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第五章 キャンディ。

 今回、アーケスティアの容態が回復するまでに、一週間を要した。いつもの倍以上かかっている。それほど、症状が重かったのだ。内面だけではない。腕にも足にも、打撲痕がいくつかあった。パイロットスーツを着ていたにもかかわらず、である。いかにあの時の衝撃が激しいものだったのかを物語るケガだ。白い、細い腕に足に残っていた青いアザは、ものすごく痛々しかった。

 起きられるようになっても、アーケスティアは、ぼんやりとベッドの上で過ごすことが多かった。薬剤の投与は現在控えられている。意識が戻ったとはいえ、まだ本調子ではない。これ以上の負担は一時控えるという、研究所全体の意見だった。無理をして、使い物にならなくなったら困る、というところか。機体も損傷しているから、しばらくは出撃もできそうもない。研究所の考えには腹が立つが、せっかくの機会だ。しっかり休養して身体をもとに戻してほしい。ユリウスはそう思っている。

 「何か、食べたいもの、買ってこようか!?」

 めずらしく、ユリウスから提案した。

 ずっと元気のないアーケスティアを、見ているのがたまらなかったからだ。

 「んーっと、じゃあねー、アンリ・シャンパルティエのフィナンシェにぃ、オーギュスタン・デュメルのカヌレ・ド・ボルドー、ローデヴェイクのキュベルドン、あ、あとアレッキオ・デル・ゾルデのスフォリアテッレと、ラ・ジア・ブリジッタのトルタ・パラディーゾ…」

 「ちょ、ちょっと待て!!」

 慌ててさえぎる。

 なんだそれは。お菓子か!? 呪文か!?

 「そんなに覚えられない…」

 「何言ってんのよ、アンタが買ってきてくれるって言ったんでしょうが。自分で言ったこと、忘れたの!?」

 「忘れちゃいないけど…」

 ユリウスのつぶやきを、アーケスティアは聞いていなかった。モヴをいじってユリウスの方を見もしない。明るい外からの日差しが入る広い部屋のベッドの上で。アーケスティアのその顔は、どこかうれしそうだ。

 ユリウスは軽くため息をついた。

 自分をからかう程度には元気になったのだ。それならそれでいいじゃないか。

 仕方ない。言い出したんだから買いに行くか。

 アンリ・シャンパルティエのフィナンシェと、オーギュスタン・デュメルのカヌレ・ド・ボルドー、ローデヴェイクの…しまった。本当に覚えきれていない。

 頭を掻きながら部屋を出ようとする。と、同時に外からノックされた。

 「はい!?」

 ユリウスがドアを開けた。そこに、花束を持ったグランツ中佐の姿があった。

 「アーケスティアの見舞いに伺ったのだが。彼女は起きているかね」

 「あ、はい」

 「カールッ!!」

 ユリウスが振り返るより早く、アーケスティアが、ベッドから飛び降りてきた。裸足のまま、元気よくグランツに飛びつく。その勢いに、少しだけユリウスはよろめいた。

 「おかえりっ、カールッ」

 グランツの制服に頬ずりをする。

 「ねっ、いつまでこっちにいられるの、カール!? ずっと!? ずっといられるの!?」

 「いや、少しの間だけだ。すまないね」

 「ううんっ!! こうして来てくれたからいいっ!!」

 甘えるアーケスティアの金の髪を、やさしくグランツが撫でた。

 アーケスティアが放り出したモヴが、ボテボテとユリウスの足元に走り込んできた。ユリウスは、二人の姿を見つめながら、モヴを拾い上げる。

 「さあ、せっかくなんだ、顔を見せてはくれないかな!?」

 「うんっ!!」

 アーケスティアが顔を上げる。イキイキとした、心底うれしそうな顔。

 「ケガをしたと聞いていたからね」

 「もう、平気だよ」

 ほらっとばかりに、アーケスティアが笑顔を作る。

 「そうか。それはよかった」

 グランツも笑う。

 「報告書は見たよ。大変な戦いになってしまったようだね」

 「えっと、その…、アタシ、ちょっと、油断しちゃって…」

 ややうつむいて、耳の横髪を搔き上げる。とてもかわいい仕草だった。

 「でもねっ、次はっ、次は、絶対大丈夫!! 絶対あんなヤツ、やっつけちゃうんだからっ!!」

 「大丈夫、君なら誰にも負けない。そうだろう!?」

 「うんっ!! 今度こそやっつけてやるわ。見ててね、カール」

 「期待しているよ。私のアーケスティア」

 アーケスティアの勇ましい言葉に、グランツがふたたび笑った。

 それを見るユリウスは、どういう表情でいたらいいのか、わからなかった。

 なぜか、心がざわめく。アーケスティアが元気になったのは、単純にうれしいのだが。

 「これは、私の気持ちだ。受け取ってくれるね」

 グランツが持っていた花束を差し出した。小さく白い、うつむきがちに咲く花の小さな花束。

 「スノードロップという花だそうだ。仕事先で見かけたんだが、君に似合うだろうと思ってね」

 「…ありがとう」

 大事そうに、アーケスティアが受け取った。

 「花言葉は『希望』だそうだ。清楚で慎まし気な花といい、言葉といい、君にぴったりだよ」

 清楚!? 慎ましい!?

