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蕨がつんつんと雲神をつついた。それに気付いた雲神はにっこり笑いかけて、
「あぁ、蕨君の話ね。蕨君が人間界に行くには、一度死界に戻って死界から人間界に行くしかないね。」と言った。
「でも蕨だけしか死界に行けないよね?」
「いや、上級の神は三世界どこでも行けるとは思うけど、今はやめた方がいい。死界が大分荒れてるらしいからね。死界こそ君の力が暴走する恐れがある。」
「そっか……じゃあ、どうすればいいの……?」
「蕨君だけ死界に行かせればいいんだよ。」
「え……?蕨だけで?そんな事きっと出来ないよ!」
「いや、出来るね。蕨君と二人で話がしたい。空羅は峡夜の元に行きなさい。」
そういう雲神は冗談を言う時の顔とは程遠く、いつになく真剣な表情だった。空羅はその圧力に引き下がるしかなかった。
「わかった……蕨、また後でね。」
力無く手を振る空羅を見て、蕨はわんと強く鳴いた。
空羅が見えなくなると、雲神の目つきが変わった。
「なぁ、蕨君。君は山犬の長だね?何があってそんな小さくなっているのか知らないけど、この私に隠し事は通用しないよ。百年前に会った時から気付いてたけど、何の目的か分かるまで泳がせていたんだ。だけど、君は動かなかった。何故だ?空羅の力が欲しいんだろう?」
蕨はじっと雲神を見つめていたが、やがて諦めたように喋り出した。ずっと、わんとしか言わなかった蕨が口を開いたのだ。
「俺は…空羅に負けたんだ。」
そして、蕨は空羅との過去の話を少しずつ話し始めた。




