ!」

「かぁっ!」


申し訳なくも一つのことにしか目に入らなくなっていた子どもはミィカ自身だったらしい。

続けざまに背後から聞こえてくるのは、リアータとムロガ、クロの鳴き声と【ウルガヴ】と【ヴルック】の魔力。



「ぐゅむぅっ」


その瞬間感じるは、前面に感じるスライムのようなやわっこくて冷たい感触と、背中に感じる思ったよりももふもふなもののけの感触。


予想していたものとは違ったからなのか。

思わずハナが上げそうな声を上げてしまって穴があったら入りたいと恥ずかしがりつつも。

それらと一緒になってミィカはごろごろと転がっていってしまって……。



    (第134話につづく)








次回は、12月14日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