 普段のアーケスティアを知るユリウスは首を傾げたくなった。しかし、うれしそうに花束に顔を寄せ、目を閉じた彼女は、そう表現するにふさわしい少女でしかなかった。普段の行き過ぎたぐらいの笑いや、人を馬鹿にした態度がなかったら、彼女は十分に素敵な女性なのである。金の髪、透き通るような肌に、スノードロップの緑の葉と白い花は、よく似合っていた。

 「さて。すまないが、これで私は失礼するよ。悪いがこの後、会議があってね」

 「えーっ!? 行っちゃうの!?」

 アーケスティアが口を尖らせた。

 「すまないね。また今度、いい報告とともに会えることを楽しみにしているよ」

 グランツが笑う。

 「うん。待ってて、カール」

 聞き分けよく、アーケスティアが微笑み返した。あまり無理を言って、嫌われることを恐れているのかもしれない。

 ユリウスは、グランツの後に続いて部屋を出た。彼を見送るためでもあり、忘れかけていた、アーケスティアへのお菓子を買いに行くためでもある。まあ、あの花束をもらった彼女が、今更、自分の買ってきたお菓子で、これ以上喜ぶとは思えなかったが。

 「さて、ヴェルナー少尉」

 廊下を歩きながら、グランツが声をかけた。

 「実際、君の目から見て、彼女の状態はどうなんだね」

 「はっ」

 ユリウスの背筋が伸びた。話すグランツの顔も先程と違って、険しい表情だ。

 「自分が見るに、彼女の容態は未だよろしくなく。その、まだしばらくの休養が必要かと思われます」

 「そうか」

 短くグランツが呟いた。

 「ゆっくり休ませてやりたいが、状況が状況だ。こちらが休んでいる間に敵も回復してしまう。悪いが彼女の回復と、機体の整備、大変だろうが、急いでくれないだろうか」

 「はっ」

 「どのような機材を投資しても構わない。彼女が勝利出来るように、頼むよ、少尉」

 「はっ。努力いたします」

 「期待しているよ」

 振り返ったグランツが、ユリウスの肩に手を置いた。温かく大きな手。その言葉に身が引き締まる。

 しかし。

 なぜだろう。どこか、しっくりしないものが自分の中にある。

 何に、どのあたりが、どうしてなのか。自分でもわからない。

グランツを見送ると、ユリウスも街に出た。彼女に聞いたお菓子の名は、もうほとんど覚えていなかった。

 

 買い物を終えてユリウスが戻ると、アーケスティアは以前にも増して、グッタリとベッドに横たわっていた。先程はすごく無理をしていたのだろう。グランツからもらった花は、無造作にベッド横の机に放り出されていた。

 「枯れるぞ」

 「んー」

 重たげにアーケスティアが顔を上げた。ボヤーっと花を見る。なんの感動も残ってない、気だるそうな瞳。

 「あー、よろしくー」

 また、ポテッと顔を枕に埋めた。それが精一杯といった風情だ。留守番に、というわけではないが、置いていったモヴが、同じくベッドの上で彼女を心配そうに見ていた。

 仕方なく、買ってきたものを置いて、花を手に取る。放置されていた花束は、少しくたびれていた。

 グランツにもらったことはうれしくても、花自体に興味はないと言ったところか。

 花を飾るといっても、どうしたらいいのかユリウスもわからないので、部屋にあったグラスに、とりあえず生けてみる。

 「ねえ、どこ行ってたの」

 気だるげにアーケスティアが聞いてきた。

 「ああ、約束のお菓子を買いに」

 「ふーん」

 質問したくせに、あまり興味のない返事。

 「中佐がおっしゃっていたよ。君のために機体の整備を頑張れって。君が勝利出来るようにって。そのための投資は惜しまないでくれるそうだ」

 「…そう」

 やはり、気のない返事。中佐のことを話して、少しでも元気が出ればと思ったのだが、上手くいかなかったようだ。彼女が目の前いたモヴを、少し撫でる。ユラユラと揺らされて、モヴがシッポをパタパタさせた。

