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峡夜は幸せそうに眠る空羅の隣に腰をかけた。可愛く寝息を立てる空羅の頰にそっと手を当てる。そして、横になり目を閉じて、蕨のことをどのように空羅に言おうか考えていた。どう言っても空羅が悲しむのは目に見えていた。考えて考えて、頭がぐるぐる回るようだった。このまま消えてしまえれば良いのに。何度そう思った事だろう。長い間生き続けて息をしなければならない。こんなに辛い事はない。
俺が生み出されて今年で二千年経つ。
いつまでも、いつまでも、長くて、辛くて、明かりの見えない所で何をして過ごせば良いのだろう____
気が付けば峡夜は深い眠りについていた。
朝日が昇り、眩しい光で峡夜は目を覚ました。いつも空羅より早く起きて布団を片付けて朝ご飯を作るのだ。窓を開けると気持ちの良い風が入り、小鳥の囀りが聞こえる。
少しして、朝ご飯の香りが部屋中に広がる。その香りが鼻をくすぐり、空羅が大きな欠伸をする。そして、いつものように蕨を撫でようと手を伸ばした。しかしそこには何もなく、空気を触っただけだった。空羅は目を擦り、辺りを見回した。
「蕨は……?」
寝惚けた声で蕨を呼ぶが返答はない。峡夜はご飯のあるテーブルの前に立っていた。
「峡夜………蕨がいないよ。まだ帰ってきてないみたいなんだけど………何か知ってる?」
峡夜は振り向かないまま俯いていた。様子がおかしいと感じた空羅はすぐさま峡夜の近くに駆け寄った。
「何か知ってるの?」
不安そうな声で峡夜の目が泳いだ。峡夜は俯いたままだった。空羅は嫌な予感がしつつも、黙って何も言わない峡夜に向かって震える声を発した。
「何があったの…?」
峡夜は俯いていたがやがて、空羅の顔を両手で包み込むように掴み、こう言った。
「いいか、今から俺がどんな事を言っても、暴走しないって約束できるか?」
「えっそれってもしかして………蕨は帰って来ないとかそう言う話?」
空羅はこういう時だけ察しが良いのだ。
「………っ。そうだよ。蕨は死界に行って帰ってこない。そして、お前は一生神界で過ごすんだ。それが、神界の意向なんだよ……。」
「そんなのおかしいよ!峡夜も上の人がそう言うからって俺と蕨を離れ離れにする気なの!?」
「それは…」
これはお前の為を思って言っている…はずなんだ。でも空羅がそれを望まないとすれば………神界が全て正しい訳ではないのだ。空羅が辛い思いをさせないといけないのにそれが空羅のため?ふざけるな!俺は自分の手で幸せを掴み取る。誰にも指図なんてさせない。空羅を幸せに出来るのは俺だけだ。
「いや、そんな気はない。お前の、空羅の望みはなんだ?」
「俺はね、峡夜と蕨と幸せに暮らしたい!人間界にも行ってみたい!」
「よし、分かった。お前の願い叶えてやる。」
「本当に!?」
「あぁ、どんな危険が待っているかも分からんがやれるか?」
「幸せになる為なら!なんでもやるよ!」
「よし、神界に歯向かうぞ。」
「おー!」
こうして二人の逆襲が始まったのだ。




