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第123話、ぼくっこふたり、物語の始まりのようにましろの世界へ



Girls Side



「ええと、ハナさんはハナさんにあった武器が入り用なんだよね?」

「あ、うん。そうなのだ。がっこにやってくる時、かぁさまには服とかアクセサリーとか、武器もいただいたんだけども、かぁさまのえものってトゲトゲがついたりしてる『なっくる』なのだ。装備できないこともないんだけど、その、ボクってただでさえちっちゃいから、長さのあるやつが欲しいなって」




ミエルフとオクレイ二人の出番……と言うか、オクレイとの従属魔精霊契約の手続きが終わったところで。

もういいでしょうと。

気合で耐えているとはいえ、ハナの『厄呪』の影響がないわけではないことを、ムロガは鑑みたのだろう。


ハナに、そんなことを感じさせないどころか、用が済んだのならさっさとどこかへいきなさいとばかりに二人を追いやっているのを目の当たりにして。

大分ハナ自身引きつつも、本来の目的……実はそれも、自分自身で何故して必要に駆られているのかと内心で首をひねりつつも、ムロガにそんなことをぶっちゃけつつもさっそく注文してみる。




「なるほど。『従霊道士』御用達の装備品ならやっぱり杖かなぁ。確かハナさんのお父さんもそうだったよね? あとは、仕込み錫杖とか、弓矢とかが定番だよね」

「そう、そうなのだ。父さまの杖ってばすごいのだ。虹色の綺麗なのががめんいっぱい埋め尽くされるくらいになるのだ」


ハナが垣間見たのは、仲間内同士の演習にもならない戯れ合い程度のものだったが。

父の頼もしくも美しい仲間たちの前に突如として出現した色とりどりの魔力による光球は、よくよく目に焼き付いていて。

やっぱり杖が、魔力を発動するための宝玉も、父が持っているような大きくて可愛いやつがいいと。

続き身振り手振りでおねだりすると、ムロガははっと我にかえったかのように声をあげて。




「あっ、うーん。『カムラルの杖』シリーズだよね。うちでも少しは扱っているけど、メインで扱っているのはヴルック家だし、ハナさんのお父さんが使っているくらいグレードが高いものなら、もしかしたらマーズの家、マニカさんちかな。そっちの方があるかもしれないね」

「おぉ、あれってカムラルの杖っていうのか? マーズやマニカが持ってるの見たことないけど」

「うん、あれってハナさんが言う通り、かわいいを一番に考えられて作られてるからね。きょうだいで自分には似合わないっていうか、恥ずかしがっているんじゃないかな。お母さん世代でも有名だったからね、カムラルさんちのかわいいもの恐怖症というか、避けようとしてたのって」

「ふぅん? ボクにはよく分からないなぁ。絶対似合うと思うけど、あの『ハート』の形したのとか」

「そうでしょっ、僕も絶対映えると思うんだよねぇ、だけどマーズってば絶対装備してくれないんだよ。

だから、たぶんカムラルのお屋敷とかに使われずにしまわれてると思うんだよね。うちとかでそれなりなやつをわざわざ買うよりも、直接お屋敷にお邪魔した方が掘り出し物があると思うんだよね」




後々に聞いたところによると。

ハナの父が愛用していた、紫色のバラを象ったアメジストの宝玉付きの杖は、マーズやマニカの母から譲り受けたものらしい。


魂の色まで女性であると、どこぞの死の神に言わしめるくらいであった父には当然似合っていたが。

あのマーズやマニカの母であるのならば、その名がつくくらい、彼女たちのためにつくられたものであるのならばぴたりとはまる、よく似合うであろうことは、一目瞭然であるはずなのに。


どうして、ムロガが言うように、それから逃げるような行動をとったのか。

ハナには正直、よくわからなかった。

しかも、かわいいが極まれば極まるほど、そのカムラルの杖シリーズはその威力、魔力伝導効率、消費魔力からはじまって何もかもがいい感じになるというのに。



似合わないとか、恥ずかしいとか、そのような理由で装備しないだなんてもったいない。

どうしても使わないと言うならば、このボクが使ってあげようではないか、といった気持ちがあるが。


一体全体どのような了見で宝の持ち腐れ状態でいるのか直接聞かねばならぬと。

意気揚々と、ニコニコでスクールを出てカムラル邸へと歩を進めるムロガに、もれなくハナついていくことになったわけだが……。






「うわっ、え……えっ? ここってユーライジアだよね? アーヴァイン国じゃないよね?」

「おおぅ。まっしろけなのだ。っていうかちょっとだけ忘れてたのだ。『厄呪ダークサイド』のこと」

「ダークサイドって、【エクゼリオ】の魔法……とは違うんだよね。ミエオクコンビやマーズにはあんまり効いてないみたいだったけど、ハナさんに対して、異性のよこしまな感情を増やしちゃうってだけじゃなかったんだ」



自身を棚に上げて、ではないが。

異性……少年のよう、であるのに隠す気がもうないのか、それとも気づいていないのか。

やはり『厄呪』の影響を受けていない様子のムロガも、スクールの敷地から出た途端の真白一色の光景には驚きを隠せないようだ。

かくいうハナも、父の実家である、ユーミールと呼ばれる霊峰称えるアーヴァインめいた雪景色に驚きの声を上げるとともに。



スクール内ではどうやら、『厄呪ダークサイド』によって起こる不幸的なものがある程度は抑えられていた事に気づかされる。


まさか、自然にまで影響を与えるだなんて。

その自然が、12の魔法、魔力、魔精霊で構成されていると考えると、まぁ不思議ではないのかもしれないが。


外に出ることすら躊躇うくらいに世界が変わってしまうだなんて。

さすがに予想外ではあって……。



    (第124話につづく)








次回は、10月14日更新予定です。

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