 「HMBA07-IAの機体整備には、自分も参加させてもらう。中佐からのお言葉もあるし、もっといい武器が搭載出来ると思う」

 もともと、機体の整備には参加させてもらうつもりでいた。前回のように彼女を危険に晒したくなかった。もっといい武器を、もっと性能のいい機体を。

 設計のプランのいくつかは、すでにユリウスの頭の中にある。これでも自分は技術士官だ。士官技術学校を首席で卒業したという自負と、それだけの知識がある。最近、アーケスティアの世話に明け暮れていて、うっかりすれば、自分でもそのことを忘れそうではあるが。

 彼女を、生きて戦場から帰還させる。

 それが自分の、技術士官としての、最大の使命だ。

 「…ねえ。スノードロップの花言葉、知ってる!?」

 唐突に、アーケスティアが切り出した。

 「…『希望』、だろ!?」

 彼女に鼻をプレゼントした時に、グランツが言っていたではないか。

 本当に彼女は、グランツしか視界に入ってないんだな。ユリウスは思った。あの時、そばに自分がいたことに、気づいてもいない。

 『希望』という花言葉の花束を、グランツは彼女に贈った。それは、そのまま、彼女の活躍をグランツが期待している、ということではないのだろうか。彼女は、グランツにとって『希望』である、と。

 「…そうね」

 力ない、アーケスティアの声。

 「『希望』、だもの、ね」

 なぜか、ひっかかる言い方。

 「ところで、アンタは何を買ってきてくれたの!?」

 「あ、ああ。時間がなかったから、これを」

 急に話を自分のことに向けられて、あわてて持ってきた紙袋を開けてみせる。

 「君の言っていたお菓子をそろえるのは難しかったから。キャンディだけど、いるか!?」

 取り出したのは、赤や黄色、色とりどりのカラフルなキャンディの詰まった瓶。

 「キャンディ!?」

 「そう、キャンディ」

 呪文みたいなお菓子は覚えられなかった。代わりに、街で見かけたカラフルで、元気の詰まったようなこのキャンディを買ってきたのだが。少しでも元気づけたくて選んだお菓子だったが、やはり自信がなくなる。彼女にとったら、こんなキャンディより、グランツのくれた花の方が何倍もうれしいだろうに。

 「いらないなら…」

 「食べるわ。キャンディ」

 言い終わらないうちに、アーケスティアが身体を起こした。ちょうだいとばかりに手を伸ばす。

 色とりどりの瓶の中から、紫のキャンディを彼女が一つ頬張る。

 「甘い」

 その味ゆえか、少しだけ顔に笑みが浮かんだ。

 「はい。アンタも」

 半ば強引に、薄い水色のキャンディを渡される。口に含むと確かに甘かった。

 「甘い…」

 「ふふっ、でしょー」

 アーケスティアがうれしそうに笑う。自分が買ってきたものなのに、なぜ彼女が自慢そうなのか。

 まあいい。彼女が笑うのなら。

 口腔のキャンディを転がしながら思う。

 彼女のつらそうな様子を見るよりずっといい。彼女の言うお菓子の名前を覚え切れず、とりあえず手に入れたキャンディだったが、いい買い物をしたと思えた。

 カラフルなキャンディの詰まった瓶は、元気な彼女にこそよく似合っている。


 それからというもの。

 ユリウスは、アーケスティアの世話と、研究所内での機体の設計変更、修正案の提出、パーツの手配と忙しく動くことになった。

 設計の仕事は、何度も研究所員と議論を交わし、その改定案のために、何度も繰り返し図面を引いた。その仕事の量は半端なく、連日、自室に戻ってからも図面と向き合った。アーケスティアの世話も外れることが出来ないので、自分の睡眠時間を削って、設計の時間に当てた。ここ毎日四時間ほどしか眠っていない。時折、無理が響くのか、軽い頭痛に襲われたが、それでも機体の改修を諦めなかった。グランツから、修理を急がされたから、という理由もある。

 しかし。

 目を閉じると、あの時のアーケスティアが瞼に浮かぶ。透き通りそうなほど色を失った頬に汗で髪が張り付いていた、あの表情。ヘッドセットから聞こえてきた、爆発音、彼女の悲鳴。それらは、未だにユリウスの胸を締め付けている。

 あんな思いは、もうしたくない。

 アーケスティアを、二度とあんな目に合わせたくない。

 その衝動から、ユリウスは必死に動いていた。彼女を守ってやりたい。助けてやりたい。好意的に思っていない研究所員との議論も、そのためなら何ということもなかった。


 研究所員との議論の結果は、機体の性能を上げることが重要であるということだった。

 性能を上げると言っても、その方法は様々だ。

 運動性能を向上させるか、装備する武器を増やすか。運動性能を上げても、彼女の能力がそれに対応できるのか。装甲を厚くするとか、頑丈にするとか、盾を持たせるとか。守る方法も考えつかないわけではない。だが、装備を増やせば、自重が増え、結果的に運動性能が落ちる。それに、武器を増やすと言っても一般兵装を増やすのか、専用のものを増やすのか。万が一に備えて一般兵装も増やすほうがいいだろうが、彼女はほとんどそれらの武器を使いこなせない。ならば、能力を存分に使うことができる武器が望ましいのか。しかし、それだと彼女の身体に、さらに負担を与えてしまう。それは、できれば避けたい。

