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第11話、予想に反してあっさりあっけなくあかされる仮面の向こう




音も立てず地面に再度降り立つのは。

極彩色の仮面に、赤の斑に染まるマントに身を包んだ……さっきまでそこにいた人物。

『夜を駆けるもの』。

 


リアータ自身が使えるのだからその可能性を考慮すべきではあったが。

どうやら『夜を駆けるもの』は、リアータ達に気づいていたらしい。


隠れていた事に後ろめたくて。

その身に滲む存在感に圧されてしまって、三人が三人とも何も言えないでいると。

そんな彼女達の心情などお構いなしに先程の男の時よりもより柔らかく、気さくな様子で声をかけてくる。



「ご機嫌よう。美しき気高きお嬢様方。相見えるには少々不躾な時間と場所ではあるが、夜の帳なくば存在できない身としては目を瞑るしかない、と言った所だね」


いつも通りの、言葉の裏に何か含みでもあるかのような、勿体ぶったそんな挨拶。

リアータはその事で『夜を駆けるもの』が付けて聞き耳を立てていたのを気づいていて、今の今まで声をかけてこなかった事に気づかされる。


と言うより、こちらから見つけ出して声をかける事はあっても、あちらから率先して声をかけてくる事など初めてだったので、少なからず動揺していたわけだが。




「おー。そう言うってことはやっぱりきみがうわさの『夜を駆けるもの』なのか?」


リアータが何らかのリアクションをするより早く、ハナが興味津々に下から覗き込むようにして『夜を駆けるもの』に近づいていく。


「いかにも。正真正銘、私が『夜を駆けるもの』さ。そう言うキミは、サントスールのハナ姫だね? それと、メイドのミィカ君。……ふふ。今回の仕事は労せず終わってしまいそうだ。わざわざ連れて来てくれてありがとう、リア君」


小さな子供をあやすように、自然な形でハナを撫で、嬉しそうに笑う『夜を駆けるもの』。

あ、と思った時は既に、確かな魔力のこもった刹那の光が前のめりになっていたリアータの瞳を焼いた。



「きゃっ!?」

「……っ」

「……?」


目が眩む程の光。

思わずついて出るらしくない行動に対してのらしくないリアータの悲鳴。

その事で何も言わずいきなり手に持っているマジックアイテムを発動させたのだと気づいたミィカは。

訳も分からずぽかんとしているハナを背中に庇うようにして、次撃に備える。



しかし、予想していた次が来ることはなかった。

代わりに、堪えきれず漏れ出した吐息……『夜を駆けるもの』の、場にそぐわない男とも女ともつかない笑い声が木霊する。



「ふふふっ。油断大敵。夜のユーライジアには危険が一杯なのだよ。替えのきかない麗しきキミ達に、夜の戯れはいささか早すぎる。まぁ、大人しく言いつけを守ってもらっては、私としても商売あがったり、なのだけどね」



リアータがようやく視界を取り戻した時には。

実際に笑っているように見えなくもない極彩色の仮面がすぐそこにあった。

思わず一歩引くリアータに笑みを深くすると、手に持っていたマジックアイテムがジィィと独特な音を立て、一枚の手のひらサイズの精緻な『絵』が出現する。



「ふむ。『夜と戯れし姫の儚さ』とでも名付けよう」


そして、そんな事をのたまってその『絵』を手渡してくるので、思わずリアータはそれを受け取ってしまう。



「おぉう、すごいのだー。リアもボクも、ミィカもいる」

「ああ、これが『キャメーラ』ですか。知ってましたよ、ええ」

「ちょ、ちょっと。何よこれっ」


『絵』に写っていたのは、『夜を駆けるもの』から見たリアータ達三人の姿だった。

空間を丸ごと切り取ったようなそれには、突然の光に恐怖し、縮こまって目を瞑っている中々人様には見せられない表情が浮かんでいる。



「驚かせてすまなかったね。お詫びにこれはキミ達にあげよう」


いらないわよ! と突っ返そうとするも既に遅し。


「いいのか? ありがとー」


本当に嬉しそうな顔でハナが懐に入れてしまったので何もできない。

リアータの顔は鉄仮面女などと呼ばれていたのが嘘なくらい赤くなっていただろう。

それは、この世界の夜が危険であることを敢えて諭したその行動に対しても、少なからず影響していたわけで。



「夜を背景とするのも乙なものだが、依頼としては太陽の下が望ましい……か。ふむ、ならば私はそろそろお暇しよう。キミ達も早く帰り給え」


わざわざそんな言葉を残して去ろうとする『夜を駆けるもの』に対し、慌てて声をかけるリアータ。



「待ちなさいよっ。今日こそはあなたの正体暴いてやるんだからっ」


そうすれば、今までのいろいろな文句も言えるし、改めて感謝も口にできる。

そう思い、リアータは自らの魔力を練り、高めていく。


だが、『夜を駆けるもの』は。

みるみるうちに【ウルガヴ】の魔力が満ちようとも、律儀に立ち止まり余裕を隠さない。



「ふむ? ここ最近こんないけない時間に会うと思ったら、そんな理由があったとはね」

「……っ」


そう言えば面と向かってその目的を話すのは初めてだったね、なんて言って笑うから。

勢い込んでやってきたのはなんだったのかと。

リアーたが気勢削がれているうちに、『夜を駆けるもの』は更に言葉を続ける。



   (第12話につづく)










第12話はまた明日更新いたします。

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