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第128話、真の姿は、こんなこともあろうかとネタバレしていたから



Girls SIDE



無意識なのか、召喚士にして武闘家の一面もある両親の賜物なのか。

あるいは、喫緊の火事場の馬鹿力的に身体能力向上の魔法を扱ったからなのか。

ムロガとリアータが追いついてくるよりも早く、ハナはユーライジア・スクール内にあるエクゼリオ邸……通称魔王城へと舞い戻っていた。




「……ミィカっ」


魔王城の、ミィカの父専用の入口だと思われていた大きな大きな門。

それは開け放たれ、それをほとんど塞ぐ勢いで、丸みを帯びた菱形の集合体……黄金色が支配している。

夥しく連なり目を焼くそれ……鱗は、門扉のその向こうの闇に続いていた。

竜というよりも、龍という言葉が相応しい、長い長い身体。

ハナが夜天を見上げよといった位置に、その体躯にそぐわぬ小さな手を添えるようにして。

実に勇ましくかっこいい、もちろんハナも憧れていた闇のドラゴンの顔……顎下が見えた。



「ミィカっ!」


ハナは、そんな変わり果てた比翼ともいえる、家族同然の名前を確信もって二度叫んだ。


「みぃ……わぶぅっ!?」


三度その名を呼びかけたところで。

エクゼリオ】の黄金竜はしかとハナの存在をとらえる。

宝玉、輝石にしては余りにも大きい、翡翠色の瞳。

大きさを考えなければ、それはいつも見ていたミィカのものに間違いはなくて。




何らかの理由があって、溢れ暴走する『もうひとりの自分』の魔力に、共有する身体が耐えられなくなって人格、魂が交代する。

それは正に『レスト族』の魂の入れ替わりや、『虹の迷い子』たちが負う宿命と変わらぬもの。



ミィカが、ハナのメイドとしてのオーディションにやってきた時にもアピールポイントとして腹立つ顔で語っていたそれ。


『私の内なる世界には、でんせつやまぼろしと謳われるドラゴンがいるのです。今私を雇えば厨パーティが組めてお得ですよ』


故にハナはすぐに目の前の闇の城にふさわしい黄金竜がすぐにミィカであると気づけたし、その大きな瞳にいつもの通りの上から目線……ハナから言わせれば小生意気な意志が確かにあったから。

それじゃぁ今のうちに『げっと』してやろうと一歩踏み出したところでの突然の風にハナはころころと吹き転がされてしまう。

なにをするだぁとめげずに起き上がって文句とグーをぐるぐるでぶつけに行こうとして……



『ふははははーっ、ちっちゃ。姫さまのなんと矮小なことか。これを期に私と姫さまを同列ちんまいコンビと一括りにするのは、改めてもらいたいところですね』


それがミィカの吐息鼻息、ドラゴンの咆哮であると気付けなかったのは。

溢れるほどに従霊道士の才能があって、魔物魔精霊とのコミュニケーションなんぞお茶の子さいさいなハナだけであった。


「いややっ、それはちょっと反則だろう。それがいいならボクだってアピのちから借りてでっかくなれるからな」

『くすっ、他力本願甚だしいですね。そんなこと言ってへたれな姫さまには無理なのは分かっていますよ』

「むぅ、わかってるのだ。言ってみただけなのだ」


従霊道士の能力のひとつに、契約した魔物魔精霊に憑いてもらったり色々してその姿を借りる方法があるのだが。

父に教わったその方法は、ハナにはあってないと自分自身で分かっているので。

ミィカの言うとおり当然それは虚勢であった。



その一方でハナは、転がされぬようにこらえつつもあまりにいつも通りなミィカに安堵していた。

実際の理由は違うのだが。

ハナから漏れ出る『厄呪ダークサイド』を吸い取り溜め込み続けたおかげて溢れていっぱいになってしまったから今の状況があると思い込んでいるハナにしてみれば余計に。



「しっかし、でっかぃなぁ。でかすぎるぞ。魔精球に入れるのか? せっかくだし、今のうちに試してみてもいいか?」

『今の今まで姫さまと契約しないと突っぱねていたのは、この時のためですからね。どうぞどうぞ、試してごらんなさーい』

「よっし、それじゃいくのだぁっ、ふんふらばぁっ!!」



とにかく急がなければと。

何かに押されるようにして、ハナはムロガの言っていた神、根源クラスの存在と契約する時に使う黒と黄色模様の魔精球を振りかぶって、ミィカに向かって放り投げる。

契約だけならそもそも実は魔精球を投げつける必要はないわけだが。


気が急いていたハナは。

とにかく、ミィカをどこかに隠さなければと思っていて。

こんな時のためにとの投球練習の賜物で、気の抜ける叫び声の割にはしっかり弧を描いて極みな魔精球をミィカにぶつけることに成功する。



「どうだぁっ、なのだっ!」

『……? 何かしましたか? 何も起こりませんが』

「あれぇっ!? はじかれっ、あーっ! つかってないのに消えちゃったのだぁ!?」

『あぁ、姫さまがっつきすぎですよ。確かあれです。『げっと』するのにはその力を示さなくてはいけないのですよね。ぶっちゃけてはっきりと言ってしまえば、ある程度は弱らせなければいけないんですよね。正直、ちびっころころな姫さまには到底不可能としか思えませんが。……やってみます?』

「ぬぅおぅぅっ!?」



言われて思い出す、『げっと』の際のルール。

今度はきっかりはっきりと、ミィカが鼻で笑ったのが分かって。


勢い込んでやったやらあと思いつつも。

それに、なすすべなくころころされてしまうハナがそこにいて……。



      (第129話につづく)








次回は、11月15日更新予定です。

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