 考えはずっと堂々巡りだ。なかなか正解が出てこない。

 運動性能を上げても、一般兵装を増やしても彼女は使いこなせないし、専用武器を増やしたら身体の負担は大きくなる。装甲を頑丈にするのも、もともとの性能を落とすことになりかねないので、あまり推奨できない。

 どうしたらいいんだ。

 何度も何度も、図面を作る。そして改定する。

 そもそも、この作戦自体を変更することは出来ないのか。ユリウスが、そう進言したことがあった。地球軍側からも、警戒を強められている。知らね存ぜぬで突っぱねるのにも、限界がある。いつまたあのような敵機に出会うかわからない。機体の改修はもちろんではあるが、作戦も考え直したほうがいいのではないか。しかし、それはすぐに却下された。この作戦は、火星のため、ひいては宇宙全体のため、止めることは出来ないのだと、一蹴された。火星の未来と、一パイロットの負担。考えればすぐにでもわかる答えだったが、それでもユリウスは納得できなかった。アーケスティア一人につらい思いをさせて、なんの未来があるというのだ。

 一技術士官の言葉など、相手にされることはない。

 そのことが、何よりユリウスには堪えて感じられた。


 ユリウスが機体に関わっている間、意外にもアーケスティアは大人しくしていた。ユリウスが用意したキャンディをなめながら、モヴを撫でながら。仕事を続けるユリウスをじっと眺めていた。

 キャンディは、あれから何度も買ってきていた。彼女は、キャンディを気に入ったのか、よくそれを口にしていた。もちろん、「アホの一つ覚え」と嫌味は言われたが。

 「スティア、スティア」

 最近、モヴが彼女のことをこう呼び出した。

 「スティア」というのは、アーケスティアの愛称らしい。彼女がモヴに、自分の愛称を教えたのだ。スティアとモヴが声をかける度、彼女が小さく微笑んだ。

 そういえば、彼女の愛称を誰かが呼んでいるのを聞くのは、モヴが初めてだな。

 夜、自室に戻っても、「スティア、スティア」と、何度も呼び続けるモヴを見て、不意にそう思った。

 研究所員は、彼女のことを「アーケスティア」としか呼ばない。あの、グランツも、だ。

 どういうことだろう!?

 少なくとも、グランツは、彼女と親しいのではないのか!?

 グランツが彼女に贈った花を思う。あの花は、あれから数日もせずに、枯れてしまった。

スノードロップ自体が弱い花だったのか、自分の生け方がおかしかったのか。理由はわからない。

 「スティア、パープル、スキ、スキー」

 モヴの声に、思考が途切れる。気がつけば、モヴがいつの間にか、設計台の上を走り回っていた。

 「こら、モヴ。仕事のジャマだ」

 自分の広くもないベッドにモヴを転がす。布団の上でも、やや動きにくそうにではあるが、モヴが走り続けていた。シッポもパタパタ揺らす。

 「スキ、スカイ、ブール」

 「なんだそれは」

 「ユリウス、スカイ、ブール、スティア、スカイ、ブールブルー、スティア、パープル、スーキ、スキ、ジューリエット」

 全然、要領を得ない。また、アーケスティアがろくでもないことを教えようとでもしたのだろうか。近頃のモヴは時折、こうしておかしなことを言う。

 まあ、設計のジャマをしなければ、今はどうでもいい。

 「静かにしていてくれ、モヴ」

 「シズカニ、シズカニ」

 「モヴ!!」

 少し怒ると、モヴはそれで沈黙した。シッポを振るのもやめる。

 モヴの言語機能もチェックしておいたほうがいいだろうか。

 いや。

 今はそんな時間はない。急いで新しい機体の装備案を考えなくては。

 モヴに背を向け、ユリウスは暗い部屋の中で、設計図と、膨大な資料に向き合い直した。


 それから一ヶ月ほどして。

 機体の最終整備が完了して、いよいよ実戦投入の日となった。

 結局、作戦は今までどおり。アーケスティアのHMBA07-IAが先陣を切って追撃ミサイルを飛ばす。そして、輸送船に奇襲攻撃を仕掛けた後、ヴァンガードたちが輸送船の資材を強奪。再び、アーケスティアがミサイルで輸送船を破壊するというもの。ただ、わずかにだが、変更点もある。アーケスティアの機体に、三機のヴァンガードが護衛につくことになったのだ。前回のように、アーケスティア機が単独になった瞬間を狙われてはまずい。彼女を失っては、今後の作戦にも影響が出る。そういう上層部の判断だったが、ユリウスにとって少しだけ、進歩した、改善したようにも思えた。これで、彼女を誰かが守ってくれる。

