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第106話、自分だけがのけ者にされていただなんて、恥ずかしい勘違いも今は昔



Girls SIDE



「寝ているところ、起こすようなことにならなかったのは、良かったかもねぇ。うん」



結局のところ。

マリアに引きつられてやってきた、ライジア病院跡地改めラルシータスクール校長の宝物殿の最奥、複数のベッドが並ぶ、今は『彼女』らのプライベートスペースへと、一同が足を踏み入れることはなかった。



普段は……魔力でその活動を維持していることもあって。

出動……活動要請がない限り休眠状態にある彼女らは。

かつては魔導人形などと呼ばれる『ヴルック』の家の最高傑作と称される魔導人形の一翼であったが。

そのためのモデルとなる人物の元に集い、魂の代わりを『神型』に類する上級の魔精霊たちが成すことによって、大きく立場が変わっていった過去がある。



一昔前であるのならば。

人族や、純粋なる魔精霊とは違うと差別を受けるようなこともあったが。

ガイアット王国や、アーヴァイン王国、ラルシータスクールなどが主導し保護していくことによって。

今となっては【ヴルック】の魔精霊のいち種であると、広く周知されるようになっていて。


特に、ラルシータスクールの長であり、大聖人などと呼ばれる男の力添えは大きく。

ラルシータスクールは現在、数百を超える『彼女』たちが。

常日頃、ある脅威に晒されているラルシータ大陸を守護せんと、控えているらしい。




そんな、【ヴルック】の魔精霊の近衛兵団レギオンが今、一斉に出立、その鋼の翼を使って飛びたたんとしていた。


彼女らを取りまとめる団長にして、ガイアットの死神の手により生まれかわりを経験している、リアータの姉でもあるリオ・セザールからの出動要請信号を受け取ったらしく。

突如として赤く降り注ぎ点滅して回る光ともに、高い高い天井が開け放たれ、金属めいた翼を生やし、【カムラル】の魔力の爆発を推進の力として、次々と飛び上がり連なって。

のぞく青空めがけて、飛んでいくのが見え、とにもかくにも圧倒されていて。




「いってらっしゃーい! せっかくだし、あとであたしたちも行くから、よろしくねぇー!」


統制された、機械兵団。

無機質ななイメージを抱いたのは。

そんな、ど派手な出オチ、一瞬のことであった。


子供たちが学校へ行くのを見送る、お母さんそのものなマリアの言葉を受けて。

律儀に中空で立ち止まり、お辞儀していくものや。

振り向いて気になるセリフがあったのか、こっちへ向かおうとして、後方の他の彼女とぶつかりそうになって。

墜落とまではいかずとも、ちょっとした渋滞が発生してしまったりと。

とても、人間の少女らしい佇まいを感じられて。



「すっごいぞぅ! みんなおんなじ娘なのか?」

「いや、みんなじゃないね。リアータさんによく似たお姉さんと……」

「クルーシュトさんのお母様! 私、お会いしたことがあるので覚えてます」


元は、魂なき、魔導人形であったことは確かなのか。

ムロガやマニカが言うように、数十人はいるであろう彼女たちの見た目としては。

蒼く長く流れる髪と、ブルーアイズ秘めし少女と。

翠緑のボブカットの、エメラルドな瞳持ちし、もう一人と比べると少々幼い雰囲気を持つ少女、そのどちらかしかなかった。



「どこぞのりじちょ姉妹とかぶってしょうじき目がちかちかするにゃぁ」

「そう言えば、聞いたことがありますね。『ヴルック』家が魔導人形を創るにあたって、モデルを募集したと。それが……」

「うちの母さんと、ガイゼルさんちのお母さんってことね」

「うん。タクトちゃんもそうだけど、あたしたちもその頃はここへ帰ってこられるかどうかも分からなかったから。センパイあたしを忘れないでって意味でモデルに志願したんだよね」

「……」


それはもはや、のろけの域を超えていて。

その割には、マリアと見た目は全然違うだとか、お腹一杯で複雑な気持ちになるリアータであったが。


思わず眉を寄せたのは、ムロガが言う通り、リアータ自身にも何だかよく似ている彼女たちを目の当たりにして。

かつて自分だけいいのかなと、悩んでいたことを思い出したからに他ならない。




それはマリアが、母が『異世界の迷い子』と呼ばれる異世界の住人であったことによる世界観のズレ、違和感が後押ししていたのもあるだろうが。


小さい頃は、自分だけラルシータスクールの外に出してもらえず。

だけど他の自分によく似たお姉さんたちが、父親の後について『仕事』に出かけていくのを見送るばかりで。


今では、逆であることを、マーズのお節介もあって分かってはいるのだが。

その当時は役に立たず家にいるだけの自分はいらない子なのではないかとよくよく思ったもので。


今はもう吹っ切れてはいるのだけど。

そんな心情を、マリアは何だかんだで耳ざとく目ざとくキャッチしたらしい。



「センパイもね、リアちゃんくらいの年頃には、ラルシータと呼ばれる大陸の真実について、知ったみたいだから。せっかくだし、みんなで行く? センパイの、『彼女』たちの戦いっぷりを見に、さ」

「……え? いいの? で、でも。まだ私、あんな風に飛べる魔法、覚えていないけれど」

「大丈夫! そんな時のために式神使いなあたしがいるじゃなーい」

「ぬぅっ、それはもしや、もしかしてぇっ!?」


『でんせつ』の空を飛び駆る騎獣タイプの魔物魔精霊の召喚なのかと。

ハナの大きに過ぎる橙の瞳は、期待にきらっきらと満ち満ちていて……。



     (第107話につづく)








次回は、7月16日更新予定です。

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