表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/199

第104話、少しばかり世界の現状に触れて、七色の奔流にも慣れなくて




Girls SIDE




本日、リアータのお友達が大勢で遊びに来てくれたのは。

休日の、仲良し顔見せだけでなく。

ラルシータスクールが誇る宝物を拝見したいということだったので。


そう言うことならついてきてちょうだいと。

リアータの母の一人、シロだのスイートだの色々言われるけれど、そのへんはあんまり好きじゃないから妹ママか、それが嫌ならマリアちゃんって呼んでね、特にリアちゃん! などと言われて。

リアータが、何とも言えない微妙な……初めて見る表情をしていたのが印象に残ったが。



そんな娘の様子などお構いなしににこにことご機嫌にもっさもっさの竹箒を振り回しつつ先頭駆けてゆくマリアに皆で追随しつつも。

ミィカにとってみればどこかで聞いたことがあるような……うちと同じ、母親が二人いる……別の顔を持っているかのような物言いが気になって。


一番やりが駆け出すとあたしもボクもと我先にと競わんとするウィーカとハナを気にかけつつ、リアータに疑問をぶつけてみる。




「つかぬことをお伺いしますが、ラルシータは王族ともなれば複数の伴侶を持ってもよろしいのですか?」

「うっ、いきなり直球ね。……っていうか、その辺りはまだ詳しくはないのだけど、ユーライジアだって曖昧というか特段決まりはなかったような……」

「そうですね。王族……四王家は一人に複数の人格がいらっしゃる方が多いとのことで、大昔のような一夫一妻なのは少ないみたいですね」

 「えっ? そうなんですかっ? 知らなかったです……勉強になります」



得意げに、幻のメガネをくいっと上げる仕草をしてみせつつ二人の話題に混ざる形でのムロガ。

知らなかったと、同じく会話に入ってきたマニカは、そんな事を言いつつも何だか嬉しそうだった。




ユーライジア、と呼ばれる二つのスクールを引っ括めたこの世界。 

基本的には、身分に限らず一夫一妻であったが。

人族が魔精霊などをふくめたありとあらゆる種族と交わっていった結果、レスト族に限らず複数の人格、魂を棲まわせる者が増えてしまって。

多夫多妻というか、一度好き同士になったら気にしない雰囲気が広まっているのは確かで。



「あぁ、質問の意図がずれてしまいましたね。すみません。側室とか第二夫人とか、そう言うことではなくてですね。実はうちの母も、そうなのです。その日の気分で変わったりするのです。……正直、大分毛色は違いますが」

「え? そうなの? へぇ。そう言う感じ、うちだけじゃなかったのね」

「エクゼリオ家ですか。みだりに触れてはならない感じがありますけど、ミィカさんがお話してくださるのなら色々聞きたいところですね」

「……まぁ、寝た子を起こすこともないと思いますがね」

「そうですよねぇ。知識欲はありますけど、ウィーカさんが噛まれたら大変です」

「うぅ、ふたりの世界に入っちゃってます」

「噛むの? ミィカさんのお母さんが? でもなんだかちょっと想像できるわね」

「どう言う意味ですか。毒は吐きますが誰でも彼でも噛み付いたりしませんよ」


ただし、マーズは除く。

ミィカ自身のことを言っているわけでもないのにそんな風に素直に拗ねた態度をしてくるのは。

顔を合わせれば意味があるようでない状態でマーズにつっかかっていって時には自爆するミィカを見ているからなのだろう。


そんな二人のやりとりも、ある意味でマニカにとってみれば未だ蚊帳の外なやりとりで。

二重の意味で早く自分自身だけの身体を見つけて本当の意味でみんなの輪に入りたいなぁとマニカがしみじみ思っていると。

その気持ちを汲んだわけでもないだろうが、こっちを注目せよ、とばかりにウィーカがにゃうーんと声を上げる。




「おや、ここはさっきやってきたののお隣さんだな」

「【虹泉トラベル・ゲート】、いっぱいにゃぁ」

「うん。ユーライジアにもあると思うけど、世界じゅうのだいたいのところへは行けるよ。今回行くところは、ライジア病院跡地って言えば分かる? センパイの宝物、結構おっきいのもあるからね、使わないのならって倉庫変わりに使わせてもらってるんだよ。……まぁ、それだけの理由じゃないけど」


七色の泉の淵に足をかけて。

その先へ進む準備はできているかな、とばかりに意味深長な言葉を漏らすマリア。



「大きいですと? そ、そそそれはもしやっ」

「え、『キマグレイン』!? 本当に残ってるんですかっ?」

「ふっふっふ。それは行ってみてのお楽しみ、だよ~」

「【虹泉トラベル・ゲート】結構使うんですね。うぅ、慣れないと」

「にゃふん」

「……ライジア病院跡地、ね」



回復諸々魔法によらない病や怪我、呪いなどの治療を行う場所、ライジア病院。

各属性にある教会が、まとまったような場所。


いつの間にやら跡地になったのか。

リアータの記憶では、ユーライジアの近郊にあるそれは普通に稼働していたはずで。

同名の、ラルシータにある別物だろうか。


リアータは首をひねりつつも。

いつも明るい悪戯っ子気質な母がそんな風にもったいぶるということはきっと盛り上がっている事柄以外にも何かあるのだろうと。


どこか、強い確信を持っていて……。



      (第105話につづく)








次回は、7月6日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