 機体自体も大幅に変更した。

 ミサイルはポッド装備の関係上、三回しか撃てない。これ以上、予備のポッドを携帯していくのが、難しかったのだ。

 代わりに装備させたのは、通常のポッドではなく、通常の両肩に付けられるランチャーのような追撃ミサイルポッドだった。左腕のポッドのように同時発射はできないが、二基の砲塔から連射して追撃ミサイルを射出することが出来る。これならば、アーケスティアにも使いこなすことが可能だ。いざという時は、弾も続く限り射出して、身を守ればいい。

 ただ、これだけの兵器を使いこなそうとすると、多大な負担がアーケスティアにのしかかる。投与される薬の量も増えてしまうだろう。

 だけど、彼女が無事に帰還できるのであれば。ユリウスは、そう自分に言い聞かせた。

 他にも、一般兵装をわずかだが増やすことにした。サーベルは二本に。右肩に、小ぶりながらシールドも装備させた。

 彼女が、この全てを使いこなせるとは思っていない。

 いや、使いこなさないほうがいい。こんな武器まで、装備まで、出番なんかないほうがいいに決まっている。以前のように、彼女が言うような、ビシビシーッて輸送船とかをやって、ドカカーンッてやって帰ってきてくれれば。

 そう祈りたいのだが、おそらく、それはもう無理な話だろう。

 地球連邦軍も十分に警戒している。前回の出撃で、それは明らかだ。

 特にあの、チャリオットⅡ。

 戦場には、きっとアイツもいる。こちらが改良を加える時間があったということは、あちらにも同じだけの時間があったということだ。どのような改良を加えてくるのか。HMBA07-IAに加えた装備で対応できる程度であればよいのだが。

 あの時は、引き分けのような状態で終わったが、次もそうなるとは限らない。

 だからこそ、せめて。

 彼女の負担になることを知りながら、特殊兵器を増やし、彼女の身体を心配しながら、薬物投与を見守る。無理はさせたくないのに、無事に帰還させるために無茶をさせる。

 なんという矛盾だろう。

 そもそも、そんなに心配なら、出撃させなければいいのに。出撃を止めることは、ユリウスには出来ない。

 今だって、研究所からの指示通り、大量の薬物を彼女に持ってきている。

 研究所員たちは、これから始まる戦闘のデータを取るための準備で忙しいらしい。最近は血液採取にも慣れてきたユリウスに、薬物の投与が任されていた。

 「早く、やってよ」

 目の前の、ベンチに横たわったアーケスティアが、催促した。

 自分の思考は捨て置いて、彼女の傍らに膝をつく。

 確かに、周りが納得する程度に慣れた手つきで、彼女の右肩のバルブに注射を刺していく。何本も、何種類も。

 「あ…、う、くぅ…」

 注射を射つたびに、アーケスティアの身体が弓なりにのたうつ。水色の瞳を大きく、乾きそうなほど見開く。

 なにかにすがりつきたいのか。なにかに耐えているのか。彼女の手が痛いほど強くユリウスの腕をつかんだ。爪が腕に食い込む。

 「んっ、はぁ…」

 全てを射ち終えると、アーケスティアの全身から力が抜けた。ユリウスをつかんで離さなかった手が、ズルリと落ちる。息が荒い。

 それほどに負担のかかる薬なのだ、これは。

 彼女の爪の痛みが残る腕に触れる。

 「どうして、ここまでしなくちゃいけないんだ」

 苦しそうに瞼を閉じるアーケスティアに、尋ねるでもなく呟いた。

 「…カールのためよ」

 自分の独白を聞かれていたと思ってなかったので、ユリウスは少し驚いた。

 「彼が望んでくれるなら、こんなのたいしたことないわ」

 息はまだ浅いが、それでもゆっくりと身体を起こす。

 「彼が、アタシを必要としてくれる。上手くやれば、褒めてもくれる。アタシは、カールのためなら、なんだってやるわ」

 まただ。

 また、「カールのためなら」とアーケスティアは言う。

 思いつめたようなその表情には、わずかに笑みも浮かぶが、どこか自分を突き放して見ているような、そんな雰囲気も漂っていた。「カールのため」と言う彼女は、己の身など、なんとも思っていないのだろう。

