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第124話、思えば初めて名のある彼は、豪放磊落な快楽主義者



Girls Side



ハナとムロガが、かわいくも頼もしい、『カムラル』シリーズの杖を『げっと』……使わないのならば使わせてくださいの精神で。

いざカムラル邸へと向かわんとすると、状況が、世界が一変していた。



カムラル邸は、スクール下町とスクールの間、四王家(ヴァーレスト家、カムラル家、ガイゼル家、エクゼリオ家の四家)に連なる者が棲まう場所にある。

厳密に言うと、まだスクールの敷地内ではあるのだが、それでも校舎や寮棟などのあるスクール内部に比べれば、セザール家が創り出し広めたと言われる破邪の結界の効果は少なめらしい。



そうハナが思ってしまっても仕方のない環境の変わりよう。

それでも、降り始め積り始めであるのか、白い化粧をまとった程度ではあるが。

少なくとも目的地であるカムラル邸のある敷地までは続いているように見えて。




「ううー。あったかい。バイさん、ありがとー」

「そう言えばバイははじめ、いいんちょのこと狙ってたんだったな。……だからなのかなぁ」

「ヒヒィン!」


そんなわけで、防寒用のフードをムロガが貸してくれたお返しに、ハナは『げっと』した魔物、魔精霊の中でもあったかふかふかの黒いたてがみを持つバイを召喚していた。


ユニコーンは清らかな乙女にしか心を許さないだなんて話は聞いたことがあるが、バイコーンの方はどうなのだろう。

逆ではないのだろうか。

とはいえ、バイもムロガもそんなこと気にもせずにもふもしあっているので、ハナも気にしないことにして。

二人でバイの背中にまたがりつつ、歩を進める。




「あ、リアータさん。リアータさんがいるよっ」

「ほほう。実にこの白い景色が似合うな。似合いすぎるほどに」


雪の精か、雪の女王か、はたまた雪……『ルフローズ・レッキーノ』の根源か。

遠目から見てこちらに背を向けているリアータ(ムロガはリアータであると何らかの理由で確信しているようだったが。

姉妹や家族がたくさんいるのにも関わらず、契約のおかげでハナも気づくことができたので良しとしよう)は、とてもこの世界に似合っていた。

ハナが一瞬そう思ってしまったように、この世界を彼女が生み出したのだと錯覚してしまうくらいには。



「いやいやっ、リアータさんは主の属性【ウルガヴ】と【セザール】でしょう? 他にもあるらしいけど。お祭り好きな【ルフローズ・レッキーノ】さんたちなんで、最も対極じゃないか。そう見えるだけだって。おーい、リアータさーん!」


しかし、物怖じせずにムロガがそう声をかけると。

こちらに気がついたリアータは、何事もなかったようにこちらに気づき、二人の名前を呼びつつ駆け寄ってくる。


その瞬間。空は晴れ陽が射したものだから。

おぉーと二人で声を上げるとともに、ハナとしては先ほど一瞬でも思ってしまったことが恥ずかしいくらいで。



「どうしたの? 二人もこの雪景色を調べに?」

「うん。当初の目的は違うんだけど、どうしたって目に入っちゃたからね。そう言うリアータさんも?」

「ええ。この雪の……世界? おじさまの魔力を感じ取って、何だか気になったから」

「おじさま? 【ルフローズ・レッキーノ】のませいれーさんにおじさんがいるのか?」


ちなみに、当然ながら一緒に行動していたので、ムロガはもちろんリアータもいつもハナのそばにいるミィカがお休みしている事情は知っていた。 

リアータ的には、姫さまなハナが外出するためにムロガが付いているように見えているのかもしれないが……。



「そうなのよ。血が繋がっているわけじゃないけど、小さい頃よく遊んでもらったわね」

「ほうほう。ボクにとってのガイアットおじさんみたいなものだな」

「【ルフローズ・レッキーノ】ねぇ。その方ってもしかして、ルッキーさん? 昔はカムラル家……じゃなくてヴァーレスト家についてたって言う」

「あら、ムロガさんも知っているの?」

「うん。うちもカムラル家に仕えている一族だからね。お父さんお母さんはよく知っているんじゃないかな」



氷の根源、ルフローズ・レッキーノの一子、ルッキー。

根源そのものが現世へ降りてきているとも言われている。

その見た目はミエルフとよく似たダークエルフのごとき見た目だが、その姿はいわゆる魔女の使い魔にありがちな銀髪赤目な小悪魔のごときで。


そもそもお祭りごとが好きな【ルフローズ・レッキーノ】の魔精霊は。

間断なくおしゃべりしていて、その蝙蝠のごとき羽で常に飛び回り、マスターと慕う存在にちょろちょろ付いて回るような感じなので。

実際は、人型……よくて神型の魔精霊であろうと判断されているが。

そのような世界そのものに近い存在が、ハナの『厄呪ダークサイド』程度にやられてしまって、

環境を変化させてしまうようなことなど、あるのだろうか。



ハナは、これも何かの縁というか、そのうち話すつもりだったからと。

厄呪ダークサイド』を抑えてくれていたミィカのことも含めてリアータに説明すると。

彼女は、なるほどとばかりに頷いて見せて。




「ふぅん。ミィカさんち、エクゼリオさんちも関係しているのね。ルキおじさん、ミィカさんのご両親とも関わり深いみたいだから、何かしら影響を受けてしまったのかもしれないわね」


その見た目通りの子ども……ではないのだが。

そのへんをふらふら飛び回って拾い食いでもしてしまいそうな危うさがあるものだから。

笑えそうで、笑えない、とばかりに。


ハナたちは頷きあって。

改めて目的地。

偶然なのか必然なのか。

スクール内以外で、ルッキーのいそうな、いるであろうカムラル邸へと向かうのであった……。


SIDEOUT



     (第125話につづく)









次回は、10月20日更新予定です。

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