表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/199

第105話、オニと列車で物語は始まることはなく、黒鉄は黙したまま



Girls SIDE



「わーっ! ひーろーいぞーっ!!」



相変わらず慣れることのないマニカ以外のメンツは。

虹泉トラベル・ゲート』による移動などもう慣れたもので。


魂に刻まれし心的外傷トラウマなのですと言ういいわけ(実はカナヅチ)に対する宥め方にも慣れてきたところで、結局一番乗りで飛び出してきたハナは、どこかで見たことのある……ユーライジアの地下ダンジョン『ターミナル』に引けを取らぬ天井が高いどころか見えそうもない、どこかひんやりとした、それこそダンジョンめいた場所へたどり着くや否や開口一番声を上げる。



「むむっ! あそこにおわすはもしやっ!」

「うん! 『キマグレイン』の顔部分じゃない!? 近くで観察させてもらってもよろしいですかっ」

「もちろんだよっ」

「すごい、真っ黒なんですね。【エクゼリオ】の魔物、魔精霊? あ、でも【ヴルック】のちからも感じますね……」

「ええい、こまけぇことはいいのだ、早速ちかくでみにいくぞぅ!」

「わ、わわっ」


そして、どこか蒼の静けさすら感じされる場所に見とれ見上げている間にも、ミィカとムロガが何だかんだでここへきた目的の一つである、大仰に過ぎる黒鉄色の威容に目ざとく気づき、二人して駆け出していくのを見て、ハナが慌ててマニカを引っ張り、その後を追いかけていく。




「みゃふっ。だいぶんさむいにゃ。夏場ににげこむのにゃらいいかも。お昼寝場所にかくほしよ」

「あら、それはいいわね。実はここベッドも余ってるから、あたしとかお姉ちゃんに言ってもらえば全然オッケーよ」

「をを、それはなんと。いたれり尽くすせりにゃ」

「ベッド、ねぇ。跡地って言っていたけど、病院としては機能していないってこと?」

「うん。そうだよ。なんか、あのきかんしゃ……じゃなかった。でっかいのくらいの魔物が潜んでいたみたい。それが、毒性が強かったっていうか、属性的にあまりよろしくなかったみたいで、うちで買い取ったんだ。ちょうど、センパイの宝物さんたちの置き場所にも困ってたからね」

「ふぅん。いつの間に。……でも、うん。よくよく考えてみれば前の状況よりはいいのかもね」



よくよく見ると、ワンフロアぶち抜きの地下階に見えて、部屋の真ん中から半分だけ仕切りのように壁がいくつも並んでいて。

そのうちの一つに、マリアの言うところのでっかいの……『キマグレイン』の闇よりも黒く金属めいた顔が覗いているのが分かる。


先行していった面子を除くのんびりそんなやりとりをしている三人の目には、その壁の向こうにあるとは聞かされていた魔導機械の『シャレード』や『ズイウン』に加えて、初めて見る『ブルー・エッグ』なる、やはりそれも移動に使う『虹泉トラベル・ゲート』の亜種らしいものがずらりと並ぶ様は壮観で。



病院だった頃よりさらに過去、この場所はそういった類の……所謂戦争、戦闘などに使う魔道具や武器防具などの格納庫であったらしい。

少年の心を忘れないムロガ&実はマジックアイテム大好きなミィカは、その度にそれらに引かれて吸い込まれるようにわいわいしながら入っていってしまって。


それにハナも巻き込まれ釣られてしまって。

それらを見慣れているセザール親娘と、あまり興味がないらしいウィーカは。

この場の来歴について語り合っている間に結局先行して『キマグレイン』の鎮座するところまで辿り着いてしまう。


 


「……あぁ、これがそうだったの。トウエイ村近くのダンジョン? フィールドにいたわよね? 私、それこそ【ヴルック】かなにかの魔物かと思ってた」

「うーにゃ。確かにまんまるのとこに目と口があるようにみえる? えんとつみたいにゃつのはまーずの仲間だったりするのかにゃ」

「いやや、あれはその通り煙突みたいなものだよ。動くときはあそこから煙が出てくるし」

「と言うかそれって周りが言ってるだけのあだ名でしょう? マーズって実際角はないのよね。……尻尾や翼はあってもおかしくなさそうだけど」

「ふふふっ。相変わらず後輩くんってば面白い感じなのね」

「それぜんぶついてたらおにどころじゃないにゃ。きゅうきょく生物にゃ」


あの両親の子供なのだから、あながち大きく外れてはいないなどとは。

たぶんきっと、そう言う規格外なところだけ両親から受け継いだんだと。

残りのきれいで素敵で可愛くて凄い部分はマニカが受け継いだんだと。

へこんでいるんだか安堵しているんだかわからなくなってくるマーズの前では到底できない話題をしている間にも、満を辞してメインどころとばかりにハナたちも合流してくる。




「ほほう。確かに顔の部分だけのようですが。まさに究極と言う言葉にふさわしいですね」

「人を乗せる胴体部分は流石に残ってないのかぁ。でも、もしかしなくても眠っているだけですよね?」

「うん。石炭……ごはんをあげれば動くと思うよ。免許は……異世界だからいいのかな? センパイなら運転……扱えそうだけど」

「さっきからたびたびでてくる先輩すご。こんなでっかいのと契約しているのか?」

「契約、うん。そう言っていいのかな。なにせセンパイはユーライジアいちの天才だからね。たぶんここにある魔道具、魔導機械、魔精霊に魔導人形、ぜんぶ扱えるんじゃ……って、おや?」

「にゅむ? なんにゃ急にひとの気配? 今までいなかったはずにゃのに」

「これは……【ヴルック】の魔力!」



首を傾げるウィーカの言う通りに。

突如として、出現したのは相当数の何者かの気配。


マニカが期待に満ちた雰囲気で声上げているように。

マリアはもちろんのこと、リアータもここまでくれば。

まるで、出動要請があって起動スイッチが押されたかのように。

 


それでも沈黙を続ける『キマグレイン』を置いて。

上階へ続くであろうその先に今の今まで眠っていたであろう存在のことには気づいていて……。


 


     (第106話につづく)








次回は、7月11日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