 そこまで自分を犠牲にしようとするアーケスティアに、かける言葉は見つからなかった。

 「ねえ、キャンディ、ちょうだい」

 だいぶと呼吸もラクになってきたのか。唐突にアーケスティアが言い出した。彼女がここまで持ち込んだ私物の中にあった、キャンディの瓶を取り出す。

 「紫のがいい」

 アーケスティアの要望どおりの色を探すが、瓶の中に紫は残ってなかった。

 「あー、もう食べちゃったか~」

 「ぶどう味が好きなのか!?」

 話題が、日常を思わせるものになったので、少しだけホッとする。

 「ん~、ぶどうが好きなんじゃないんだけどね」

 だけど、そればっかり食べてるではないか。彼女の答えは、理解出来ない。

 まあ、いつものことだが。

 その、いつものことが、ユリウスには少しだけ心地よかった。彼女に大量の薬物を投与したこと、この後彼女が戦場に出なくてはいけないこと。そういった重い現実を、一時だけだが忘れることが出来る。

 「まあ、いいわ。何色でもいいから、キャンディちょうだい」

 無邪気に彼女が「あーん」っと口を開けてみせた。なんだその甘え方は、と思いもしたが、瓶の中で指に引っかかって出てきたキャンディを放り込んでやる。色は、明るい黄色だった。

 「すっぱぁ~」

 彼女が少し顔を歪めた。レモン味だったようだ。

 「また、キャンディ買っといてよね。今度は紫のキャンディが多いやつ」

 しばらくレモン味のキャンディを舐め続けた後。う~んっと背伸びをして、アーケスティアが立ち上がった。

 「さて、と」

 もう、彼女は苦しんでいない。むしろ、どんどん覚醒してきている。軽々と歩き出す。

 薬が、効き始めたのだ。表情もイキイキというより、これから始まる戦闘に、喜びと高揚感を覚えている。苦しむ彼女も、思いつめた彼女も、そこにはもういなかった。狩りを始める前の、野生の獣のような瞳。獲物を引き裂く鋭い爪を、自分が持ち合わせていることに喜びを覚えているような。その爪で、獲物を引き裂く瞬間を彼女は、待ち望んでいる。

 「それじゃあ、いってきまぁ~っす♡」

 やたらと甲高い声で告げた。攻撃的で、刹那的なアーケスティア。

 「遠い、な」

 今の彼女から、以前のように、うれしそうにキャンディを頬張っていた彼女を、思い起こすことは難しかった。ユリウスは、そのしなやかな、肉食獣のような彼女の後ろ姿を、見送ることしか出来なかった。


 今回の作戦でも、やはり戦闘は避けられなかった。

 アーケスティアの放った追撃ミサイルの光の筋が、戦闘の合図であったかのように、戦端が開かれた。

 今度は、こちらも十分に警戒していた。もちろん、相手もこちらが警戒していることを想定済みである。戦闘とは、実力戦である前に、相手の戦術を読み、その何手先をも封じる作戦を実行する、頭脳戦でもあるのだ。

 連邦の射撃は正確に、HMBA07-IAを狙って撃たれた。十時方向上方より二つ、二時上方一つ、四時下方三つ、七時下方二つ。

 敵のミサイルは、アーケスティア機と護衛機、その周囲、全方向から飛んでくる。

 取り囲まれている!?

 こちらも、一箇所に留まってやられるのを待っているわけではない。

 HMBA07-IAを中心に、護衛機のヴァンガード三機が散開し、敵のミサイルをかわす。そして、ミサイルの飛んできた方向に、こちらも撃ち返す。

 飛び交うミサイル、そして爆発音。

 「もう、アタシのジャマしないでっ!!」

 言うなり、アーケスティアが二回目の追撃ミサイルを、周囲の敵機めがけて射出した。まるで、それ自体が意志を持った生き物のように、ミサイルは敵機めがけて飛んでいく。その距離はさまざまだ。遠くのものもあれば、すごく近い宙域で爆発したものもある。

 次々に、ヘッドセットに飛び込んでくる、爆発音。

 そして、アーケスティアの荒い息遣い。やはり、この兵器は、彼女の身に負担を強いている。

 一時下方!!

 赤い閃光が漆黒の闇を切り裂いて、アーケスティアめがけて放たれた。チャリオットⅡのライフルだ。

 「クッ!!」

 HMBA07-IAが身をよじる。肩のシールドを少しかすめて、閃光が通り過ぎた。間髪いれず再び放たれた閃光。護衛のヴァンガード一機がその餌食となった。

 左腕のミサイルポッドを素早く取り替える。これが、最後のポッドミサイルだ。

 「当たれぇぇっっ!!」

 絶叫とともに、三回目のミサイルが放たれた。その全てが、一点をめがけて、獲物を狙う獣のように、走り抜ける。

 ヤツだ。ヤツがそこにいるのだ。

 ユリウスは、そう直感した。その勘を裏付けるように、ミサイルが、次々と撃ち落とされていく。

 ヤツも、能力者なのか!?

