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第118話、ふたりは比翼の鳥ならぬぽこぽこ姫さまコンビ




Girls Side




夫婦喧嘩と言う名の、ウィーカもこっそりお暇してしまいそうないちゃいちゃが始まったそのタイミングで魔王城を。

普通に正面玄関の脇に備え付けてあった、ミィカたち用であろう扉から抜け出さんとするハナは。

ほとぼりが冷めた頃にまた来るのだと振り向いたところで、それが【リヴァ】魔法なのか【ヴァーレスト】魔法であるのか微妙なところではあるが。

ふよふよと、どうみても風呂敷なお包みが飛んでくるのが見えた。




「おぉー。【リヴァ】のおうさま、やっぱりすごいなー」


どうやら、中身はミィカママことマイカが手づから用意したお菓子のようで。

何だかんだでどうにかして引き止めにかかっていたマイカも、ハナの冒険を、許容してくれたらしい。



「ふむ。やっぱり魔力を感じるのだ」


いざという時や、『厄呪ダークサイド』による思わぬ不幸に対処するためのマジックアイテム的なものなのかもしれない。

ありがたやなのだと両手のひらに落っこちてきた包を受け取りそのまま背負いつつ。

冒険に行くのならばこんぼう的な愛用の得物を含めた装備が必要ではないかと。

所謂『フィールド』への出て行く前に、スクール内で装備を整えないといけないから。

スクールの外にはまだ出る段階じゃないから城を離れる事に許可をもらえたのだろうと。

ハナは少しばかり考え込んで、武器防具に明るそうなひとを求めて歩き出す。




「……っ、空よし! じめんよし! 上下左右問題いまのところなしっ」


きょろきょろびくびくと。

必要以上に身体を丸めて(だけどふわもこ髪のせいでむしろ的としては大きくなっただけ)、警戒しながらハナは。

いろいろなマジックアイテムを発明しているという、フレンツ家……のムロガのもとへと向かわんとする。




そもそもが何のために冒険の旅に出るのだったか。

あぁ、いつも側にいるミィカがいないから、そんなもしもの時のための『りはびり』をするのだったとハナは思い出す。



ハナに。

厳密に言えば母方……サントスール家に代々受け継げられし運命であり、病とも言える、『厄呪ダークサイド』。


それは、生きているだけで周りの意志あるものから負の感情、悪意不運、不幸諸々を吸い取りそれら全てをその身に受けると言うものである。

受け取って発散してしまえば、いわゆる悪戯、ドッキリめいたものが降りかかる程度で済まされるが。

災害級のものが周りに降りかかった時の反動ときたら計り知れないものがあったから。


ハナの故郷であるサントスール国においては、それこそカムラル家やエクゼリオ家の力を借りつつ。

世界を構成すると言われる根源の半数が棲まうと言われる黄泉の世界、死の世界を体現するべく、常に幽玄なる結界を張っていた。


それにより、その結界内に棲まう召喚契約のできる魔物魔精霊たちは、そのほとんどがアンデット系で。

それ以外はハナの父と既に契約を済ませてしまっているものばかりで。


ハナとしてはアンデットな魔物たちが別に嫌なわけではないのだが。

サントスール国内、結界内にいると『厄呪ダークサイド』が働かないので、むしろハナの方が嫌われやすいというか、召喚契約をさせてもらえるほどに仲良くなってくれる人は現れなくて。



そんな娘を不憫に思った両親が働きかけて。

ユーライジア・スクールへ通うこととなる少し前に、国主導で開催されたのが。

国外から人を募り、サントスールの姫さまのメイドやナイトを見つけ出す祭りであった。



ご察しの通り、その中のひとりにミィカがいて。

出会ったその瞬間、ハナとしてもびびっと来たのは確かだったが。

あるいはハナと同じように、一族の柵、それこそ呪いのようなものをミィカも抱えていて。

だけどそれは、まさしく運命のさかしまめいていて。


マイナスめいた気を吸い込むのがハナであるのならば、ミィカは【エクゼリオ】そのものめいたそれを生み出し続ける性質を持っているらしい。



それすなわち、ハナの側付きとしてミィカが近くにいてくれるのならば。

ハナは外へ出てスクールへ通いつつはーれむメンバーを集めることができるし。

ミィカはミィカで、マイカのように魔王城に引きこもっていることもなく。

面白くて大きいのはお顔だけじゃないハナの側で自由に動けるといった、お互い特しかない関係なわけで。





「ん? 得しかないか? なんだかめっさけなされているような気がしなくもないが……って、なんだ?」



そんな少しだけ前の馴れ初め的なことを考えていたら。

不意に騒がしくなる女子寮棟へと続く中庭。

すわ、さっそく効果覿面、ミィカの居ぬ間に『厄呪ダークサイド』が牙をむいたのかとはっとなって顔を上げると。


 


「ぬおおぉっ!? でっかい、ぶたさん! いや、ぬしさま、ぬしさまなのかぁっ……!」



ある意味、できるのならば『げっと』してみたい魔物の一種とも言える、小山のような。


だけどけっこう肌色の強い、イノシシ型の魔物が。

もうもうと土煙を上げてハナの方へと一目散に向かってきているのが分かって……。



  (第119話につづく)









次回は、9月15日更新予定です。

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