 もしそうであるなら、追撃ミサイルをかわすのも、それを撃ち落とすのも不可能ではない。アーケスティアと同じ能力者である場合、兵器の動きが読めてしまう。動きを知られてしまう。

 もしかすると、ヤツも同じような兵器を…!?

 連邦軍が、今のところ似た兵器を開発したという情報は入っていない。打ち込まれた敵弾も、一般的な砲弾とビームだけだ。

 しかし、だからといって安心はできない。

 特殊兵器を使っていないから、持ち合わせていないと考えるのは早計すぎる。

 もし、そういった兵器を搭載していなくても、代わりにHMBA07-IAの兵器を封じる手立てを持ち合わせていたとしたら!?

 悪い想像だけが、ユリウスの頭の中でドンドン大きくなっていく。

 だめだ、やめろ、だめだ、やめろ。

 想像すればするほど、それが現実を引き寄せそうな感じがして、大きく頭を振りかぶった。

 「目障りなのよ、アンタはっ!!」

 アーケスティアが、ヒステリックな声を上げた。

 「チョロチョロ、チョロチョロとっ!! うっとうしいのよっ!!」

 追撃ミサイルを全て撃ち落とされて、アーケスティアが苛立つ。

 「これでも、くらいなさいっ!!」

 HMBA07-IAの背中から、肩にランチャーが装備され、追撃砲が飛び立つ。追撃ミサイルよりやや大きいそれは、やや鈍重ではあるが、自在に飛び回り、チャリオットⅡめがけて追い続ける。

 もうやめろっ!!

 ユリウスが叫んだ。

 もう十分だ。これ以上、特殊兵器を使えば、彼女の身体がどうにかなってしまう。彼女を守るために取り付けた兵器なのに、それを使う彼女を見るのは辛かった。

 誰か、彼女を守ってやってくれ。彼女がこれ以上自身を傷つけることがないように、助けてやってくれ。周囲にいた残りの護衛機たちは、増援に訪れた地球軍のチャリオットⅠと交戦中で、手が離せない。誰も、彼女に救いの手を差し伸べる状況になかった。

 彼女の前に手強い敵がいるのが悪いのか、それとも彼女を守るためだと言って過酷な武器を取り付けた自分がいけないのか。もしくはその両方か。

 追撃砲はなかなか成果を上げられなかった。何度も射出され、そのたびに撃ち落とされている。

 チャリオットⅡの動きは速い。前よりも、そのスピードが上がっている。

 「そういうのっ、イラつくん、だってばっ!!」

 焦る、アーケスティアの声。攻撃的なのは変わらないが、先程より、ずっと苦しそうな声だ。

 一発の追撃砲が、近づくチャリオットⅡのライフルを撃ち落とした。

 続いて、チャリオットⅡ左方にて爆炎が上がる。

 その煙が、チャリオットⅡの機体を覆い隠す。

 しまった!! まただっ!!

 ユリウスがそう思うより早く、チャリオットⅡが、アーケスティア機に肉薄した。先程の爆炎は、チャリオットⅡのシールドが引き起こしたのか。かの機体の左肩にシールドは存在しなかった。

 今度はサーベルを持つのではなく、HMBA07-IAに抱きつくようにして、その動きを封じにきた。HMBA07-IAに取り付くことで、追撃砲の動きを止めるという、大胆な作戦に出たのだ。身動きも出来ず、抱きすくめられるような格好になったHMBA07-IAは、腰のサーベルも抜けず、ましてや飛び出している追撃砲で、自身ごと敵機を狙うことも出来ない。

 「な…ぜっ、きみはっ…かなしそ、な、だ」

 ヘッドセットに、知らない男の声が届いた。自分と同じ世代の、若い男の声。チャリオットⅡのパイロットだろうか。

 「こんな、ことっ、しなくてっ、…みを思って、くれ、人は、いっ、ずだっ」

 HMBA07-IAが受けた通信を傍受しているので、音声がとても悪い。ノイズ混じりで聞き取りにくかった。

 「悲しい…!?」

 聞こえた音声に、ユリウスは首を傾げた。

 アーケスティアは息は荒いものの、ずっと攻撃的な言葉ばかり言い続けている。よしんば相手がその声を聞いていたとしても、それを「悲しい」と表現するだろうか。

 「きみ、がっ、たたかうっ、…ないっ。りよっ、されて…」

 「うるさいうるさいうるさいうるさいっっ!!」

 男の声に覆いかぶせるように、アーケスティアが絶叫した。

 「アタシを見るなぁぁっっ!!」

 HMBA07-IAが、ガムシャラにデタラメにもがいた。わずかに力の差があったのか、アーケスティアの迫力が勝ったのか。チャリオットⅡの束縛が、少しだけ緩んだ。

 間髪いれずに、アーケスティア機がHMBA07-IAを押しのける。

 「はぁ、はぁ…、アタシをっ、見る、な…」

 息も絶え絶えに、アーケスティアがうめいた。

 HMBA07-IAが、バーニアを点火した。

 ゆっくりと力なく、チャリオットⅡから離れる。チャリオットⅡは追わない。離れていくHMBA07-IAを見送るだけだ。チャリオットⅡとHMBA07-IAの視線が交わる。

 まるで、何か、二機にだけにしかわからないものを共有しているような印象を、ユリウスは受けた。やはり、チャリオットⅡのパイロットは、能力者なのだろうか。彼らは、言葉を交わさなくても、お互いを理解出来るのだという。今の二機の姿はそれを体現しているかのようだ。

 戦線を離脱するHMBA07-IAに気づいた護衛機たちが、後を追って戦場を離れた。

 アーケスティアの戦意喪失と共に、これ以上の交戦は不可能と断じたのだろう。ユリウスのいる母艦でも、そういう判断が下され、全機に撤退命令が出された。作戦の要であるアーケスティアが不在のまま、任務遂行は出来ない。

 「今回の作戦のデータは!?」

 「一応取れましたが、やはり、不安定ですね」

 傍にいた研究所員の会話が、耳に届いた。

 「AIとのシンクロは悪くないのですが、ちょっとした感情の振幅で、成果に差が出ます」

 「SSRIを増やすか。THCもだ」

 「しかし、最近はSNRIも投与しています」

 「構わないさ」

 …何が、構わないというのだ。

 無意識に握りしめた右手に力がこもる。

 「それが、中佐のご命令だ」

 中佐の。グランツの。

 その言葉に、右手は行き場を失った。拳はどこに向ければいいのだろう。

 「HMBA07-IA機、帰還します」

 隣のイシイ少尉の声に、ハッとなる。彼女が戻ってきたのだ。

 「くそっ!!」

 握った拳を左で抱え、床を蹴るようにブリッジを後にした。

 飛び出した扉が閉じるまで、研究所員の眼差しが、自分の上にあったことに気づきもせずに。

 

 「アーケスティアッ!!」

 必死に呼びかけながら、機体に近づく。いつものことだ。いつものことだけど、いつも、ハッチを開けるまで、もどかしくて仕方ない。

 中の空気が漏れる音がして、ハッチが開く。

 「アーケスティアッ!!」

 「…見るな見るな見るな見るな見るな」

 シートの上でカラダを丸くして震えている。大きく見開いてるのに、何も映していない瞳。うわ言を繰り返す唇は、わなないている。肌は、向こうが透けてしまうのではないかと思うくらい白く、血の気がない。

 恐怖。恐れ。怯え。

 「アーケスティア」

 震えるカラダを抱きしめてあげたら、その恐怖から救えるのだろうか。

 一瞬、そんな考えが浮かび、彼女の肩に触れる。

 「うっ、わぁぁぁっっ!!」

 絶叫が辺りに響き渡る。

 「アーケスティアッ!!」

 ユリウスの声は届かない。大きく身体を痙攣させ、アーケスティアは、その恐怖に彩られた心を手放した。グッタリと意識を失い、カラダの力が抜ける。

 もう、彼女の心は限界だったのだ。

 「…アーケスティア」

 気を失った彼女のヘルメットを外してやる。無重力の空間に、フワリと、金の髪が広がった。

 その白すぎる頬に、握りしめていた右手で触れたくなった。こわばったその手に感じる、ヒンヤリとした彼女の肌。

 「ごめんな…」

 ここまで苦しみながら出撃しているこの状況に、自分はなにもしてやることが出来ない。機体の性能を上げたって、彼女のためになっていない。何の役にも立っていない。自分は一体なんのために努力を重ねているのか。誰のために。何のために。

 「悲しい」「利用」

 傍受した通信で聞こえてきた言葉が、妙に心に引っかかる。

 アーケスティアは、それらを「見るな」と拒絶していた。「アタシを見るな」と。

 あの戦闘の中、チャリオットⅡのパイロットは、彼女の何を見たのか。何を知ったのか。

 誰が「悲しい」のか。誰が「利用」しているのか。

 考えてはいけないと思うほどに、その答えが輪郭を作り上げていく。一度胸のうちに湧き上がった考えは、心に染み付き、離れることはなかった。

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